02:DTPと印刷物のデザイナーについて | 印刷のぶっちゃけ話
紙の印刷に関わって15年!ネット印刷会社で働いてるあかまつと申します。好きな言葉は校了です。
今回は、印刷の前工程である「DTP」と紙の印刷物に関わる「グラフィックデザイナー」について、ぶっちゃけたいと思います。
- ざっくりいうと -
・DTPの意味は「印刷する前工程の役割」
・資格がなくても、なれるDTP関連の仕事
・技術を探求すれば、未来も広がる
・アップル・アドビたちが生んだ「DTP」
- このnoteに書いていること -
1)DTPとは印刷には欠かせない役割
2)グラフィックデザイナーやDTPの仕事
3)求められる知識と気になる給料
4)DTPという言葉を生んだ会社
5)DTPの未来
DTPという職業の話になったとき「デザイナーのことですよね?」「グラフィックデザイナーやクリエイティブ業界の入門編のお仕事?」などと言われることもありますが、ちょっと違います。
デザインしていない方もいます。
転職サイトの募集で「DTPオペレーター」「DTPデザイナー」「グラフィックデザイナー」の業務内容を見ていて、その境界線がかなりあいまいじゃないかと思い、今回のnoteを書くことに決めました。
正直、一般的なお話ではないんですが……。
知って欲しいDTPとグラフィックデザイナーのこと。
あと、わたしが考えるDTPの未来。
もっといえば、紙の印刷に関わる仕事を目指す方やグラフィックデザイナーの方に読んでもらいたいと思って、真剣に書きました。
少しでも参考になれば。
そういえば昔、ウチの社長はスタッフとの面談で「DTP」の意味は?とよくクイズ出してたなぁ。答えられないスタッフがくちびる震えてたの思い出した……。
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DTPとは印刷には欠かせない役割
そもそもDTPってなんやねん? って話から。結論から言えば、印刷する前工程の役割が「DTP」。私もこの世界に入るまでは聞いたことがない言葉でした。
ググるとこんな感じ。
DTPの意味は、Desk Top Publishing(デスク トップ パブリッシング)という"パソコンで出版物を作成すること"を指し、日本語で「机上出版」や「卓上出版」と翻訳される。
……。
わからん……。
まずは下の図解をご覧ください。
※ 職人さんの画像はイメージです(業界の方に怒られそうな図解や……)
DTPが生まれる前、チラシや名刺は印刷会社にお願いするしかなく「レイアウトする職人」「文字を配置する職人」「写真を配置する職人」など、それぞれの専門分野の方がいました。
で、DTPが生まれた後はアナログでやっていた「職人さんの仕事が全部パソコンでできるようになった」ってこと。
さらに現在では、下のような幅広い意味をもつようになりました。
まとめると、印刷会社で専門的に印刷する前工程の役割が「DTP」と考えていただければまず問題ありません。(後工程は印刷などの製造)
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グラフィックデザイナーやDTPの仕事
ここからは具体的なお仕事のお話を。
DTP関連の仕事は「DTPオペレーター」「DTPデザイナー」「グラフィックデザイナー」の3種類に分かれます。この職業になるための必須資格はありません。
もう少し詳しく知りたい方向けの解説
1)DTPオペレーター
作成されたデザインデータをもとに、印刷できる専用データに仕上げるのが主な仕事。基本的に専門のDTPオペレーターは「デザインをする」ということは少ない。
2)DTPデザイナー
DTPの知識を考慮し、デザインをする仕事。デザインソフトを使って、文章や写真、イラストなどの原稿から印刷物のレイアウト(割り付け)を行う。
3)グラフィックデザイナー
クライアントと打ち合わせを行い、完成形をイメージしながらデザインする仕事。イラスト作成を求められることも(写真はカメラマン、イラストはイラストレーターに依頼する場合もあり)
「DTPデザイナー」と「グラフィックデザイナー」は似ているですが、厳密に言えば少し違うんです……。
弊社の場合、この「DTPオペレーター」と、お客様の名刺やチラシなどのデザインを作る「グラフィックデザイナー」を担当するスタッフがいます。
おそらく印刷・出版以外の業界なら「デザインできること」も求められるでしょう。
ここで注意したいのが、全部の役割をひっくるめて「DTPオペレーター」「DTPデザイナー」「グラフィックデザイナー」と呼んでいる会社も。
転職サイトを見ると、ざっくりとしか書いていない業務内容。これらの職業を希望する方は面接のとき、具体的な仕事と求められる技術をすりあわせておくことをオススメします。
わたしの知人は「DTPオペレーター」募集の会社に入社したら「キャラクターのイラスト描いて」と言われ、泣く泣く退社したという出来事も。
おそろしい。
DTP=かならず絵を描ける訳じゃないということを、企業側も汲み取っていただきたいところですね……。
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求められる知識と気になる給料
DTP関連の仕事で、必要とされる知識をまとめるとこんな感じ。
イラストレーターやフォトショップなどのソフトや専用の印刷データに関する知識はもちろん、実際の紙に印刷されるあとまでイメージする力が求められます。
そういう意味では、DTPオペレーターという仕事は、デザイナーさんたちを支える大切な「縁の下の力持ち」的存在です。
パソコンやネットワークなど、ハードやインフラ関係も含めると、求められる範囲は多いし広い……。
でも、紙の印刷物に携わる方は知っておいて絶対損なんかありません。
あとは「お給料」。月収はこんなイメージ。
DTPオペレーター
新卒:18万5,000円〜22万円
転職:21万円〜30万円
DTPデザイナー
新卒:19万円〜23万円
転職:22万円〜35万円
グラフィックデザイナー
新卒:19万円〜23万円
転職:23万円〜40万円
※2018年3月7〜9日独自調べ。リクナ○やマ○ナビ、en○ャパンなど、全国対象でそれぞれの職種100社程度から下限、上限の平均金額を算出。賞与額・手当は除外。また、転職系のWebメディアに掲載されている平均年収も参考にしました。
あくまで平均値から算出した数値ですので、もっと低い、もしくは高い会社もあると思います。
DTPオペレーターは他の二つに比べれば、新卒採用や未経験者などの採用も比較的多く、技術をつけていけばDTPデザイナーやグラフィックデザイナーへのキャリアチェンジの道が用意されている募集が多いと感じました。
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DTPという言葉生んだ人
ここですこし玄人向けのお話を。
突然ですが、DTPという語源どうやって生まれたかをご存知ですか?
「3つの【A】から生まれた」と言われています。このAが指す意味はDTPに欠かせない、ある3つ企業の頭文字です。
・ページレイアウトソフトを作ったAldus(アルダス)
・フォントをシステムに組み込んだMACを作ったApple(アップル)
・プリンターに対して描画を指示するための言語を作ったAdobe(アドビ)
この三社が、「これからはDTPできるでー!」と世の中に発表。生まれた瞬間ですね。今や知らない人はいないであろうiPhoneを作ったアップルや、イラストレーターやフォトショップのアドビが飛躍したきっかけとも言われています。これが1985年ごろと言われています。
Adobeがphotoshopをはじめて販売したのが1995年ごろなので、DTPの歴史としては、まだ25年程度なんですよね。
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未来のDTP
※※ たいそうなタイトルにしましたが、ここからは私の個人の見解となります。ビビっていますが思いの丈を書きます。 ※※
リアルな話。
最近「今はWebやIT技術の発展から3D、VR、CGデザイナーのほうが需要が高いと思います」と、人材紹介会社や派遣会社から聞きました。
「紙の印刷なんてオワコン」なんて言葉も、ちらほら耳にしますが……。たしかに紙媒体の印刷物は減っていっています。
情報伝達の現状から見れば、Webを活用するほうが便利だし、時代にも合っています。エコの側面から見ても、木材をおもに原料としている紙は節約されるべきものでしょう。
イベントの告知はFacebookやTwitter、Line@などのSNSで、というのも珍しくなくなりました。
きっと、わたしでもSNSを使います。
しかし、わたしは紙の印刷は絶滅しないと思っています。
デジタルデバイスに適した形で、情報をデザインできるという能力は今後、印刷会社にとって大きなスキル、差別化要素になるはずだ。※ page2015セミナー/『印刷をサポートする「電子コンテンツ」新活用術』より抜粋
印刷業界の展示会などでも、何度もこのような話を聞いてきました。最近では、電子書籍などのWebコンテンツに通じる技術も増えてきています。
つまり、できることが増えてきているんです。
だからこそ、紙の印刷に対する知識は貴重になってくると考えています。
いい意味で幅広い知識を求められているDTP。
興味深いツイートもございましたのでご紹介します。
紙に印刷する前工程を駆使する技術「DTP」。
向上心を持ち、コンテンツをかけ算していけば、未来はまだまだおもしろいで「DTP」。
印刷物が持っている価値と、新しい技術の相互関係で生まれる「希望の未来」があるじゃないのか。
本気でそう思っています。
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編集後記
1)わたしもさまざまな職人さんがいた印刷業界の方と仕事をしていました。
暗い写真をいつもイイ感じに明るくしてくれる写植の職人さん。「この文字は明朝のほうがええやろ」と渋く語る植字・組版の職人さん。「青焼き上がったで!確認せぇ!」がフィルム製版の職人さん。
作ることを誇りにしてるんだろうなぁって熱意を感じて、ほんとにかっこよかったんですよね。
ちなみに今でも印刷業界で活躍している写植や活版、製版の職人さんたちはいらっしゃいます。最近では大人の科学マガジンのミニ活版印刷機なんてのも話題になりました。
2)「DTPの未来」について、なんて偉そうなことを書いてしまいましたが、DTPの技術はすばらしく、また、コンテンツとしてもおもしろいことにチャレンジできるんじゃないかな。と思っています。
まだ内容は言えませんが、ひとつの答えを出そうと、キングプリンターズではあるシステムを開発中です。乞うご期待。
あと、これまた蛇足にはなりますが、過去の深津さんの記事にもあるとおり、デザインの本質は「課題解決」と「価値提案」。わたしも同感ですし、DTPも一緒かなと。これについては今回の話題と全然違うので、いつかnoteで書きたいと思っています。
3)最近ではWebをメインとした、DTPの知識を必要としないデザイナーの仕事も多く、印刷系の知識をあまりお持ちではない方が多いように感じます。WebとDTPは技術面で共通しているところは少なくもの…印刷データの作成に失敗するかたが多いと思います。ぜひ、日本一カンタンなDTPの知識向上を目指したコンテンツでご確認いただければ嬉しいです。
4)前回の紙に関するnoteがめちゃくちゃ反響があり、たくさんの方に見ていただいたこと本当に感謝しております。ありがとうございました。需要があまりない専門的な話かもしれませんが、今後も、少しでも紙の印刷物に興味を持っていただきたく、頑張って書いていこうと思っています。
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次回のnoteは来週末4月16日(月)までにアップ予定です。
(できるだけ早めにやっていく気持ちです)
※ごめんなさい!少し遅れています…泣
最後まで読んでいただいて、ありがとうございました!
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