You have a bad day.(コーヒーをめぐる冒険/ヤン・オーレ・ゲルスター)
『コーヒーをめぐる冒険』。原題は『Oh Boy』もしくは、『A Coffee in Berlin』。
邦題、カタカナで「オー・ボーイ」でもよかったんじゃないのかな。と思ったのは、あんまりコーヒーをめぐってないからだ。正しく言えば、本筋に関わっているようないないような、そんな存在。
とことんついていない青年の一日の話。途中途中コーヒーが飲みたくなるのだけど、なぜかいつもタイミングが悪い。(コーヒーマシンが故障しているとか、手持ちのお金が足りなかったとか。)
たぶん、いつまでもコーヒーが飲めない運の悪さは、青年の運の悪さを表しているんだろう。(コーヒーが飲めたところで、青年の運が上向きになるとは思えないけど。)
青年の「とことんついていない一日」は、(本人の自業自得のふしもあるけれど)さまざまな人の巡り合わせによる。
本人の飲酒運転のせいで免停を言い渡した職員。(「情緒が不安定なようですね」と青年に言っていたけど、いやそれはお前だろと思った。)
青年と同じアパートの住人。中年くらいの男。(妻手製のミートボールを携えて歓迎したが、突然妻と不仲であることを吐露し、最後には泣き崩れた。)
元いじめられっ子の美人。(いじめていたのは、当時の青年。したたかになっていた姿に、彼は感銘を受けていた。)などなど。
そして、バーでからんできた老人。子どもだったころは、二次大戦の真っただ中だった。一方的に話すだけ話して、老人は立ち去ろうとするけれど――。
あたたかな出会いも、苦しくなるような出会いも、青年の「とことんついていない一日」につめ込まれていた。
それで、どこか頼りない青年が劇的に変化するかどうかは、わからない。たぶん、すぐに変わることはないだろう。けれど、まったく変わらないわけじゃないだろう。
周りが変に思えて 違和感があるんだ
経験あるかい?
だけど分かってきた
問題なのは他人じゃなくて自分なんだ
人と出会った分だけ、得たものも失うものもある。そのどちらもが、たった一日で。
そんな一日が終わり、翌日になると、青年はコーヒーを飲んでいる。ただただついていなかった一日の終わり。それだけじゃなく、青年はほんの少しでも変われたんじゃないだろうか。そんな気がした。
コーヒーをめぐる冒険 - ヤン・オーレ・ゲルスター監督(2012年)
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