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【インスパイア小説】貴方解剖純愛歌~死ね~

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2020年11月の記事一覧

貴方解剖純愛歌~死ね~#10【インスパイア小説】

貴方解剖純愛歌~死ね~#10【インスパイア小説】

心配していた天候にも恵まれ、僕らを乗せた車はキャンプ場へ向けて快調にアスファルトを走らせていた。運転は僕が担当し、新が変に気を回したせいというべきか、おかげというべきか、助手席には森川さんが座っている。

先日は自然に打ち解けられていたはずなのに、振出しに戻ったかのようにまた緊張して、なかなか話しかけられずにいる自分が情けない。普段慣れてない車の運転に加えて、隣が気になり手に力が入ってしまい、先程

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貴方解剖純愛歌~死ね~#9【インスパイア小説】

貴方解剖純愛歌~死ね~#9【インスパイア小説】

前期の講義もほぼなくなった昼過ぎ、僕はバイトまでの時間をクーラーの効いたラウンジで潰していた。隣に座る竜馬はジャンプを読み、向かいの新はノートパソコンを開いて画面とにらめっこしながらうーん、うーんと唸り声をあげている。

「なあ、この時期だとやっぱ海の近くでキャンプがいいかねー?それともひっそりと森の奥で、流行のグランピングのほうが女子勢は喜ぶか?って聞いてるお二人さん?」
リアクションのない僕ら

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貴方解剖純愛歌~死ね~#8【インスパイア小説】

貴方解剖純愛歌~死ね~#8【インスパイア小説】

家に着くころにはすっかり日が沈み、辺りは街灯の薄明かりに照らされていた。近くで蛙の鳴き声が聞こえる。街灯の周りには光に吸い寄せられた数匹の羽虫が舞っている。自転車を玄関の脇へ止めると、ポケットから家の鍵を取り出した。

「片づけるからここで少し待ってて」
「何その女の子みたいなセリフ。別に気にしないからいいよ」
と陽葵がついて来ようとする。慌てて待てのポーズで陽葵を制止させる。
「俺が気にするの。

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貴方解剖純愛歌~死ね~#7【インスパイア小説】

貴方解剖純愛歌~死ね~#7【インスパイア小説】

【Buzz】で勉強会という名目で飲んだ日以来、僕らは授業の空き時間には自然と食堂やラウンジで集まるようになっていった。

しばらくジメジメとした日々が続いていたが、今日は久しぶりに青空が広がっている。僕は一日の講義が終わり、帰る前にラウンジに寄ってみた。いつものメンバーは誰もおらず、しばらく待ってみたが結局誰も来なかったので、中庭テラスでのんびり羽を伸ばしていた。日差しが気持ちよく、ずっといたらう

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