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【ココロノマルシェ回答】「生きづらさの克服」を面倒な努力と取るか、それとも?

こんにちは。
ライフストーリー インタビュアー/心理カウンセラーの 真中愛です。


今日は「ココロノマルシェ」に寄せられたお悩みに回答します。

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家庭環境が原因で生きづらさを抱える人がしなくてはいけない努力に納得できません。
A さん

ずっと思っていることがあります。
愛情を感じない家庭で育ったため生きる意欲が弱く、とても生きづらいです。
私は自己肯定感をあげたりなどに取り組まないと生きづらいままでしょうが、どうして苦しんだ私がさらにそんな面倒な努力までしないといけないのでしょうか?
「このために生きてる」というような生きる希望は現状ありません。
皆様のご意見を伺いたいです。

辛くてたまらずカウンセリングを利用したりする料金も相当な金額がかかっています。
社会人ですのでそれを自分のお給料から払っています。
その料金を親に支払ってもらうのが筋なのではと思うようになりました。

本当はこんな相談もしないですむ、カウンセリングのページなど見ることもないような人生を歩みたかったです。

アドバイスをいただきたく宜しくお願いいたします。

Aさんこんにちは、はじめまして。
「ココロノマルシェ」へのご相談ありがとうございます。
真中愛が回答させていただきますね。


ご相談文では具体的な環境には触れられていませんが、愛情を感じない家庭というのはAさんにとって相当つらい幼少期だったのだろう思います。
その悲しい経験がさまざまな観念を生み、生きづらさとなり、生きる意欲や希望を持てずにいることは無理もないことだと思います。
そんなつらい人生を、本当によく耐えてこられましたね。
そして生きづらさを克服するために、Aさんは今まで一生懸命がんばってこられたのですよね。
まずはそんな自分のことをねぎらい、努力を認めて、感謝してあげてください。
あなたは今まで本当にがんばってきたよね、こんなにもつらかったのにすごいことだよ、ありがとう、と。
自分が誰よりも自分に優しく接し、味方になってあげてください。
それが私からAさんに、まずなによりもお願いしたいことです。

そして今日は私からふたつのことをお伝えしたいと思います。


まずひとつめは、カウンセリングについて。
Aさん、カウンセリングを利用しているということ自体がそもそもすごいことだということにお気づきですか?
つらくてたまらない中で、それでもひとりきりでがんばろうとしてしまう人(とくに努力家さん)は少なくありません。
Aさんはカウンセリングを利用するという選択肢を持つことができ、おそらく金銭面などの葛藤もありながら実際に助けを求め、「ひとりでがんばる」を手放すことができました。
自覚はあまりないかもしれませんが、Aさんが変化してゆく過程でものすごく大きな壁を越えた出来事だと私は思います。
こちらも同様に、壁を越えたんだと自分のことをほめてあげてくださいね。

だからこそ、もっともっと思い切りカウンセラーさんに助けを求め、甘えてみませんか?
私たちカウンセラーは、クライアントさんが怒りの拳を握ったらすぐさまミットを手に受けの構えを取る、悲しみの波に飲まれたらすぐさま特大の浮き輪を投げ入れる、という訓練を受けてきました(※イメージです!笑)。
語られるお話や今起こっている問題から、クライアントさんの魅力や才能の光をキャッチするセンサーも鍛えられています。
ですから、「今日は時間いっぱい、思いっきり怒って泣く私を受け止めて、最後に私のことを褒めまくってください」というようなリクエストも大歓迎です。
カウンセリングを「自己肯定感を上げるための努力の場」ではなく、「自分が緩むことで自己肯定感の上がる場」と捉えてみてください。
「日常で傷ついた羽根を休める場所」「ふだんの鬱憤を吐き出す場所」「思いっきり甘えられる場所」として利用してくださいね。
そういう場を提供できるからこそ、私たちカウンセラーはお金をいただく職業として存在しています。


そしてふたつめは、唐突ですがちょっとしたたとえ話をさせていただこうと思います。
よろしければお付き合いください。

人生という航海が海の上でスタートするとします。
Xさんは大きな船に乗っています。
Yさんはエンジン付きの小さなボートに、Zさんは筏(いかだ)に乗っています。

いちばん大変な目にあうのはやはりZさんです。
自力でオールを漕がなければどこへ向かうこともできず、常に危険と隣り合わせで、生活環境は天候に大きく左右されます。
ちょっとした荒天で筏はすぐに大破し、Zさんは海に投げ出されます。
Zさんは否が応でも泳ぎを習得しなくてはなりません。
筏づくりの技術も身につけなければならず、心身ともに疲労困憊です。
ところがZさんはあるとき海中深くまで潜ってみたところ、海の中の美しい世界を目にします。
それは自由に海を泳ぐことのできない、ほかの乗り物に乗る人は決して知ることのできない世界です。

エンジン付きのボートに乗るYさんは、ある程度の速度で自由に移動ができ、筏に比べるとだいぶ安定した航海をしています。
遠くに同じボートや船を見つければすぐに近づいていくことができ、仲間との交流もできます。
しかしあるとき嵐に襲われ、Yさんは慣れない海に放り出されてしまいます。
パニックになりながら命からがらボートの残骸にしがみついて難を逃れますが、泳げないことによる恐怖と、ボートを失った絶望と悲しみに打ちひしがれます。


このときYさんがもし、こんな目にあうのなら自分も泳ぎを習得できて乗り物も自作できる筏がスタートならよかったのに、と思っても、どうしようもありません。
そこから筏を作る流木を集めるとか、船からボートを一隻譲り受けるとか、そもそも自分にボートを与えた者に船を要求するとか、いろいろやり方はありますが、それらがYさんが与えられた環境の中で人生を切り開いていく道なのですね。

一方で筏スタートだったZさんはどうでしょう。
泳ぎを習得し、海の中の世界の美しさを知り、筏を作る技術も得ました。
そうなるとYさんに筏づくりを教えてあげることもできるし、Xさんに海の中の世界の美しさを話して聞かせてあげることもできます。

だからといってZさんがいちばん幸せだ、ということを言いたいのではありません。
そこにあるのは良い悪いや優劣ではなく、それぞれの環境の中でできることがあり、獲得できる世界があり、人生の可能性があるということです。
それぞれの環境にはデメリットの側面と同じだけのメリットがある、ということです。
逆を言えば、メリットはデメリットにもなり得ます。
もしかしたらXさんは、安全で快適な船の上で来る日も来る日も繰り返される同じような毎日に耐え難い苦痛を感じ、生きる希望を見いだせずにいるかもしれないのですから。

とはいえ、今のつらさを生んでいるデメリットは実はメリットだ、と捉えるのはやはり難しいことですし、ただ闇雲にそう信じていればいいということではありません。
大切なのは、「今ここで自分にできることを続けていった先で、デメリットがメリットに姿を変える」のだと、ぼんやりとでも知っておくことです。
今ある環境で、今ここで自分にできることをすることしか、私たちにはできません。
それぞれの環境でそうやって自分の人生を切り開いていくことが、生きる意欲や希望へとつながってゆくのです。
それはXさんであってもYさんであってもZさんであっても、スタートがどんな環境であっても共通のことです。


ここからは完全な私見になりますが。
そうは言っても、私自身はZさん的環境に生まれたことを今では誇りに思っています。
なぜなら、海の中という美しい世界を知ることができたから。
泳げるようになり、筏をこの手で作れるようになったから。
それらは私の人生を豊かにしてくれた、何ものにも代えがたい喜びだからです。
だからといって、Xさん的環境を否定するつもりもありません。
Xさんはその恵まれた環境があるからこそ得られたものがたくさんあり、Zさんが知りえないような世界をきっとたくさん知っていて、そして、Zさんが持ち得ない苦悩も抱えていると思うからです。


ご相談文から感じ取れる、Aさんの持って生まれたエネルギーの強さ。
おそらく思考力が明晰なうえに努力家なところや、生きる意欲や希望に対する強い思い。
なにより、Zさん的(かどうかは分かりませんが)環境に生まれてくるほどの、人間としての器の大きさ。
自分がいる場所を「面倒な努力を強いられる環境」ではなく、「大いなるデメリットが特大のメリットに化ける環境」という捉え方に変えられたなら、Aさんの持つそれらの才能は、メリットへの変化に向けて最大限の力を発揮してくれると私は思います。
そして実のところその豊かな才能のぶんだけ生きづらさ(デメリット)を抱えてきたAさんにとって、その先で得られるものがとびきり人生を豊かにしてくれることは言うまでもありません。
泳ぎを習得したZさんが、海の中という美しい世界をその目で見ることができたように。


これからカウンセラーさんや、ほかにもたくさんの人たちの力をどんどん借りて、Aさんが「今ここでできること」を見出してみてください。
たくさんの人の助けを得ながら、ぜひそれらを続けていってみてください。
そのなかで生きる意欲や希望とともに、Aさんは自分の豊かな才能にも出会うことになるのではないかと思います。

私もいつでもAさんを応援しています。


お読みいただきありがとうございました!


■真中 愛【ライフストーリー インタビュー/カウンセリング】

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