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韓国映画『ワン・デイ 悲しみが消えるまで』ネタバレ感想/別れ(死)と向き合うこと

2017年制作(韓国)
英題:One Day
監督、脚本:イ・ユンギ
キャスト:キム・ナムギル、チョン・ウヒ、イム・ファヨン、パク・ヒボン、ユン・ジェムン
配給:ファインフィルムズ

映画『感染家族』、『クローゼット』、『非常宣言』からドラマ『熱血司祭』、『悪の心を読む者たち』など数々の作品に出演する人気俳優キム・ナムギルと、『哭村』、『ハン・ゴンジュ 17歳の涙』や日本映画のリメイク『スマホを落としただけなのに』などのこちらも有名女優のチョン・ウヒ共演作。

闘病中の妻を事故で失い、無気力な日々を送っていたガンス(キム・ナムギル)。保険会社に務めるガンスは、交通事故に遭い植物人間状態の視覚障害者タン・ミソ(チョン・ウヒ)の件を担当することに。

視覚障害者であるミソが事件当時白杖を持っていなかったという後輩の言葉が気になりミソの病室を訪ねるととある女性に話しかけられる。話しかけられ、戸惑っていたガンスに女性は「私が見えるの?」と言う。

その女性とは、タン・ミソ本人であった。ミソは事件後から眠っている間は外に出て自由に浮遊している、幽体離脱のような状態になっていたのである。ガンスに自分が見えていることを知ったミソはとあるお願い事をする。それは天涯孤独のミソの唯一の保護人である女性の結婚式に行くことであった。視覚障害者のミソは幽体離脱した状態では目が見えるようになっており、はじめて目で触れる世界に驚き、感動する。

不思議な出会いから始まるファンタジックなラブストーリーかと思いきや、ミソの事件の真相が次第に明らかになっていくと共に、切なく苦しい展開に転じていく。ある日、教会の前にタン・ミソという名前と共に置かれていたというミソは、母親を知らない。その話を聞いたガンスはミソの母親を探そうとする。するとミソの子供の頃の写真が撮られた写真館は、ミソが事故にあった場所の近くにあった。

写真館に訪れたガンスはミソの母親がその近くの美容室で働いていることを知り、ミソは母親に会いに行き、事故にあったと推測する。その推測は間違いではなかった。ミソは母親に会いにいったが、「人違いです、母親ではありません」と言われ、二度捨てられた気持ちになり、慌てて美容室を出たため白杖を忘れ事故に遭ってしまったのだ。

ガンスがミソの話をしたため、母親はミソに会いに病室を訪れる。母親に会えて感謝しているミソだが、これ以上長く自分が植物状態でいることで母親に負担をかけさせたくないという。その言葉にガンスが自分の妻のことを思い出す。

ガンスの妻は病気になり、闘病生活が続くとガンスに「こんな面倒な女が死んでくれたら楽なのにと思っているのでしょう」と言ったりするように。どんなに愛していても、闘病生活は互いにとって辛いものであろう。思ってはいけないと分かっていても重荷に感じたり、そうではないと分かっていても悲観的になってしまったりする。

これ以上負担になりたくない、闘病生活で酷い姿になって迷惑かけたくないと思った妻は、ガンスに荷物を取りに行かせた隙に交通事故に遭い亡くなってしまう。妻はガンスを思って自ら終止符を打った。

延命治療などの治療は、残される人々のエゴかもしれない。しかし、別れを決意することは難しく、自分ではない誰かの命に終止符を打つ責任は残された人々にずっと付きまとうものである。妻が自ら終止符を打ったことに、そうさせてしまったのは自分だろうか、それとも本当に事故であったのか。いつか来ると分かっていても突如きた別れを前にどう受け止めればいいのかわからない。そんなガンスが、ミソの頼みをきき、妻と、ミソ、2人との別れ(死)に向き合っていく。

よくよく考えてみれば、妻との別れと繋がるようなミソとの出会いはある意味都合のいい展開で、そうなるべくしてなったような映画ともいえる。しかし、本作はそのような穿った見方を思わずしてしまうような強引さをあまり感じさせない映画であった。(あくまで個人の所感だが)

病気ものの恋愛映画やヒューマンドラマは強引なお涙頂戴やあまりにも都合の良すぎる奇跡が多い印象であまり得意ではない。ただ、本作を見てそのような展開の背景には、そうなってほしいという切なる願いが込められているのではないか、とふと思った。そうなってほしいという展開の絶妙さが、御涙頂戴と白けてしまうか、そうではないかの線引きなのかもしれない。

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