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戦後民主主義の亡霊


通常国会では、憲法改正案の国会提出すらできなかった。戦後民主主義は、まだ成仏していないらしい。


①戦後民主主義の誕生と死


戦後民主主義という用語は、1950年代に使われ始め、1960年代に定着した。そして、1990年代には、もう懐かしい言葉といわれるようになっていた。

戦後民主主義は、戦前とか戦後とかいう言葉を時代区分に使わず、昭和や平成で時代の変化を語るようになった平成時代には、過去の思想となったかのように見えた。


②日本国憲法と戦後民主主義

 戦後民主主義にとっての依るべき根拠は、日本国憲法であり、戦後民主主義者は、日本国憲法を聖典のように扱ってきた。現在、憲法改正に反対している勢力のうち、改憲を一切容認しないという態度を示している人達は、たとえ戦後民主主義という用語を使用していなくとも、戦後民主主義者と言えるかもしれない。社民党や共産党、立憲民主党内の護憲派は、事実上、戦後民主主義者であろう。


③戦後民主主義は、いつ終わっていたのか


(1)1979年

この年、中国とベトナムとの間で戦争が勃発し、ソ連がアフガニスタンに軍事介入して、社会主義は戦争を意味すると言われるようになった。この時、戦後民主主義は、思想的には終わったのかもしれない。ソ連に備えて軍備を充実させねばならないと考える人が増え、現在のウクライナへのロシアの侵略と同様の雰囲気になった。

(2)1982年

「戦後政治の総決算」を掲げる中曽根内閣が成立した。護憲派だった社会党(現社民党)の支持基盤の国鉄を民営化して、この後、立派な憲法を据えると中曽根首相は唱えた。


(3)1994年

平成になって衆議院の選挙制度に小選挙区制度が導入されて、野党第一党が護憲派でなくなった。

こうして見ると、平成初期には戦後民主主義は制度的にも、一度、終わっていたのではないかと思われる。


④戦後民主主義が完全に終わる時


日本が武力行使をしてしまえば、戦後が第二次世界大戦後ではなくなって、第二次世界大戦後のイデオロギーだった戦後民主主義は終わるわけだが、戦後民主主義者の聖典である日本国憲法が改正された場合も、完全に終わるということになるだろう。

現在、政治とカネの問題で護憲派が勢いづいていて、憲法改正そのものに反対する、憲法に一切、手をつけさせない、という形で、いったん死んだ筈の戦後民主主義は、亡霊として甦ったらしい。今年、予想される総選挙の結果次第では亡霊が、さらに徘徊することになるかもしれない。

お読みいただき、ありがとうございました。


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