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さくらの寝床

出てきたばかりのクローバーでできた

柔らかな布団の中に

さくらの花がひとつ

横たわっています

安心しきって眠る

子どものような表情で


土に帰っていくまでの

ほんのわずかな間

さくらはこのクローバーの上で

蕾だった頃のザワザワした気持ちや

高いところで感じるそらの

美しさやなんか

ふんわりとしたあたたかな気持ちで

思い出したりするのかもしれません


私は

この世界との本当のお別れのときまで

さくらに寄り添っているクローバーとの出逢いが

もしかしたら

自分の心にじっと

耳を傾けてくれていたかもしれないクローバーとの

かけがえのない時間が

さくらにとって

与えられたものではなくて

知らず知らずに見つけ出したものではないかと

ふと

思い至りました


そして

はるの陽を浴びて

クローバーのふとんに大の字で

寝転がっていようと

決めたのでした