「BL」と「性欲」に関する個人的な考察

ごく個人的な話であることを最初に断っておこうと思う。
気持ちわるいこといってるなと思ったら、それはわたしの趣向が気持ちわるいにすぎず、それ以外の他意はまったくない。

BLのもつ魅力の本質はどこにあるのだろう。

最近、そんなことを考えていた。妄想する側としての創造性の高さというのもひとつ大きな魅力であると思うけれど、そこには今回は触れない。あくまでも読む側として、わたしが感じるBLの魅力を探ってみようと思う。


大事な前提条件

前提として大事なことを語らなければならない。

これを書いているわたしは男性だということだ。
二次創作はあまり読んでいないけれど、よしながふみ先生や中村明日美子先生がヤマシタトモコ先生等々……BL作品も一般向けも分けへだてなく楽しむようになってはや20年とかになる。一番最近買ったBLは『ハッピークソライフ』3巻。まだ読んでいないからとても楽しみだ。

わたしに言わせれば、好きな先生がたまたまBLを描いていただけの話で、単なるジャンルの違いくらいに思っている。

同時に、BLにはBLにしかない魅力があるとも感じていた。玉石混合というか、性的趣向が現れやすいせいか「このBLがやばい!」とかを見て1位をさらっていっても意外とはまらないことがある。しかしハマったときの大当たりっぷりでは他の追随を許さなかったりする。
蛇足だけれど、2022年の1位は中村明日美子先生の『blanc』だそうですね。大好きです。しかしこれまだ去年の作品だったか……。

とにかく。はたしてBLのどこにそんな魅力があるのだろう。そんな疑問をいだいてここまで生きてきたわけだ。


BLの魅力とは?

丁度「BL作品の魅力とは何ですか」という記事があったので引用しようと思う。

1位は「自分の性と切り離して楽しむことができるから」となっている。

「女性が出てくると生々しい感じがする」(20代)
「性別、生物的本能、社会的な暗黙のルール、固定概念に囚われていない、精神的な真の恋愛かなと思っているから。」(20代)
「女性らしさや男性らしさなどの押し付け感がないため、気軽に楽しめるからです。」(20代)

これはわたしにも理解できる意見だけれど、わたしがBLというものを特段に楽しむことができる理由にならないと感じていた。なぜならわたしは男だからだ。
男女で感じかたが違うから、と言われてしまえばそれまでかもしれないけれど、突きつめるとそれだけでは理由にならないという気がしてくる。どうにもしっくりこない。

2位は「イケメンがたくさん登場するから」3位は「世界観がユニークだから・ファンタジー性が強いから」と続くけれども、どれもわたしに訴求してくる特段の魅力だとは思えない。

それではBLの魅力はもっと構造的な部分から来ているのだろうか?


BLとからみの関係性

たとえば、BLには「からみ」……つまりセックスの描写があるものが多い。統計を見たことがあるわけではないし、からみの少ないものもあるけれど、比較すればからみは多いと思われる。

正直、わたしはからみの多いBLは苦手なことが多い。しかしジャンルとしてそういう傾向があるのだから、からみというのはやはり大事な要素なのだろう。そして男性同士のからみに苦手意識はあるものの、わたしは基本的にセックスというのは高位のコミュニケーションだと思っている

互いの親密度が高まり、行きつくところまで行けばセックスという選択肢は当然に出てくる選択肢だ。

BLではない男女のマンガで、セックスを描くマンガは沢山ある。
最近でいえばまさに「コミニュケーション」という形でセックスが描かれる『こういうのがいい』などはその典型だろう。まあ、親密度の昇華のすえセックスにいたるような作品ではなくもっとライトな扱いだけれど。

では男女のからみを描いているマンガでBLと同じような読後感が得られるか。というとこれがそうはならない。

どうにも意識として「エロ要素」が先行してしまうのだ。


「エロ要素」に対する厳しい意識

これはわたしのごく個人的な話だけれど、マンガを読んだとき、評価するうえで別建てに考えたいと思っている要素がある。ずばりそれが先述の「エロ要素」だ。

ちょっと見渡せばエロ要素に溢れたマンガが沢山あるし、別にそういうものが面白くないわけではない。むしろ好きだ。巻数が沢山出ているマンガも多いし、世間的にも人気があるのだろう。いわゆる三大欲求のひとつなのだから当然といえば当然だ。
しかし当然だからこそ、「エロ要素」は切りはなして、キャラクターやストリーを評したい……という思いがあるのだ。

せっかくなのでエロだけどちゃんとエロじゃない楽しさもあると思っているマンガをひとつあげておくと『異世界レビュアーズ』などは大好きだ。アニメはいろいろ憂き目にあっていたのも納得の破廉恥具合だ。

しかし冷静に考えてみればエロだって魅力のひとつなのだから忌避する必要はないはずだ。「これはエロいから最高!」でいいはず。いいはずだけれど、自分のうちなる声がそれをゆるしてくれない。

世間体なのか。イメージづくりなのか。それとも教育のせいなのか。細かいことはわからないけれど、そこにある「性欲」という根源的な欲求をすなおに受け入れ、評価することに抵抗があるのだ。


男×男であればそこに性欲を感じずにすむ

セックスという行為自体は避けがたいものであると評価しているくせに、そこに性欲という要素がともなうことに嫌悪感を持ってしまう。その相反する気持ちの落としどころこそがBLという存在なのではないだろうか。

もちろんわたしは男なので、世の大勢のBLを愛する女性のみなさまが「BLでも性的欲求を感じます」と言われれば終わりなのだけれど、わたし個人としてはそこで行われている要素がどんなに愛にあふれる行為であったり、ハードでバチバチなからみであったとしても、そこに「エロ要素」を感じることは基本的にない。

そこにあるのは「ただの行為」だ。高位のコミュニケーションとしての記号にすぎない。そこに性的な欲求を感じずにすむからこそ、純粋さを感じるし、さまざまな形を模索することができる。人間の根源的欲求にしばられない自由さがそこにある。

そこまで考えると「自分の性と切りはなして楽しむことができる」というのは、ある意味間違ってはいないけれど、要するに「性≒性欲」であることをオブラートに包んでいるのだ。切りはなしたいのは己の性欲なのだ。


BLの魅力は「性欲」を切りはなしてセックスを描くことができる点

これがわたしの現時点で到達した結論である。

親密度のあらわれとしてセックスを描くことは当然にあっても良いはずなのに、自らの性欲への嫌悪感・回避感から、男女でのセックスでは素直に「行為」として楽しむことができない。
しかし男×男であればそこを素直に楽しむことができる。性欲の介在しない純粋な行為として愛でることができる。言ってみれば処女懐胎みたいなもので、尊い以外のなにものでもない存在だ。いや、まぎれもなく尊い。

もちろん結論はわたし個人のものなので、まったくそんなことないという人もいるだろう。そういう方はそれぞれの理想を追ってほしい。それに必ずしもBLであれば性欲を感じないかと言われれば、それもやっぱり人それぞれのような気がする。

そんなわけで最初に断ったように、今回の考察はあくまでも個人的な趣向の話である。しかし個人的にはひとつの納得できる解に到達できたと思っている。


男性でBLに興味が出てきた方は

もしも男性で、これまでBL読んだことないけど、この記事を読んでちょっと興味出てきた人がいたら、やはりほぼ一般向けのものか、からみの少ないものから読むのが良いと思う。

ちなみにわたしを沼にぶち込んだのはよしながふみ先生の『西洋骨董洋菓子店』だ。もともと一般向けで厳密にはBLではなく、カラミはほぼ?ない?けれど、BL的な要素は多分に詰まっていると思う。

そこで耐性をつけておいて、よしなが先生の過去BL作品に行くもよし、金字塔であり先述した『blanc』のおおもとの作品、中村明日美子先生の『同級生』『卒業生』あたりにいけば、無事沼落ちできると信じている。


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