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めんどくさいけどクセになる。『金剛寺さんは面倒臭い』というめんどくさい漫画。【レビュー】【漫画】

『面倒臭さ』には色々ある。

手間が掛かる。とか。
時間が掛かる。とか。
体力が掛かる。というときもあるだろう。

そしてまれに登場人物の性格が面倒臭いというパターンも存在する。それが、今日の漫画『金剛寺さんは面倒臭い』であり、ヒロイン金剛寺金剛がまさに面倒臭い性格なのだ。

よく言えば理路整然としている。しかし1から10まで自分の心の動静を解させされたらあなただって必ず思うだろう。「面倒臭いな」と。実際に見てもらえばすぐわかる。

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(『金剛寺さんは面倒臭い』第1巻より引用)

確かに面倒くさいのだ。
『金剛寺さんは面倒臭い』というタイトルに恥じぬ面倒臭さだ。

しかしこの漫画の面倒臭さはこれだけにとどまらない。

キーワードは『本編とは大きく関わりの無い物語である!!』だ。

いきなりそうキャプションが入り、実際に本編とは大きく関わりのない物語が同時並行する。想像してほしい。恋人たちのラブストーリーが進む裏で、銀行強盗が進行する。その面倒臭さを。


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(『金剛寺さんは面倒臭い』第1巻より引用)

もちろんサスペンスなどで物語が同時進行するという描写はある。普通にありあえる。しかし多くの話は、どちらも密接に係わり合いのある話を同時に進ませるからこそ生まれる緊張感やスリルを楽しむための作りだ。

「大きくは関わりの無い物語」が二つ同時に進むなんて、これほど面倒臭い話はない。しかも一度や二度ではない。結構頻繁に「大きく関わりのない物語」が入り込む。

ここまで聞いてもらえば思うこともあるだろう。

『それは、果たして成立しているのか?』と。

そして言おう。

私がここで断じたところで、本編にはまったく関わりのない話ではあるが、著者、とよ田みのるという人は、そんな奇想天外で面倒臭い進行を完璧にやってのける実力の持ち主なのだ。

自ら引っかきまわして、自ら尻をぬぐう。

そんな面倒臭い漫画がこれまでにあっただろうか。いやない。正確にはあったのだと思うけれど、ここまでその微妙な胸腺の上を進ませることに成功している漫画にはであったことがない。少なくとも私はない。

これまでも実験的で挑戦的な表現を追及してきたとよ田みのるさんだからこそできる、その反骨芯の結晶。それがこの『金剛寺さんは面倒臭い』だ。

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(『金剛寺さんは面倒臭い』第1巻より引用)

絵の好き嫌いはあると思う。
喧しいと感じる人もいると思う。

ただ私は、この漫画ほどの崇高な挑戦を成し遂げている漫画を他に知らない。既刊5巻とまだ冊数も多くない。

皆様にも是非一度手にとってほしい漫画だ。



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