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韓国映画『震える家族』ネタバレ感想/この家にはもう1人いる

2022年制作(韓国)
英題:The Other Child
監督、脚本:キム・ジニョン
キャスト:パク・ヒョジュ、キム・ミンジェ、チャ・ソヌ
配給:「震える家族」上映委員会

ホラー映画は苦手だけれど、オカルト映画は好きである。中でも、『サバハ』、『プリースト 悪魔を葬る者』など韓国のオカルトホラーは特に好き。

『震える家族』は、牧師家族の話ということでオカルト要素に期待したが、あまりオカルト要素は強くなかった。『事故物件 歪んだ家』のような母親が狂気じみていく、ジトっとしたミステリーサスペンスであった。

牧師のソクホ(キム・ミンジェ)と、その妻・ヒョヌ(パク・ヒョジュ)は、病気により視力が低下しているイサクを養子として受け入れる。夫妻には、長女、次女、次男の3人の子供がいる。イサクはぼやけた視界の中もう1人の子供がいることに気づく。

「この家の家族が僕を抜いて6人?」と聞くイサクに長女は、イサクを入れて6人だ、ハンビョルという子がいたが、亡くなったことを告げる。イサクは、自分だけが見えているもう1人は、亡くなったハンビョルであると気づく。ハンビョルは本当にそこにいるのか、その目的は。

イサクは、死んだ人が見えると言い、実の親から捨てられたという。そのことをヒョヌは知らなかったとソクホに言うが、大した問題ではない、霊などいないと一蹴される。

最初は、イサクの言う事を信じていなかったヒョヌであるが、「ハンビョルが、死んだのはママのせいではない。だから泣かないでって言っていた」とイサクが伝え、ハンビョルが本当にいるのだと信じ始めた。

そんなヒョヌの姿を見て、ソクホはおかしくなったと思う。次第に浮き彫りになっていくソクホの抑圧的な態度。ハンビョルの死も、ヒョヌがきちんと見ていなかったからだと言う。家族が試練に立ち向かい、罪を償うため目の悪い“可哀想な”イサクを引き受けたというヒョヌの姿はどこまでもエゴスティックである。

教会の信徒の1人であり、霊が視えるというヨンジュンもまた、ハンビョルが視えていた。そしてハンビョルを殺したのは長女だという。その言葉からヒョヌは長女の言動に警戒し始める。

長女はイサクのことをよく思っておらず、一度親に捨てられたのだから私たちも捨てればいいなどと言う。更に、ハンビョルは亡くなる前から悪魔だったと言い、ハンビョルが取り憑いたイサクを悪魔と呼ぶ。そのような長女の言動は、母への思いからであった。

ハンビョルは車椅子に乗っており、足に障害があったのかもしれない。ハンビョルの世話でヒョヌは疲れきり、睡眠薬を処方していた。心身ともに疲弊している母を楽にさせてあげたいとの思いでハンビョルの車椅子のロックを外し、ハンビョルは池で溺れ死ぬことに。

ハンビョルの死後やってきたイサクも、長女にとっては母を疲れさせる“悪魔”に思えたのかもしれない。また、イサクにつきっきりで相手にしてもらえない寂しさと嫉妬心もあっただろう。更に、自分がハンビョルにしてしまったことからハンビョルが自分のことを殺しにくるのではないかと怯える。

ヨンジュンは、ハンビョルを長女が殺したことだけでなく、ヒョヌもハンビョルの死を望んでいたと言い始める。ハンビョルの車椅子が近くにいないことを知っていながら昼寝をしていたと言う。ヒョヌもハンビョルの死に対し自責の念を抱いていたのだろう。そんなヒョヌがハンビョルの存在を受け入れ始めたのは、イサクによってハンビョルが自分を責めていないことを知ったからであろう。

そもそもハンビョルの目的とは何だったのだろう。最初は、ハンビョルがイサクを通して自分の死の真相について知らせたいことがある、もしくは復讐をしたいのかと思っていた。しかし、どうもそういう訳ではなさそうだ。大好きなママに自分の存在について気づいて欲しかったのだろうか。

ヒョヌは、試練を乗り越えるため、ヨンジュンを殺し、ハンビョルを含め家族5人を守っていくことを誓う。強引な終結はおさまりが悪いが、ジトっとした空気感はよく、あまり怖くなかったのもありがたい。ただ、ヒョヌの狂気も中途半端でヒトコワにも振り切れていない上に、オカルト要素もさほど強くないので全体的に中途半端な印象はある。『メタモルフォーゼ 変身』のようないや〜なホラーにしてくれたらもっと良かったかも。

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