連載やさぐれエッセイ-Deserve-思わずポロリ
今朝も4歳の次男JJとデイケアに登園
コロナ禍で親は中に入れないので、園長のインド系女性ナヴィが玄関で子どもたちを出迎える
いつもは最低限のあいさつだけなのに、今日はめずらしく顔を合わせるなり話しかけてきた
『いまちょうどアナタからのメールよみおわったところよ!読んでて胸がいっぱいになった。ああいう言葉もらえると励みになるのよね〜』
いつもはムスっとした表情の彼女。見るとマスクの上のキラキラした目が笑っていた
きのうデイケアの駐車場で、療育学校からもどってくるスクールバスを待っていたときのこと
バスのドアが開いて笑顔でおりてきたJJの後ろに『ホームアローン』の主人公みたいな男の子が立っていた
その子はだまってタラップの上に立ちつくし、そこから動こうとしない
後ろにほかの子どもたちがつかえていたので、出迎えのナヴィが両腕を広げてその子を抱きとろうとしたとき
ドンッ!
急に鈍いイヤな音がして、カルキンがいきなり園長の胸に思いっきりケリをいれた
4才くらいの男の子の容赦ないキックは相当キツい
思わずハッとして『だいじょうぶ?!』と蹴られたナヴィにかけよると、彼女はまったく動じず『I’m OK』と何事もなかったかのように、今蹴ってきたマコーリ少年を落ち着いた態度でバスから助けおろしていた
ナヴィ!!
すげ!!
どっしり体型でふだんあまり表情を動かさない彼女
でもこの一瞬に、彼女の教育者プロ魂がキラリと光った
そして前日の朝。
同じブロンドの男の子
デイケアの建物から泣き叫びながら出てきて、先生に助けられながら療育学校行きのバスに乗る
中に入っても抵抗が続き、シートに座らせようとした若いカナダ人の先生の顔を平手打ちしたり、JJの座っている前の座席をけったり、体じゅうで『行きたくない!』と反抗し続ける姿が窓から見えた
どうなる事かとハラハラしていると、2人の先生は代わる代わる話しかけ、それでもイヤイヤが続くと彼を抱きあげて別の席に座らせる
その席も気に入らないとまた移動させてみる
若い女の先生たちは交代で根気強く対応し、その間まったく無理じいせず、えんえん生徒を落ちつかせようと努力していた!
バスの外で見守っていた私のほうがつかれてしまい、最後まで見届けられなかったが、その間15分。
先生たち〜!!
お仕事とはいえ人間、忍耐にも限りがある
泣き声、叫び声はまだしも、我が子でも不意のケリとか平手打ちには反射的に怒りのスイッチが入るもの
その忍耐強い先生の1人がJJの担任だった
どうりでJJ、この1年ちょっとの間に成長してるわけだ!!
こんな素晴らしい先生方に囲まれてるんだから
あまりに感動して、エピソードの一部をTwitterに書いたら日本のママや先生からポジティブな反響が届いた
うれしくてそのことをカナダのデイケア園長のナヴィ、療育学校の園長、JJの担任にメールしたら、朝からニコニコのナヴィ園長が誕生したのだ
彼女とほぼ毎日顔をあわせて2年になるけど、きょうはじめて彼女と心が通じたと、感じた瞬間だった
自分の書いたメールに、先生たちがよろこんでくれたのも嬉しかった
日本人、移民として26年異国の地で生きてきて、カナダ人とこんなに深くつながれたのは初めてかも。
それもこれもJJのおかげだ
JJのおかげで
初めて『療育』という世界を知り
そこにたずさわる沢山の人たちとつながり
JJに障害があるからこそ
日々の小さな成長に一喜一憂し
思いがけない他人のやさしさに気づく感動の人生がはじまった
いちじは『障害のある子に産んでしまった』自分を責めた
私が40歳すぎても2人目がほしくて、がんばって産んでしまったからJJが障害をもってしまい、本人を苦しませ、家族みんなにも負担をかけてしまったのではないか
私がわるかったんだ
モールでも家でも車中でも叫ぶJJの泣き声に頭がガンガンする
夜も誰もゆっくり眠れない
JJを見守る夫と長男の暗い目と疲れた顔
母親としてJJを産んだ喜びはこの4年でズタズタに引き裂かれた
それがナヴィの笑顔をみた朝、帰りの車中
『JJ産んでよかった』
思わず言葉がこぼれた
JJ産んでよかった。
JJ産んでよかった。
障害のあるJJが、私の知らない世界を見せにきてくれた
JJがたくさんの感動を運んできた
前の日どんなに困らされても、朝まだベッドに寝ているJJのやすらかな寝顔
それを見るときの想像をこえる至福
担任の先生から送られてくる
『きょうJJは初めてみんなといっしょにヨガをやりました』というメールに号泣できる心を養われた
JJとJJの障害がもたらす豊かさ、人生の奥行き
培われる人間としての深み
洞察力
共感力
価値観の総見直し
感謝する力
JJ産んでよかった。
私はJJのママだ