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さっと掴んだティッシュに『都会』を感じたあの日

うちの子は最近、よく牛乳をこぼす。

何度言ってもまたこぼすし、すぐ治るものでないのはわかっているけれど、キツく当たってしまうことも時にはある。しかし、何度か続ければ、子供ながらに「悪いことをしてしまった」とわかってくるようだ。

そのせいで最近は、こぼしてしまった時に、すぐに自らティッシュを取りに行って拭こうとするようになった。

残念ながら、まともに拭けるわけではないんだけれど、子供心に「何とかしなければならない」と思いつめたのであろうその仕草には、いじらしさを感じざるえない。実際は「またやったの!」とお冠で、それどころではないことも多いんですけどね……

それはまあ置いておこう。
私は、そんなこぼれた牛乳を拭く『ティッシュ』を見て、ちょっと昔を思い出してしまったわけです。

私が子供時分には、こぼれたものを拭くのは『台拭き』という名の布。床を拭くのは『雑巾』という名のボロ布。

『ティッシュ』はというと、もちろん無かったわけではないけれど、主に鼻をかんだり、使い捨てざる得ないものに使う用途で使用されていたように思う。田舎だったのもあると思うけれど、うちはそういう家だったのだ。

そんな私が、あるとき友達の家に行った際。

調子に乗っていたのだろう。差し出されたオレンジジュースのコップを倒してしまった。派手にこぼしたような覚えがあるけれど、「その部屋の床が絨毯だったのかどうか」とか、そういう今だったらかなり気にしそうな部分に関しては覚えがない。子供だったからね(笑

でも、鮮明に覚えていることがある。

それが、その友達がこぼれたジュースを見て、すぐに机に置いてあったティッシユをさっと掴み取り、颯爽と机を拭きだしたことだ。


……だからなに?

とお思いの方がほとんどだと思う。
私に言わせてもらっても、今ではまったく普通だ。

でも、当時は違ったのだ。

こぼれたら『台拭き』で拭くもの。多分、そういうふうに固く教えられて育ってきたのだと思う。そして、「そんなことで使い捨てのティッシュを使うのはもったいない」というようにも刷り込まれていたような気がする。

そんな状態の私にとって、同じような年齢の友達が、なんの躊躇もなくティッシュを取り、机を拭きだしたあの様は、カミナリが走ったように衝撃的だったのだ。
彼が都会からの転校生だったからかもしれない。自分が田舎者であることにコンプレックスを感じていたのかもしれない。ただその瞬間、ティッシュを引き抜くその姿に、私は『都会』のすごさを感じたのでした。

今でも思い出せるあの、ティッシュを引き抜く軽やかな音。……とかいうのは、さすがに嘘で、そこまで覚えてはいませんが(笑 

そもそも、「ティッシュを使っていたら『都会』って、どうなんだよ」とも思いますが、当時そう思ったのだからそれは仕方がない(笑
今となっては、単なるティッシュから始まって、ウエットティッシュや除菌ティッシュすらも、気軽に使いまわす『都会の大人』になることができた、と言っていいのかもしれません(笑

そして、うちの子も知らぬ間に都会に染まってしまったということなのでしょう。

ま、住んでるところ、私の子供の時居た場所と一緒なんだけどね(笑
結局、『都会』でもなんでもなくて、「ただの教育方針の違いじゃん」ってゆうそういうお話でした(笑


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