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18歳の花束 『花のあるストーリー』★1★

「先生、今度の木曜の夜、塾に行っていいですか」

2018年3月、高校を卒業し大学へ進学した女の子、マグマちゃんからLINEをもらいました。ときどきおなかが「ぐぐぐぅぅ」とマグマのように鳴るからマグマちゃんです。

LINEのメッセージには、私の塾に『何をしに来るか』は書かれていません。
まさか勉強ではないだろうし・・・もうこの時点でバレバレなんだけれど、マグマちゃんはたぶん、何らかのサプライズを企んでいるのです。

約束の木曜日の夜、LINEのメッセージが来ました。

「教室に入っていいですか?」

塾が終わるのはたいてい22時。授業がすべて終わるタイミングを見計らってきて教室に出向いてくれた様子。チャイムを押すのはうるさいからNGという約束も守ってくれている。

私はLINEで「いいよー」と返信するかわりに、教室の階段をさっと下りて玄関のドアを開け、マグマちゃんを迎えるために外へ出ました。

すると——

「うわぁ!」

マグマちゃんが叫び声をあげました。そんなマグマちゃんの後方で、『コナンの犯人みたいな影』が二つ隠れました。マグマちゃんは1人ではなく連れ立って来ていたのです。

* * *

マグマちゃん(高3女子)、サクラジマくん(高3男子)、そしてイスコくん(中3男子)。2018年2月に1つの教室で、共に受験と戦った『元』受験生3人組です。

「受験、お世話になりました。ありがとうございました!」

3人は黄色い花束と、ムーミンのお菓子と、スタバのコーヒーをプレゼントしてくれました。

「すみません、ぐだぐだになっちゃいまして・・・」

本当は1人で卒業のあいさつに来たと見せかけて、実は3人いた!! というサプライズをやりたかったらしいです。

▲ムーミン缶は部屋に来るなり『赤の書棚』へ収まりました。

それにしても花束を贈るって迷いますよね。妻のマリネコさんが『家族や友達の誕生日に花をプレゼントする習慣』を大切にしているため、私自身も花屋さんに行って花束を注文することが多いです。

東京の花屋さんで花束をオーダーするとなると、3000円出してようやくプレゼントらしいボリュームになります。2000円くらいで見栄え良くするのは難しいです。予算オーバーだけどあと500円出そうかな。いっそ5000円にしようか。でも5000円は高いよな——大人でもかなり葛藤します。

そんな花束のプレゼントを買うという難しい役割を、サクラジマくんが任されたそうです。慣れない花束のオーダー。どの店で、どんなことを想っていたのかな。予算と相談しながら、私のことをイメージしてカラーや包装紙やリボンの色を決めてくれたことを想像すると、花束の感動はすごく大きいものとなります。綺麗な花をありがとう。塾に楽しく通ってくれてありがとう。そして三人とも、卒業おめでとう!

***

『第1話あとがき』

残念なことに、教室にはプレゼントの花を活ける花瓶がありませんでした。花瓶もない教室って・・・生徒から花をもらったのは、これが初めてのことです。みなさんの仕事場には花瓶はありますか?

花瓶の1つも持っていない私が、花や花好きの人たちに対してできることは、自分が体験した『花のあるストーリー』を文字の形に整えて贈ることだと考えました。

その後、花束を作ってくれた元サクラジマくんからLINEが来ました。

「ピンクか迷ったんですけど、先生ってヒマワリっぽいかなーと思って黄色にしました」

とのことです。彼が『ピンクもあり』と思っていたのが意外でした。ピンクかー。たしかに私はあまり好んで身に着けない色です。と思ったら、たった今ピンク色のシャツを着てました。

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