「想像してごらん」の実(グレープフルーツ・ジュース/オノ・ヨーコ)
苦しさにも、種類がある。
メンタルとか、フィジカルとか、もしくは、どちらでもない、上手く例えられない苦しさ。
ふいに、息ができなくなる。のは、フィジカルだろうけど。原因は、(たぶん)メンタルにあって。どちらにも原因があるなら、どれからどれをすればいいのか、わからない。
八方塞がりのぼくは、どこへも行けない。横たわるだけで、精いっぱい。また、息ができるようになるまで、耐えている。どこへも行けないぼくの苦しさは、どこから来たんだろう。そして、どこへ行くんだろう。
「想像してごらん(Imagine)」
と、ぼくの中のジョン・レノンが語りかけてくる。(幻聴)
できません。
と、ぼくのことばかりのぼくは言う。
こちらは、世界平和どころじゃないんです。ぼくは、ぼくの平和が欲しいんです。(ジョン・レノンも、ぼくのことなんて、知ったことではないだろうけど。)
「想像してごらん(Imagine)」
じゃあ、世界平和じゃなくて、ぼくの平和は。いずれにせよ、想像がつかない。たぶん、なによりも欲しいものなのに。世界平和より、想像ができないのは、よくないのでは。どうしてなんだ。こんなに欲しいのに。
地下水の流れる音を聴きなさい。
(Listen to the sound of the underground water.)
オノ・ヨーコは、『グレープフルーツ・ジュース』の冒頭で言った。
ジュースになる前の『グレープフルーツ』から、ジョン・レノンは『イマジン』を生み出した。(『グレープフルーツ・ジュース』は、『グレープフルーツ』の記述から厳選したもの。)
「~しなさい」「~しなさい」と、何頁にも渡って続く。実際にできそうなものもあれば、それは不可能だろうと思うものまである。
でも、それはきっと、できるかできないか、は問題じゃないんだろう。それらから『イマジン』が生み出されたように。
まず、想像すること。具体的な指示がないと、なにもできないぼくでも、具体的な想像があれば、どこへでも行けて、なにかを生み出せる気がした。気がする、だけかもしれないけど。
苦しいとき。ぼくは、そのとき思い出せる指示のまま、想像する。そうすれば、少しでも和らぐ気がして。
この本を燃やしなさい。読みおえたら。
(Burn this book after you've read it.)
なので、ぼくはまだ燃やせずにいる。燃やすときが来たら、そのときに、本当にどこかへ行ける気がする。
グレープフルーツ・ジュース - オノ・ヨーコ(1998年)
この記事が参加している募集
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。 「サポートしたい」と思っていただけたら、うれしいです。 いただいたサポートは、サンプルロースター(焙煎機)の購入資金に充てる予定です。