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空中ブランコ

空中ブランコ つたの葉が まるで橋がかかっているかのように ひゅっと 垂れ下がっています そのまんなかからぶら下がっているつるに てんとう虫がひょいと止まって ほんとうに気持ちよさそうに やさしい夕風に吹かれています まるで これが自然ってものだと 示しているかのように いつ切れてしまうかわからない 細いつるに 自分の羽の力だけを頼りに 悠然とぶら下がってみせる あぁ いたんだ こんなにも楽観的で 勇気のある生きものが わたしのすぐ隣に ありったけの気持ちを込め

    • 野いちごの丘で

      野いちごの赤い実が ころん ころん と 周りに散らばっています いつも座っている切り株と いつも摘んでくるたんぽぽがあって 足元には小さな 本当に小さな芽が 育っているのが見えます あぁ… ここで今 真っ白な大きい翼をみつけることができたら 自分が見つけたこの野いちごの丘から こっそりと空へ 飛び立つことができるのに 雲を通り抜けて 永遠に 果てなく広がる蒼空の下で 日向ぼっこしていることだって 出来るかも知れないのに…

      • たんぽぽの朝

        目を覚ますと 花瓶の中で 眠りから覚めたたんぽぽの花が パッと目を見開いていました まるで 私を待っていたかのように 私の心の中に 金色の光がスーッと 広がっていきます なんの恐れも 哀しみも見せずに 全身で朝の光を受け取りながら 世界に目を凝らしている そんな花と わたしは確かに 目の前で向き合っている それは私にとって とてつもなく美しくて かけがえのない出来事でした もう二度と 出逢うことはないかも知れない 眩しい時間でした

        • 想い出のなかで

          陽が沈むと たんぽぽは 花びらを閉じます 音を立てることなく ふんわりと たんぽぽのこころは つぼみだった頃に 戻っているのでしょうか 朝がきて 花びらをめいっぱい開き 透き通った光と 話をはずませるまでの間 母さんを思い出すよるを繰り返すうち いつの間にか 真っ白な小さい種に覆われて 自分が母になっている そういうことなのでしょうか もう二度と 母さんの夢は見られないと 知ってしまったたんぽぽは 一体どんな気持ちで 朝日を浴びるのでしょうか

        空中ブランコ

          終わらないゆめ

          垣根にそっと1人きり ふんわりと つつじのつぼみが咲いていて ビーズより もっと小さな雨粒が 降って来るのを眺めては 夢見るように想います 自分が花に なるときのこと 周りに仲間がいないので 丁寧に  心の中に描きます 桃色をした花びらを そらに向かってふわりと開き 雨や光が落ちて来るのを そらの心が落ちてくるのを やさしくそっと受け止める そんな未来の自分のことを ひとりきりでもみられる夢 ひとりきりだからみられる夢 土に還ったそのあとも 覚めることなく残るゆめ

          終わらないゆめ

          「あ…」

          切り株に座って ぼんやりとしていた私が 立ち上がろうとした瞬間 ごつごつした幹の間から くしゃっとした まだ出てきたばかりの芽が こちらを見上げているのに気づきました 木の芽と私の 「あ…」という声が 重なったように感じたのは そらみみだったのでしょうか 幹に隠れたまま生まれてきた 柔らかないのちに 出逢うことができた その瞬間 私のこころはパッと 澄んだ光に照らされました 次に出逢った時 わたしはその柔らかい芽に 伝えることができるでしょうか 「見つけてくれてあ

          「あ…」

          蒼空との出逢い

          蒼白い雲で そらが覆われています 心に溜まった哀しみを 淡々と 低い声で語り続けるように 雨が降り続いています 気がつくと私は 傘をさして 外に出ていました どこへいくとも決めず 歩いて 歩いて… ふと 足元に オオイヌフグリが咲いているのを見つけました 鮮やかな蒼い色をした花びら こころの中に 青空ができていきました 空色の絵具がスーッと広がってゆくように わたしは 知らず知らずのうちに 見られるはずのない蒼空を 探していたのかもしれません そして いつの間

          蒼空との出逢い

          どくだみの花

          あまりに 無防備すぎるのかもしれない かぐわしい香りで あたりを包むには 清らかで やさしい真っ白な花が生きていくためには 黒く縁どられた葉が どうしても必要だったのかもしれない いつのまにか 選ばされていた“ひとりぼっち“ 自分から 選んでいたのかもしれない“ひとりぼっち“ しゃがみ込んで目を合わせたわたしに どくだみの花は 静かに微笑みかける この花は 与えられた全てのものを 大切に受け取って そっと抱きしめているのかもしれない こころの中にほんの少し 冷たい涙

          どくだみの花

          ないしょばなし

          わたげの中から 種がひとつ そっと耳打ちしてくれました 自分は 黄色い花にも 綿毛にもならない 空たかくそびえる 入道雲になるのだと 想い描いてみました 指の先ほどもないたんぽぽの種が むくむくむく と膨らんで 最後には 入道雲になって 世界を見下ろすようになるところを 「ずいぶん大きな夢だねぇ」 そのひとことを わたしは 心の中にしまっておきました 信じてみたくなったのです これだけたくさんある種の中で おそらくたった1人 大切に抱えている 誰よりも大きな夢

          ないしょばなし

          たんぽぽのあおぞら

          わたしの部屋の花瓶から たんぽぽが 窓の外を見つめています ぐいと背伸びをして 花びらを目一杯開いて 世界は 真っ白な雲に閉ざされて 光を失っているというのに そんなこと 関係ないといった表情で たんぽぽには 見えているのでしょうか 雲の向こうにある 果てのない青空が どこまでも広がっていく 眩しい太陽の光が 私はたんぽぽの隣で 一緒に空を仰ぎます 心の中にある色鉛筆を使って 少しずつ 曇り空の向こうを 想い描きながら

          たんぽぽのあおぞら

          あかね雲

          「ここはまだあたたかいよ」とあかね雲ひとつ残りて我を待ちたり

          あかね雲

          母になる日

          摘んできたたんぽぽの花が 私の部屋で わたげになりました 綿雪のように柔らかく 本棚の上に舞い降りた種子… 私は じっと見つめます もし この種を 真っ青な空に放つことができたら 私の手のぬくもりを 覚えていてくれるのでしょうか かあさんと過ごした想い出と一緒に 私と過ごしたわずかな時間も 心の中に携えて この種子は はじめての空の旅に 出て行くことになるのでしょうか そうなることを ぼんやりと夢見ながら 私は窓枠から手を出し ゆっくりと開いた手のひらに 息を吹きか

          母になる日

          青虫と蕾

          あおむしが蕾にそっとキスをする僕もあなたもまだ映えぬだけ

          青虫と蕾

          さくらの寝床

          出てきたばかりのクローバーでできた 柔らかな布団の中に さくらの花がひとつ 横たわっています 安心しきって眠る 子どものような表情で 土に帰っていくまでの ほんのわずかな間 さくらはこのクローバーの上で 蕾だった頃のザワザワした気持ちや 高いところで感じるそらの 美しさやなんか ふんわりとしたあたたかな気持ちで 思い出したりするのかもしれません 私は この世界との本当のお別れのときまで さくらに寄り添っているクローバーとの出逢いが もしかした

          さくらの寝床

          クローバーより

          前向いて 前向いて 前向いて! 歩くひとの靴音は そう言ってるように聞こえます 前向いて 前向いて 前向いて! 夢中になって リズムをとりながら 足音は続いていきます でも どうか踏みつけないで! こそっと空を見上げている 爪の長さくらいの黄色い花を

          クローバーより

          夜色のしゃぼん玉

          独り吹く夜の色したしゃぼん玉ふと思い出す亡き友のこと

          夜色のしゃぼん玉