あかるいこ

ものがたりを編んで夜を包んでは離す、人の子。

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  • 【泣き虫あきこの人生大全】

    感情、感覚、思考のチョコレートボックス🍫

  • クリスとみちる

    満月の夜に生まれた男の子のお話し。

  • 赤の少女と白い虎

    真っ赤な満月の夜に生まれたその少女は、4番目の姫だった。 彼女が生まれた夜、見たこともない大きな白い鳥が、一晩かけて空を渡ったという。 歩けるようになったらすぐに宮殿を飛び出し、土の上を転がり、あっという間に野山を駆けめぐるようになった。

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目の前にいる男はいつだって自分にふさわしい

その日、わたしは血まみれだった。 真昼のオフィス街。足元にポタポタと垂れる鮮血。 通った後に、赤い小花が点々と咲いている。振り向く気力はない。 パックリと裂けた胸から、たれ続ける血液。 この深手が、みんなに見えたらいいのに。 体の傷は見えるのに、心の傷は見えないなんて不公平だ。 見えたなら、たくさんの人が「大丈夫?」と駆け寄ってくれるだろうに。 甘っちょろい〝自分かわいそうトーク〟が浮かぶほど、わたしは落ちに落ちていた。付き合い始めた恋人に別れを告げられたからだ。 元

    • 満月の詩

      父のことを話すときの自分を感じると、やっぱり涙が出るなあとつくづく思う。あまりにも昔と変わらなくてウケる。 今も正直、涙のその仕組みはよくわかっていない。だからそのままに感じることしかできない。 鼻がつまって上手く話せない息苦しさを。 努めていつものように話そうとしているのに、声が震える自分を。 今日も感じながら話していた。悲しいのかどうかわからないなあと毎回思う。悲しいとは少し違うような気がしてる。恐怖の涙のような気もする。それとも脊髄反射だろうか。そんなしょうもない思

      • あきらめると世界は苦痛になり壊したくなるこころの動き

        初めまして。今週遅ればせながらAmazonの配信で「IQ246〜華麗なる事件簿」を拝見したものです。 わたしにとってこのドラマとは何か、どんな意味があったのか。お伝えしたくなり筆をとりました。 つねづね私たち人間が恐れているのは、生きることが「退屈」であるということ。それが人生の悲喜こもごものドラマを自ら生み出す源だという仮定をもって、生きてきたものです。 そのせいでしょうか、このドラマを見ている時間、つねに奥底で揺さぶられるものがありました。 IQの高さゆえの世界への失

        • どうしようもない夜のこと。

          いつもなら、きちんとしまっている蓋が なぜか内側から外へ押し出されて ふわっと浮いてしまう時がある。   みたくなかった 気づきたくなかった 認めたくない色の水があふれる時がある。   いつもは大丈夫なのに うまく見ないようにできているのに。   でもうまくいかない。   しょうがないよ。   きょうは満月だもの。   そう、不思議なことにそういう夜はたいてい満月なのだ。 眠れなくて心がうろうろするとき。 ハッとしてカレンダーを見ると満月なのだ。   12月12

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          罪悪感という名の友からのお知らせ

          今週だったかな、先週だったろうか。 ある日、帯に囲まれていて突然涙が止まらなくなった。 一人だったので、そのままわんわん泣いた。 こんな風にわたしはとうの昔に、自分からあふれるものに逆らうことをやめてしまっている。   すると 「ごめんなさーい」と言葉がでてきた。   何に謝っているんだろう。 わんわん泣きながらも、冷静に観察した。   わたしは帯に謝っていた。   「みんなをお届けできていなくてごめん」 「全然フェイスブック更新できてない。ごめん」 「こんなにあ

          罪悪感という名の友からのお知らせ

          なにもかも思った通りじゃなかった1日

          「明日空いてる? 金沢来ない」という仕事関係の東京の知人からのメッセージが来たのはおとついのことだった。 彼は昭和のよい香りのする、ロックでやさしい、太っ腹な人だ。 おお、仕事の話か! となにもきかずに慌てて駆けつけた。 なのに、いきなり人身事故で1時間は軽く遅れてしまうことに。 わたしは少し、いやかなり焦った。 もし彼が、取材かなにかのアポ入れてたらまずい。 でも、着いてみたら、そこに仕事はなにもなかった。 待ちかねたようにニヤニヤしながら「よう」と改札で挨拶され

          なにもかも思った通りじゃなかった1日

          映画「天気の子」 〜不調和という名の調和

          音もなく柔らかな雨の降る夜。初日の最終回に滑り込んだわたしがスクリーンで見たのは、雨が降り続く日本の首都だった。 都心のビルの灯も、なんてことのない坂道も、バス停も、新宿の夜も、むせかえるように生々しく美しい。気づけば東京の街にするりとダイブしていた。東京は時々ふらっと出かけるだけなのに、思わず目をこらすほどのリアルがそこにあった。もし毎日都内に通っている人・住んでいる人が見たならどう感じるのだろう。 ほだか、という16歳の彼を見ていると、時々ぎゅうっと胸が締めつけられる。

          映画「天気の子」 〜不調和という名の調和

          初日にみた【天気の子】ひとことメモ。

          台風5号の影響でしとしと降り続く雨。響くセミの音。そんな日に見るのに、これ以上ふさわしい映画はない。このラストをどう捉えるかでその人の世界観がわかる。それが最高に楽しいことだと私は思う。 いまや、不調和と名付けられているものは、全部「調和」でしかない。そう思うようになった私にとって、雨のように染み込む映画だった。 「君の名は」が好きだった人にはちょっとした贈り物も♡スクリーンで見つけてね^^     これは別の映画を見たときに書いたもの。 『カメラを止めるな!』という宇宙の采

          初日にみた【天気の子】ひとことメモ。

          愛なき世界を生きていく

          人は何をもって愛というのだろう。 そんなの人それぞれだってことくらいわかってる。考えてはみたものの、雲をつかむようで何も浮かばない。 もう考えるのはよそう。わたしはさっくりと諦めた。 なのにそれ以来、やたら「愛」という言葉が目につくようになってしまった。 ふとつけたテレビの中で、韓国ドラマの王子と侍女が夜の宮殿に佇んでいる。 「わたしはそなたを愛している」 潤んだ瞳で王子が告げた。 美しい顔立ちの侍女がハッと彼の顔を見上げる。 ちょ、ちょ。そこでストップ。 王子に質問。

          愛なき世界を生きていく

          裏切りに満ちた、よき人生

          「これだけは一生しないだろう」と思っていることに限って、やってしまうのはなぜだろう。 正確には「ないだろう」と思っている時点で、すでに意識を向けているのかもしれない。 私の場合「やってはいけない」といった甘い禁忌感はなく、あるのは「そういうことを自分だけはしない」という根拠のないただの思い込みだ。 私にとってそれは「妻帯者とは付き合わない」「一度別れた男とは決してよりを戻さない」の2つだった。 なのに、人生の前半でどちらもあっさりとクリアしてしまった。なんというつまらない人

          裏切りに満ちた、よき人生

          2018年12月26日の告白

          わたしはありとあらゆる方法で、自分を傷めるのが得意でしょうがないという人生を歩んできた。 その一つに、嫌われたくない、愛されたいという強烈な欲望がある。 それは好きではない人にも愛されたいという、なんとも奇妙な矛盾と恐れ。 わたしは長い間、この気持ちを誰にも絶対に知られたくなかった。 この欲望をもっている自分を恥だと思ってきたし、正直に言うと、いまもほんの少しだけ思っていたりもする。そんな自分の見たくもない気持ちを綴るきっかけとなった、ある出会いがあった。 その人は、以前い

          2018年12月26日の告白

          自分の書いた話がこんなに生き生きするとは...ちくわさんの声に紡がれて、彼女のものになった瞬間は宇宙のはじまりのようでした。素敵なクリスマスプレゼント、あなたにも! 【朗読 ちくわな世界】あだちあきこ作「12月4日に僕が決めたこと」 https://note.mu/kfumi9/n/nf873cc3cd126

          自分の書いた話がこんなに生き生きするとは...ちくわさんの声に紡がれて、彼女のものになった瞬間は宇宙のはじまりのようでした。素敵なクリスマスプレゼント、あなたにも! 【朗読 ちくわな世界】あだちあきこ作「12月4日に僕が決めたこと」 https://note.mu/kfumi9/n/nf873cc3cd126

          大阪のディスクユニオンの周年ポスター『じゃりんこチエ』。見るたびにはるき悦巳先生の書き下ろしにときめく。猫なのに惚れてしまう小鉄、お母さんにそっくりのヒラメちゃん。故・高畑勲監督のアニメを思い出す。テツ、右のポスターでこけてて足だけ笑。顔、見たかったなあ。みんなコケすぎだと思う。

          大阪のディスクユニオンの周年ポスター『じゃりんこチエ』。見るたびにはるき悦巳先生の書き下ろしにときめく。猫なのに惚れてしまう小鉄、お母さんにそっくりのヒラメちゃん。故・高畑勲監督のアニメを思い出す。テツ、右のポスターでこけてて足だけ笑。顔、見たかったなあ。みんなコケすぎだと思う。

          12月4日に僕が決めたこと。

          今朝、お母さんとケンカをした。寝坊して朝ごはんを食べずに学校へ行こうとしたら「だから言ったのに」などという。 なんだよそれ。知らないし。 僕は1秒でも長く寝ていたかっただけだ。 ぎりぎりまで言い争いをして家を飛び出した。 ちくしょー。ちくしょー。 嫌な朝だ。 チャイムと同時に教室に滑り込む。 「ギリギリセーフ!」 振り向くと、よっちゃんがニッと笑っているのが見えた。 ◇◆ 僕にはお父さんはいない。 お母さんは昼間にお弁当屋さんで働いている。 夕方から夜までは居酒屋で働

          12月4日に僕が決めたこと。

          <亡き私>の生活と意見 【泣き虫あきこの人生大全】

          地球を去ったのは、肉体を得て98年目の春だった。 最後に書き上げた大河ファンタジー「赤の少女と白い虎」の出版記念講演会の世界ツアーの最中のことだ。 無理をいって立ち寄った、ハワイ島のコンドミニアムの中庭。ソファに座り、ひと粒のぶどうを口にした瞬間、美しい虹がかかるのを見た。 「ああ、いまか」 そうしてゆっくりと目を閉じ、最後に息を大きく吸って絶えた。 粒子になって肉体からようやく解放された私は、様子を見にきた美しい孫娘に発見されるところまで見届けたあと、時空のねじれを猛スピ

          <亡き私>の生活と意見 【泣き虫あきこの人生大全】

          【感情のトリセツ(2)】人の投稿を気持ち悪いと感じてしまう時

          最近、立て続けに自分の感情を精査する機会があった。前から知っている人を、なぜか「気持ち悪く」感じるようになってしまったからだ。 ちなみにその人は、決して邪悪ではない。 どちらかというと心根はかなり良いことを知っている。もちろん嫌がらせをされたわけでもない。 なのに、なぜだろう。 今やフェイスブックの投稿ひとつとっても気持ち悪くてしょうがない。 あえていうなら、自分だけの独り言のようなポエム。ああ気持ち悪い。最初は我慢していたがよく考えるとそれも変な話なのでフォローを外した。

          【感情のトリセツ(2)】人の投稿を気持ち悪いと感じてしまう時