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終わらない疑問 短い短い物語。

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ちょっとした物語。誰にもこの疑問を未だに聞けない。
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#家

水しぶきは、たった一瞬。18/20

水しぶきは、たった一瞬。18/20

一定に流れる水をぶち壊したくなった。目に入った川の近くまで降りて、どこにでもある石を拾い投げた。投げた石は水しぶきを上げて、私に歓喜と達成感を与えてくれた。投げ始め何分経っただろうか、私は無意識に石を投げ続けていた。それは投げなければいけないような…そんな義務感があった。投げるたびに後ろから誰かが迫ってくる。分かっていた。いつもこうなることは……でも、そんなことはどうでもよかった。迫った奴の手が肩

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帰る場所。17/20

帰る場所。17/20

電車から見える景色が銀色から、緑色になっていく。鼓動は緩やかになり、優しいため息をする。故郷から帰る時はいつもこうだ。忘れていた心の安堵に肩の力は簡単に抜け、緊急の日々はもはや嘘のように感じる。電車を降りて大きく吸った息で瞳を閉じれば、包み込まれた気分になった。実家に帰ればいつも食べられない手料理が私を待ち、頬いっぱいに、ほうばっりながら、日々の生活についてああだこうだ言って食卓を囲む。あの時、交

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