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[エッセイ]  古着の柄と自分色


ガーデンの真ん中にある古い小さなサンルーム

いかにもギシギシと音がなりそうな店先の階段には見たことがないコーディネートのトルソーが並んでいた

少し入りにくい雰囲気を感じながらも緊張を隠しておずおずと進み
店内に入り、ハンガーをずらしながら少し古びた洋服の色やデザインを見てまわる

緊張していた気持ちは次第に解けて行き、ワクワクとした気持ちがハンガーを次へ次へとはやる様にと送らせて行く

チラリと見えたインディゴブルー

ユーロワークのオーバーオールが目に入り
ここには、これから度々通うのかもしれないとそう確信した



それからは、当時一人暮らしをしていた自分へご褒美にと月に数回ほどその店に通うようになり
さっぱりとした口調の店主とも話をするようになった

どうやら、そこにある古着はドイツやフランスから店主自ら買い付けに行っているようだった


店主の女性は、古着のお直しもされているそうで
店にはたくさんの珍しい柄のハギレがいつも置いてあり

服を買わない日は、このはぎれの調達を目的に店に行き
お気に入りを見つけては、数枚手の中に抱えて帰る
それが、私の楽しみだった

小さなはぎれのコレクションと、あの店で買った古着数枚
それは、いまだに私の大事な宝物だ




あの店に出会えた日から、少しづつその後の人生を変えられていたという事に未来に辿り着いた私は遅ればせながら気づいた

あれから10年以上の時が経ち、サンルームはいつ行っても空っぽで
当時、あの店で買ったお気に入りの大きなポケットがついた前ボタンのピーコックのロングスカートは少々キツくなり
子供との生活では、動きにくく出番がなくなり眠っていた

そんなロングスカートを最近徐にクローゼットから取り出し洗濯をしたのだ

久しぶりにロングスカートを洗濯したのは、少し自分に余裕が出来
もう一度、あのロングスカートを履きたいな…なんて、そんな気になって来たからかもしれない

そんな風にして、私は忘れていたあの店のことを思い出す

思い返してみれば
今も服を選ぶ基準はあの店で服を選びはじめたあの日のスタイルが定着している

それだけではなく
私の普段の手仕事や絵のスタイルも
あの店で出会ったスタイルが今の私を作っている様な気がしたのだ

それまでは、周りに合わせて似つかわしくないヒョウ柄の服を着たりと
どこか自分では無い自分が混ざっていて

グレーから、これから塗る目いっぱいの広くて白いキャンバスに自分色を塗り始めたのはあの店に通い始めた辺りからだと思い返す


それから、自分を知る長い旅に出た私は自分のスタイルを過去の様々な記憶をたぐり寄せ作り出して来た

そう言えば、昔からこんなものが自分の好きなものだったな…と



周りやら、なんやらに左右され着飾ってきた若い頃
ロックやらパンク、ボーイッシュなスタイルなどの寄り道もして
私は私に帰って来た


そこにずっとあった材料を集めるように自分色を思い出して



akaiki×shiroimi



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