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『クリスとみちる』 14話: 空間

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 どれくらいそうしていたのかわからない。



 いつの間にかクリスの膝に突っ伏して、ワンワン泣いているうちに


 なんで自分が泣いているのか、

 いつから泣いているのか、すっかりわからなくなってしまった。


 少し落ち着いてきた僕は、

 ティッシュで顔をふきながらおそるおそる顔を上げた。


 クリスは僕をみて、にこっとした。

 横でちえこさんも同じような顔をしていた。


「ちょっと一緒に深呼吸をしてみましょう」


 そう言われて、息を吸って、吐いた。


 体は熱くて、少し大きくなったような感じがした。


 頭も少し動くようになってきた。



「いま、どんな感じがしますか」


 いまは・・・「落ち着いた感じ」


 そう言いながら僕は少し周りを見た。


 いろんな大人がいろんな顔で僕を見ていた。



 前ほどみられているのがつらくない。

 クリスが僕の肩に手をおいているのがわかった。



 たくさんの人がここにいる。


 誰も何も言わずに僕を見てる。


 クリスも僕を見ていた。


「・・・友達が」


 そう言いかけた僕は、

 自分が何を言おうとしているのか

 まるでわかってないことに気がついた。

 

 それでも続けてみた。


「・・・いたんだけど」


 みんなしん、としていた。


「・・・もういないんだ」


 ちえこさんが訳して、クリスはうなずいた。


「・・・友達がいたんだけど、もういないんですね」


「・・・うん」


 そう答えたら、

 なぜかものすごく悲しくなってきて、

 僕はティッシュで目をこすった。


「・・・もう、いないんだ」


 そう言って僕はティッシュで目を拭った。


 何度も何度も。気の済むまで。



 クリスはずっと僕の背中をさすっていた。


続く


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