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それは狂気の国のアリス『BIBLIOMANIA(ビブリオマニア)』【漫画】【レビュー】

『ビブリオマニア』

その言葉にときめいたことがある人は私だけではないでしょう。私がその単語を初めて知ったのは「R.O.D」というライトノベルのアニメでした。

実際は多少意味が違うようですが、「ビブリオマニア」とは『本(書籍)に対する愛を発露する人のこと。愛書家。書物崇拝狂』のようなものを指しており、私の厨ニ心を大きく揺さぶってくれた言葉です。

このアニメのテレビ版の1話がまた最高で……映画かと見まがうほどの気合いの入れよう。さすがにないかと思って探したら無料で見れるので、お暇な人は私に25分ください。

1話が最高で、あとはアレなので、続きとかお気になさらずどうぞ。



初っ端から話が飛んでおりますが、今日はR.O.Dの話ではなくて、『BIBLIOMANIA(ビブリオマニア)』という漫画のお話です。

はい、どん。

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(『BIBLIOMANIA(ビブリオマニア)』第1巻より引用)

どう。すごいでしょ。

恐ろしいことに、この描き込みテンションが最初から最後まで続きます。狂気の沙汰以外の何物でもありません。

「書き込み」でいえば、私の苦手な浅野いにお先生とか、「乙嫁語り」や「エマ」の森薫先生、古くは「AKIRA」の大友克洋先生あたりが出てくるかと思います。

しかし今作における、その描き込みに掛けるテンションの高さでは、他の方の追従を許しません。大友先生には近いものがあると思いますが、これほどの描き込みと、デフォルメされたキャラクターが同居している、というのは私にとって全く持って未知の領域です。

度肝を抜かれます。

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(『BIBLIOMANIA(ビブリオマニア)』第1巻より引用)

一体全体誰に師事をしたら、こんなちゃんぽん具合が成立するというのでしょう。この科学者の集団のどたばた劇など、手塚作品のようではありませんか。
どこまでも漫画でありながら、一枚一枚が完成された『絵画』のようでもある。それほどの完成度がすべてのページに宿っているのです。

初出は「KAI-YOU.net」というWEB媒体での連載。この「KAI-YOU.net」という媒体も不思議……というか、今風のジャンルレスな媒体ですね。元々雑多なものが好きなので、こういう媒体好きです。

日付を見る限り「BIBLIOMANIA」は2ヶ月に1話程度の更新だったようです。月刊誌以上に時間を割くことができるこの度量が、このクオリティにつながっていたのでしょう。

「描き込み」といえば『BASTARD!!』というのも思いつくところです。さすがの描き込み量なのですが、週間ジャンプでの連載は何度かの中断に見舞われ、その後はウルトラジャンプ(月刊誌)。

熱量を持って描き込むことの大変さが伝わるというものです。

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(『BIBLIOMANIA(ビブリオマニア)』第1巻より引用)

そして本の形で読むと、最初の1ページから違和感を味わうことになります。この漫画は、『左綴じ』で作られており、左から右に読み進めるのです。

通常日本の漫画は右綴じで、右から左に読むように作られています。
しかしフランスの漫画である「バンドデシネ」や、アメコミなどは左綴じが基本です。私はこの本を手に取った瞬間に、まず「海外由来の漫画なのだろうか?」と思いました。中身も日本人離れしており、通常の『漫画』というイメージからはかけ離れていたからです。

実態はバンドデシネに影響を受けているものの、日本で活躍されているマッチロさんというイラストレーターの方が描かれています。ということは、意図的にバンドデシネのような違和感を与えたかったのでしょう。

そしてイラストレーターの肩書きを持つ方が描いていると思うと納得いく部分があります。上記した画面からにじみ出る『絵画』のような完成度です。

あくまでもイラスト、一枚の絵の集合体である。と思うとその緻密さ、熱量に合点がいきます。同時にその労力のすさまじさには本当に頭が下がります。

週間連載では絶対にできないクオリティです。これだから漫画は面白い。
これからは紙での発表にとらわれることも少なくなるでしょうし、こういった『規格外』の作品に出会う機会も増えるのかもしれません。

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(『BIBLIOMANIA(ビブリオマニア)』第1巻より引用)

ストーリーは「不思議の国のアリス」を下敷きにしながらも、様々な要素を融合した、まったく新しいダークファンタジーです。

入り組んだ内容は、簡単に理解しがたい部分もあります。しかし最初から最後まで異世界に連れて行ってくれる、この熱量を皆様にも感じていただきたい。

実は、先述した「KAI-YOU.net」にて、今でも全部読むことができます。

しかし、ぜひとも書籍の形で、この稀有な物語に触れてほしい。
私はそう願っています。

その方が圧倒的にこの漫画の世界、その違和感に触れることが出来るからです。これほどの作品にWEBだけで触れた気になるのはもったいないです。

今年の締めの一作として。
狂気あふれる和製バンドデシネ。

BIBLIOMANIA」はいかがでしょうか。


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