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無差別級!リレー小説⑥ゆか

「……うん。君には感謝しているよ。僕だけがこの街で"成った"ことを知らせてくれて。僕は一人だ。僕は、一人」

冷たくやさしい夜風が、彼にまとわりつく。

「君がいたら、せっかくの一人じゃなくなっちゃうからさ。だから、さようなら」

「……うーん」

彼女は紅い眼を閉じ、頬に細く白い指を当て、考えを巡らせている様だった。
暫くして、瞼が開かれる。
夜の世界に紅い満月が2つ、突然と現れたようだった。

「ワタシたち"ファミリー"と一緒に、来てみない?」

「……どういうこと? 話聞いてた?」

「聞いてた聞いてた」

「僕は、漸く一人、サイコーの一人になれたんだ。どうして君なんかと」

「なんかとは何よー」

「……なんか、は余計だった、謝るよ」

「あいー」

「でも行かないよ」

「なんでよー」

「じゃあ聞くけど、どうして僕が君と一緒に行かなければならないの」

「君とワタシは、違うけど同じだから」

「はい?」

「ううん、君とワタシだけじゃない、世界にはワタシたちと、違うけど同じ子たちがたくさん、いるから。ワタシの話と君の話。違うけど、同じじゃないけど、あぁ、似てるってのも違うね。でもだから。違うけど同じ、でしょ」

「……だからそれが、何なの」

「ワタシが思うに、"成った"子たちはみんなそうなの。みんな、違うけど同じ子たち。きっと、そういう子を"パパ"が選んでいるんだと……ううん、"パパ"よりももっと、うーんと……この世界が? 選んでいるのかなって」

「……この世界がそうさせているなら、そもそも僕らみたいのを創らないでほしいんだけど」

「うん、まあそうなんだけどさ」

「……」

「君は一人だって言ったね。確かにそうだと思う。みんな一人。サイコーの一人だよ。でも、みんなが一人だから、みんな違って、同じなんだと思う……ワタシたち」

「……」

「一緒に行こうよ。世界には、君とワタシと、違うけど同じ子たちが、まだたくさんいるんだ。だから、一緒に行って、"パパ"に選ばれた、世界に選ばれたみんなで、サイコーの一人になろうよ!」

空高くには、細く薄い月が、青白く輝いている。
そして彼の目の前には、紅い2つの月が、三日月にカタチを変えて、怪しく光っている。

「……わかった」

「おぉ!」

「君のキレイな誘い文句はわかった、それで本音は?」

「むかつくオトナたちがバーッて、キャーッて、みーんな赤く染まっていくの、みていてとってもタノシーから!」

紅い三日月がより細くなり、大きな笑い声と変わって消えていく。

「……はぁ」

「最初は怖かったけどさ、でもワタシたち強いし、選ばれなかったってことはロクなニンゲンじゃないでしょ、タブン」

「酷いなぁ、ヒトデナシっていうんだよきっとそういうの」

「もうヒトじゃないもーん」

「はいはい」

「……で、どうする?」

「……僕は、」

舞台を創ること以外にも創作がしたい、これまで舞台で表現してきた物語や世界をもっと知っていただきたい、楽しんでいただきたい……そんな思いから始めたnoteです。 細々と更新しておりますが、少しでも楽しいをお届けできていれば幸いです。 もしよろしければ、サポートよろしくお願いします!