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『クリスとみちる』 9話:みちるの決断

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「みちるなんで手を挙げてるの!」

 お母さんが小声で叫んだ。


 でもどうせ、だめだろう。そう思った。


 だって僕は子どもだし。

 ここでの勉強をやってないし、知らないし。


 どよめきが落ち着いたころ、クリスは僕に言った。


「みちるくんは、なぜやってみたいのでしょう?」


 正確にはちえこさんがそう言った。

 僕は正直に答えた。


「・・・わかんない」


 ちえこさんが伝え、クリスはなるほど、という感じで大きくうなずいた。


「わからないんですね?」

 僕はうなずいた。


「わからないけれど、ここに座ってみたいですか?」


 クリスはちえこさんとの間にある座布団を指してそう言った。


 僕の首が、僕より先にうなずいた。



 クリスは少しの間、ちえこさんで話した後、みんなに向かってこう言った。


「もし、誰も本当に手を挙げなければ、この時間をみちるくんの体験につかうこともできます。

 でもそうなると、プラクティスのデモにはならないかもしれません。

 ほかに興味があるという人はいませんか」


 とても長いこと待ったけど、誰もぴくりとも動かなかった。


「オーケイ」


 クリスは目の前にある座布団を差し出した。


「みちるくん、どうぞ」


 ちえこさんが笑いながら僕に向かってそう言った。


続く

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