見出し画像

いつものだし粉 商標登録とだし粉の事

2021年3月10日、特許庁より封書が届き、無事に申請が通って商標が取れました。
商標をとったのは「いつものだし粉」という言葉。

こちらは、私が入社して以来ずっと作りたくて仕方がなく、何度もチャレンジしては調整を繰り返し、ようやく出来上がった開発商品でした。
殆ど一人でずっと向きあって開発した商品なので、形になって流通が始まり、それが皆さんに受け入れられて広がりを見せている今の状況が、心から嬉しくて仕方がないのです。

今回は、商標も取れたということで、ちょっとだけこの商品の開発の経緯や品質のことを書かせていただきます。

1. いつものだし粉 開発の経緯

この商品開発の一番大きな理由は
忙しい時でもさっと手軽に、美味しくて安心して使える出汁が欲しい!
という、自分自身とお母さんたちの声からです。

いつものだし粉

弊社の超繁忙期である年末の時期は、連日深夜まで仕事が続きます。
そんな業務のあとに帰って、へとへとの身体で御飯を作る気にはなれません。
でも出汁があれば、簡単ではあってもお味噌汁とおむすびの夕飯が食べられるので、出汁だけは確保するようにしていました。

私はここ(タイコウ)に勤める前は料理人をしていましたが、そちらもやはり激務で、勤めた店によっては始発で出勤、終電帰宅の生活でした。

そんなときにも、どうやって日常の食卓として昆布とかつお節(自分で削る削るところ)から出汁を引いていましたが、これは料理を生業としている人間で、料理が好きだったからこそできたことですが、特に料理を好きと思っているわけではない人にとって「出汁を引く」なんて事は、手順から真っ先に消されてもおかしくないな、と気づいていました。

また、タイミングとしても友人知人の妊娠出産が重なり、彼女たちから「家族のためにきちんとしたものを作りたいのに、体力も気力も持たないから、つい簡単なものに頼ってしまう」という話が度々上がっていました。
その『簡単なもの』に頼られてしまうものの筆頭が、出汁でした。

しかし、その『簡単なもの』は大抵のものが添加物や化学調味料のほか、塩分やお砂糖が含まれており、なんとなく罪悪感をもって料理をしているというのです。
近年では添加物の摂取量が多いと体内のミネラル不足に陥ったり、発育期の身体に悪影響があるということがわかってきております。そういったことを考えると、極力添加物は控えたいと考えるのは自然なことですし、塩分やお砂糖が入っていると、必然的に味が濃くなってしまうので身体にも良くないのでは?と懸念も生まれます。
けれども、「顆粒だしの手軽さは本当に助かる」という話も否定できません。

そこで、顆粒だしの手軽さで使える、天然素材の出汁を用意すればいいじゃない、と思ったのです。

いりこ

2. 美味しいだし粉づくりの要

添加物の無いものを用意することは、とても簡単です。
素材を集めるだけなので、誰でもすぐにできます。

栄養のあるものを作ることは簡単です。
丸ごと使えば、懸念していたミネラル不足どころか、ミネラルを摂取することができます。それも天然素材で、カルシウムやマグネシウムや亜鉛、カリウムに食物繊維、そしてアミノ酸といった各種の必要な成分がたっぷりです。

しかし、日常的に食べるものは、やはり美味しくないと続けられません。

そこで、素材選びがネックになります。
美味しい粉の出汁を作ろうと思ったときに重要なのは、うま味成分の多いものを探す事よりも実は大切なことがあります。それは、旨味成分が多いものよりも、美味しくない成分や要素を含まないものを選ぶことなのです。

いくら旨味が強くても、雑味が強ければすべて台無しになります。

素材を選ぶにあたって、いりこと昆布の粉はそれぞれ6社10アイテム程度を試して比較をしてみました。質の良いものから業務用や一般的に売られているものまで、作り方や配合や味香りなどを様々に比較した結果、現在使用しているものに落ち着きましたが、比較の過程で先に上げた重要なポイント気づいたのです。

例え旨味が強くても、臭みやえぐみといったマイナスの要素が強ければ、トータルバランスとして「美味しくない」ということになります。
逆に旨味が多少弱くても、雑味がなければ濃い出汁にしたいなら多めに入れればいいですし、その他の食材から出る味わいも相乗効果があることを考慮すれば、十分に美味しさの底上げの役に立つのです。

だからこそ、すんなりと原材料は選ばれていき、最終的に決まったのは
こんぶ土居 さんの真昆布の粉、と、いりこのやまくに さんの 上物大羽いりこ なのです。
この2つはどちらも弊社と同じく目利きが選別を行って、それぞれに適したものを仕分けて販売されています。
昆布も、いりこも、スーパーに売っている一般的な商品と比べると『高い』と思われるかもしれませんが、その商品は多くの上物の中から選別され、選び抜かれたものだけが並んでいます。

どちらも、信頼のおける素晴らしい問屋さんです。

どの出汁素材にも言えることですが、<雑味>が起こる原因は確実にあり、それが何故起こるのか、どうしたら起こるのか、どうなっていたらそうであるのか、を理解していることが、目利きの重要な点なのです。

また、単純に上記の条件をクリアしていたとしても、もう一つ大きな問題があります。
それはバランスです。
味というものは、一つの味が特化しておいしくていりこ全体として考えると意外と食べ飽きてしまったり美味しく感じないことが多いのです。

今回の好例がいりこでした。
いりこは最終的に対馬方面で取れたものと、瀬戸内海の燧灘(ひうちなだ)で取れたもので悩んだのですが、最終的に燧灘ものになりました。
それは海流が大きく関係しています。
対馬方面の海で取れた片口鰯は、やや冷たい荒波に揉まれ、たくましく育っているので筋肉質で、いりこにすると固めで味わいのしっかりとした美味しい出汁の引けるものです。
対して、燧灘のいりこは瀬戸内海の温暖な海流で育っているため、比較的柔らかな筋肉を持つため、いりこにしても割れやすく、上品な味わいの出汁が引けるのです。

単体で出汁を引いたときは、実は対馬方面で取れたいりこの方が味が濃く、しっかりとした旨味を感じるものでしたが、だし粉としてブレンドすると、自己主張が強すぎて、バランスが非常にとり辛いものでした。

こういったことを理解して、最終的にどのような味を目指して作るかの指針を立てると、おのずとどれを使うかが決まっていきました。

画像3

3. 手間をかける事を厭わない

使う人には、美味しく簡単に使えるものにするには、その手間をこちらで担う必要があります。
かつお節や昆布は、そのまま粉をさらに細かくするだけなので、決して難しくはありません。
一番の問題はいりこの処理です。

いりこは、内臓やえらが臭みや苦みの原因となります。
なので、雑味の無いものをつくろうと思うと、それらを一つ一つ取り除く必要があります。機械はありません。なので、全て手作業です。
一尾ずつ、手でいりこを割って内臓を処理しています。
(この処理の仕方は、いりこのやまくにさんがWSにてお伝えされているものなのですが、これをやるやらないでは味が違います。)

そして、これをやるもう一つの理由がありまして、弊社では、いりこの内臓に含まれるであろうマイクロプラスチックを取り込まないために、という意味があります。

本当であれば、丸ごと食べられた方が栄養価は間違いなく高いはずですし、こんな手間をかけずにできれば、製造する側の自分たちも遥かに楽です。
でも、『もしも自分の子供に食べさせるなら?』と自分に問いかけると、『食べさせたくない』という答えが出てきました。

だから、手間がかかろうとも、大変でも、『安全に美味しく食べてもらう』ということを考えると、飛ばすことはしたくありませんでした。

だからこそ生まれたこの味には、絶対の自信を持っています。
他社には真似のできない品質と味、それがこの【いつものだし粉】です。

わかめの味噌汁

4. だし粉の作り方(レシピ有)

だし粉は20g入りで540円(税込み)です。
これを高いととるか安いととるかは、買われる方の感覚によって違うので一概には言えないと思います。
ただ、使う量は少量でしっかり出汁が取れますので、決して高くはないかな、と作っているものとしては思います。

ただ、もしも自分で作ってみたいという方がいましたら、ぜひお試しください。出汁素材を皆さんそれぞれの好みのメーカーで作られたり、あとは配合比率を変えることでまた味も変わりますので、地域によって昆布強めが好きな方やいりこ強めが好きな方がいらっしゃるかと思いますので、好みのものを作ることもできると思います。

【材料】だし粉100g分
・かつお節 60g
・いりこ 30g
・昆布の粉 20g
【作り方】
①いりこを背中から半身に割って、えらと内臓を取り除く
②さらに身を半分に割って、フライパン 弱火で軽く炒めて魚臭さを飛ばす
③いりこが冷めたら材料を全てミキサーに入れて良く攪拌する。
④完成。

出来上がったものは、できれば密封のできる袋に入れて冷蔵庫保管の上、1か月を目途に使い切ってください。

※いりこの処理の仕方は、ぜひいりこのやまくにさんのWSへのご参加をお勧めします!

とっても簡単です。だから作ることは誰にでもできます。
ぜひお時間がある方はお試しください。

締. いつもの食卓にいつものだし粉を

この商品の祈りは、お客様の食卓に笑顔があることです。
美味しいと笑顔があり、手軽にできて助かったと笑顔があり、健康でいられることに喜びがあること。
それによって、使う方の生活が少しでも豊かになることを想い作りました。
手間暇はかかりますし、いずれ外部委託をするかもしれませんが、そうなったとしても、必ずこれが果たされるところに依頼します。

小さなことかもしれませんし、微々たるものですが、良かったらぜひ一度お試しください。
それぞれの生産者の、誠実さの表れた品物を組み合わせて作りました。
これからこの商品が、皆様に永く愛されていくことを願います。

あなたの傍らに、いつものだし粉があることを願っております。

文章に残して、後の世代に繋いでいきたいと思っています。 サポートいただけると、とても励みになります。 よろしくお願いします。