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KPOPファンが韓国語を学ぶときに起きること


韓国語を学習したいファンの心理

 「Learn! KOREAN with BTS」など韓国でのグローバルな韓国語教育コンテンツを手掛けた著名な韓国人研究者による、ある基調講演での話です。ヨーロッパのある大学の書店では「Learn! KOREAN with BTS」が非常に売れているそうです。それだけ、ヨーロッパでもBTSは人気があり、韓国語学習意欲があるということですね。
 にもかかわらず、その研究者は、ヨーロッパの学生の言葉を次のように紹介していました。

「世界には1億のKPOPファンがいて、それに近づきたくて韓国語を勉強しようとしている。しかし、いざ韓国語を勉強すると面白くない。こんなにつまらないならKPOPだけ聞く」と言って去って行く学生が大勢いる。

 ヨーロッパ諸国で、韓国語学習意欲が生まれたのは、昨今のKPOPの世界的流行を受けてのことだと思います。おそらく、韓国で制作されたグローバル教育コンテンツを使って学んでいるのでしょう。しかし、そういったコンテンツを使って学習した人の感想がこれなのです。
 これは、いわゆる文法を中心としたこれまでの外国語教育の形態が、今の若者のニーズとマッチしていない、しかもその傾向が世界的であることを示唆しています。
 これまでの外国語教育は、研究やビジネス、あるいは大学の単位修得が主目的でした。でも、サブカルチャーから入った外国語学習者の多くには文法中心教育がマッチしないことを意味しています。
 英語を除けば、サブカルチャーから外国語学習を始めるケースというのは、日本語が初めてだったのだろうと推測します。世界にいる日本のアニメファンの日本語学習、その次が、世界にいるKPOPファンの韓国語学習なのでしょう。
 こうしたサブカルチャーから入った外国語学習者は、既存の外国語学習者とは、心の中の状態が少し違うことが原因ではないかと想像しています。

 語学の習得過程には、過酷なトレーニング、小テストなどの圧迫(?)がつきものです。ビジネスや研究、大学での単位修得では、それらの「過酷さ」を想像した上で学び始めます。でも、サブカルチャーから入った学習者は、「大好き」という気持ちが先行しているので、「過酷さ」ではなく「楽しさ」、あるいは何か「キラキラしたもの」と語学学習を結びつけているのではないでしょうか。だから、現実が「難解」で「つまらな」くて「過酷」だったときに「幻滅」しやすいのではないか。特に、ヨーロッパの人にとっての韓国語は、日本人にとっての韓国語よりずっと難解でしょうから、ますます「苦行」の面が大きくなりますしね。
 こうしたKPOPファンの心理と、教育者側の思いがすれ違っているのが、現状の韓国語教育だと思っています。学生の「韓国語ができるようになりたい」という願いに答えようと、熱心な教育者ほど「過酷に」圧力をかけます。もっとたくさんの単語を覚えよ、もっと正確にスペルを書け、もっと完璧に用言を活用せよ・・・。こうした教育を強く進めれば進めるほど、その「キラキラのない学習内容」と「過酷なプレッシャー」が、一部の学生にとっては「思っていたのと違う」になってしまうのです。

サブカルチャーが動機の学習者のための学び

 Kコンテンツが目標文化の人は、韓国語という言葉を通じて、言葉から垣間見られる自分の好きな文化(推しやKコンテンツ)に触れたいと思っているはずです。
 つまり、文化>言葉なのです。学習していると「主従関係」が曖昧になることがあるのですが、言葉=従、文化=主です。

 学会でもKPOPをどう韓国語教育に取り込むかという議論はあり、本国ではBTSを利用したコンテンツまで開発されています。語学学習にKPOPを取り入れているにも関わらず、「面白くない」と言われてしまっているのです。これは主従が逆転しているからです。教育業界では韓国語が主(本丸)、Kコンテンツが従(韓国語学習の活用、手段、エサ)と捉えて教育していますが、そこを逆転させないといけないのです。(←これが韓活韓国語のコンセプトで最も強調したいことかもしれません)
  Kコンテンツをエサ(例文など)に文法を教えるのではなく、純粋にKコンテンツを深めるための言語学習にするというスタンス、「Kコンテンツで学ぶ韓国語」ではなく「韓国語で学ぶKコンテンツ・韓国文化」でないといけないのです。そのことに教育側が気がつかないと、学習者の失望や挫折は止まらないでしょう。もっとKコンテンツを「活用」して魅力的なコンテンツを開発すべきというのが昨今の学会の目下の目標のようですが、Kコンテンツや文化を「活用」するのではなく、そちらが「本丸」なのです。

そんな思いで作った番組の再放送来月からまたやりますよ!
今までの語学講座と何が違うか是非チェックしてみてください。


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