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川下るこどもと川眺めるおとなと。

大きな川の川辺に来た。暑さのピークの時間帯は過ぎ、木陰のコンクリートはまだ熱いが心地よさの範囲だったので腰をかける。

左手には中州。川は左から右に流れていて目の前が水の合流地点で流れが早かった。

中州の向こうで2つのゴムボートに乗っている人々が見えた。
2人ずつ。家族連れだろうか。
子どもがいるとしたら、流れが早すぎる気がした。
よく中州までいけたなぁ。

声が聞こえて、若者たちだとわかった。男子。
「危ないな、大丈夫かな」と思った。
わたしにはあんまり川のことはわからないけど。
ニュースに出ちゃうとしたら、こんなことしてる人たちじゃないか。

高校の時の修学旅行でバカをやっていた男子たちのイメージがよぎった。
そんなことを思いながらぼーっと眺めていた。

徐々に近づいてきて、後ろボートの1人と目が合った、、というか意識が合った気がした。
コンクリートの向こう側に投げ出した足があまりに乱れていたので、恥ずかしくてちょっと直した。

前触れもなく美しい仕草で「すっ」と彼が静かに手を挙げた。
わたしもつられるように「すっ」と手を挙げた。

彼の後ろにいた男子も「すっ」と手を挙げた。
わたしももう一度「すっ」と手を挙げた。
少し自意識が出てきて、今度はさっきより気持ち早めに降ろした。

気を付けてーとか声をかけたくなったけど、何か違う気がしてやめた。
自然を信頼しているのかもなぁと思った。

「どうしたー」と前方のボートから声がかかった。
「ううーん」と後方のボートは返事をして、そのまま下っていった。

流れはもう少し右手に下ったところでゆるやかになっていたようだ。
安心しつつ、10分か20分か。
見送っていたら向こうの橋げたの方まで行って見えなくなった。

ふと映画「スタンド・バイ・ミー」を思い出した。
ちょっとあぶない冒険も男子たちには必要なのかな。

ある本に、子どもが大きくなってきて、ある段階に達すると大人は「見ること」のみが役割になると書いてあったな、とふと思った。
そして、一瞬、手を挙げてしばらくの間に、ちょっぴり少女に戻っていた自分に気が付いた。


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