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こころは海賊 無知なる貴族 目指す宝は『映画』の世界

今まで詳しくなかったモノを見つけて、その知らない「何か」に手を出すとき。

私の心は早鐘をうちはじめ、まだ見ぬ世界に心がわき立つ。

そこには「目に見えない財宝」ならぬ『目に見える財宝』が、これでもか、とばかりにひしめいていることを、私は知っているからだ。

私はここ2年ほど『映画』にはまっている。

映画にはまったのは人生で3度目のこと。
高校生の時はテレビで放映される映画、――特にアクション映画を好んで見ていて、アーノルド・シュワルツネッガーやシルベスタ・スタローンといったアクションスターが大好きだった。

大学生のときは暇をいいことに、最寄りのレンタル屋さんで沢山のDVDを借りた。その時は主に邦画を見ていた。邦画ではないけれど『時計仕掛けのオレンジ』が借りられっぱなしで、ずっと見られなかったことがトラウマのように心に残っている。むしろそれがトラウマで、洋画を避けていたのかもしれない。

そして3度目がここ2年くらい。
間に10年ほどの空白があり、今は新作を映画館に見に行くことはほとんどない。しかしアマゾンプライムと宅配レンタルという強力な味方を手にして、まさに息を吸うように映画を摂取している。今回は洋画中心で、アクションの比率は少なめ、というラインナップだ。

ここに来て戻ってきた『映画』という大海原は、どこまでも広がる青い海だった。そこには、これまでに見たことも聞いたこともなかった素晴らしい宝にあふれていた。心の底から嘘偽りなく、日々、興奮の連続と言っていい。

その上、ただ素晴らしいだけではない。
どのお宝も「目に見える」のだ。

つまり……この映画というジャンルでは、私は新参者であり、旧作であれば何らかの賞や批評サイトで、すでに評価された作品……面白さの担保された作品が、所せましとひしめき合っているのだ。

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何事も楽しみ方は人それぞれだ。

他の人の評価を当てにすることなく、自分の目だけを信じて評価を決める方もいるだろう。私はといえば、幸か不幸かある程度「売れているもの」が好きだ。どんなに評価されていても、難解すぎると感じる『2001年宇宙の旅』のような作品は好きではないし(評価はしている)、売れている作品に必ずある「POPさ」を好ましく思っている。

結果、巷で評価されているものはだいたい楽しい。
という非常に効率の良い体だ。

そして在庫が豊富で、思いついたときにリストにいれておける「宅配レンタル」というサービスは、私との気質と非常に相性が良く、気になったもの、賞をとったもの、誰かが評価していたものなど、なんでもかんでも気になったタイミングで放り込んでおけば、そのうち送られてくる優れものだ。

映画の評価基準は沢山あるけれど、どの評価も探せばその情報が手に入る。それを端から順に見ていくと、どれも評価されているだけのことがあって、ちゃんと面白い。――いや、それらの多くは想像を軽く凌駕してくる。

加えて恐ろしいのは、毎日のように映画を見ても、見終わらないくらい多量の『目に見えるお宝たち』が存在するということだ。こんな幸福なことがあるだろうか。

きっとデイビー・ジョーンズだって宅配レンタルがあったら無限の命を持てあますことはないだろう。どこにDVDを届けるのかは問題だけれど。

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賞レースや監督でも映画を追うけれど、今は私がはまっているのは『A24』だ。

アメリカの映画やテレビ番組の製作、出資、配給を専門としている会社だ。自分のところで映画を作ったり、出資したり、配給したり。かかわり方は映画によって様々だけれど、まずはこのラインナップを見てほしい。

アカデミー作品賞をとった『ムーンライト』に始まり、「直近50年のホラー映画の中の最高傑作」と称されていた『ヘレディタリー/継承』、そして同じアリ・アスター監督の話題の怪作『ミッドサマー』。ただ、たたずむ幽霊の孤独を描く『A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー』。少女の成長と葛藤を描いた『レディ・バード』。そしてダニエル・ラドクリフがおならで進むゾンビを演じる『スイス・アーミー・マン』……

他にも、注目を集めた作品が目白押しだ。

その上どれも「全米が泣いた!」といったストレートな作品たちではない。むしろ「……え?」っと二度見したくなるような、単に心にささるだけではなく、意外性にあふれたクセのある作品たちなのだ。

大手の会社になってしまうと、会社の独自色なんてあってなくなってしまう。それがこういったインディペンデンス系の会社だからこそ、会社として「こういう映画を広めたい」という独自色がどの作品にも見て取れる。

結果として、ラインナップのどれか一つでも自分の琴線にふれるのであれば、他のどの作品を見ても琴線にふれるというボーナスタイム状態なのだ。


はっきり言って、映画好きな人からすれば、『A24』なんて常識の範疇かもしれない。

でも私はこの海に10年ぶりに戻ってきた新参者だ。
何も知らない無知な「はだかの王様」に過ぎない。はだかの王様だからこそ、なんの気兼ねもなく、身に着けた知識を心から楽しむことができる。大手を振って喜ぶことができる。

むしろ「はだかの王様」であるべきだ。くらいに思う。
だって踊らされる私は、この上ないほどの幸福を感じているのだから。服の一枚や二枚くれてやる。もってけ泥棒。だがこの宝は私のもの。どうだ無知は素晴らしいだろう。

無知とは誰にも負けない最強の剣なのだ。

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もちろんこれは映画の話だけにとどまらない。

今まで知らなかったものに新しく手を出すとき。そこには『目に見える財宝』が山のように積まれているのだ。どれだけ奪っても奪いきれない。想像もつかないほどの財宝が、そこにはある。
今まで目を向けていなかった方向に、少しだけ体を向けるだけ。それだけで地平の彼方まで続く財宝に出会うことができるのだ。

今まで自分の前に広がっていた世界は、自分がたまたま向いていただけの狭い世界に過ぎない。ほんの少し向きを変える、それだけの意思があれば文字通り、見える世界はガラリと変わるはずだ。

何もこれはコンテンツ限った話でもない。生きる上でのすべて……何事にも言えることで、人生をゆたかにする秘訣といっても過言ではないだろう。


私は『無知』の御旗のもとに、目につく宝を余すところなく蹂躙しつくす。そんな海賊の心意気で今日も進む。心は海賊。はだかの貴族。

そう、我こそはコンテンツの海賊なのだ。



#映画 #エッセイ #コラム #A24 #コンテンツ会議 #ゆたかさって何だろう

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