見出し画像

アンディ・ウォーホルがキャンベルのスープ缶を描いた本当の理由

 私のnoteは本文よりもコメント欄のほうが文章が長く、内容も面白いという特徴があります。そこで、今回は『華僑と印僑があるのに、なぜ、和僑はないのか? (3)』にいただいた葛西さんと、どんむさんのコメントを元に記事を書いてみます。

キャンベルのスープ缶を語る以前の基礎知識

 日本人の食べ物は、ご飯に味噌汁、漬物、焼き魚が基本だと言えるほど単純なものではありませんが、旅館の朝食といえば、このような食べ物を連想する人が多いでしょう。同様に、アメリカ人が好む典型的な朝食のイメージはベーコン、エッグ、トーストで、昼食はハンバーグ、フライドポテト、 #コカ・コーラ です。週末や手軽な友人同士のパーティーでは、ピザがあれば満足するのが典型的なアメリカ人の食生活であり、このようなアメリカの食文化のイメージは、 #アメリカの食文化 の浅さを如実に表していると言えるでしょう。

 ちなみに、 #食文化の定義 には諸説あり、日本の文化庁では、100年以上続いているものを食文化と定義しています。この食文化の期間を100年以上と定義する際には、ワーキンググループ(有識者会議のことで、私も何故か有識者として参加しています)で大きな議論が巻き起こりました。なぜなら、300年以上と定義すると、寿司、天ぷら、牛肉の鉄板焼きなど、既に海外で和食として認知されている食べ物の大半が #日本の食文化 の定義から外れてしまうので、100年以上と継続期間を短くせざるを得なかった経緯があります。

 世界的には、 #食文化 の定義は多様で、500年以上、1000年以上と定義されることもあります。一部には、聖書やコーランに記載されている食べ物のみを食文化とする考え方も存在します。その典型例として、 #旧約聖書 #タルムード に記載されている #コーシャ の食事規定に従っている #ユダヤ教徒 や、 #コーラン で定義された #ハラール 食を守っている #イスラム教徒 が挙げられます。コーシャとハラールは、それぞれの宗教が成立してから現代に至るまで長い時間をかけて守られ、継承されてきた食事規定です。コーシャは約3000年以上、ハラールは約1400年の歴史を持ち、これらは文化的、宗教的な背景に深く根ざした習慣であり、信者によって広範囲にわたり実践されています。

 米国の場合、建国が1776年なので、2024年時点で248年の歴史しかありません。このため、米国(アメリカ合衆国)には300年以上の食文化は存在していません。但し、アメリカ先住民の、アパッチ族やナバホ族など、地域によっては独自の食文化が存在しますが、これらはアメリカ合衆国の食文化とは別個に評価されるべきです。

 日本では仏教の影響で1200年近くにわたり肉食が禁止されていましたが、明治5年(1872)に #肉食解禁 となりました。つまり、それ以前には日本人の肉食文化自体が成立し得なかったのです。但し、日本には古くから #狩猟文化 もあり、完全に肉食していなかったわけではありません。

 日本の畜産農業は1872年頃から徐々に始まりましたが、本格的に普及したのは、第二次世界大戦後の1945年以降です。敗戦後にGHQの指導のもと、食文化も改革の対象とされ、アメリカで生産された余剰小麦や乳製品が日本に流れ込み、学校給食にパンが導入されたのが1950年頃です。当時のGHQが日本で行っていたのは、『米を食べるとバカになる』というキャンペーンで、日本人の食生活をアメリカナイズすることに注力しました。

 これはアメリカの農産物を日本に販売することが目的であり、日本がアメリカによって食料とエネルギーの #安全保障 を管理されるメカニズムは、太平洋戦争勃発以前に決まっていた米国の #国家戦略 です。この米国の国家戦略に基づき、日本の肉や鶏卵の消費量は、1960年代では一人あたりの消費量は年間で約1kgから、30年後の1990年代には5倍に増えました。

アンディ・ウォーホルがキャンベルのスープ缶を書いた意外な理由

 本題の #アンディ・ウォーホル #キャンベル のスープ缶の絵を描いた目的は、彼のアートの主要なテーマの一つである消費社会と大衆文化への批評を表現したかったからです。しかし、『なぜ題材がキャンベルのスープ缶なのか?』という疑問に対して、ウォーホルは『自分が毎日のようにキャンベルのスープを食べていたため、それが非常に身近な存在だった』と述べています。

なぜ、ウォーホルはキャンベル・スープ缶を描いたのか?
ポップアートのアーティストとして、数多くの傑作を描いたアンディ・ウォーホル。彼の多大な作品群の中でも、キャンベル・スープ缶のシリーズは、もうおなじみです。
では、なぜウォーホルは、モチーフにキャンベルのスープ缶を選んだのでしょう?理由はじつにシンプル。「僕は自分が美しいと思うものを、いつも描いているだけです。(中略)僕はスープを描いていますが、それは僕がスープを好きだから。」

キャンベルのヒ・ミ・ツ

 ここで『アメリカ人にとって身近な食べ物なら、 #マクドナルド #バーガーキング でも良いのではないか?』という疑問がわいた方は、典型的なアメリカ人のメンタリティを良く理解しています。アメリカ人にとってウォーホルが、マクドナルド派かバーガーキング派かは、以下の記事にあるように大問題なのです。

 このような背景をもとにウォーホルが、キャンベルのスープを題材に選んだのは、それが単にウォーホルの好物だったからであり、まともな食文化の無いアメリカ料理には、キャンベルのスープ缶の他に美味しいものが無かったからです。

#武智倫太郎

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?