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船員労務管理サービス「Aisea Crew」から巻き起こす海事産業のDX/経営戦略×エンジニア×デザイナー対談

アイディア株式会社は2022年8月に、船員のための労務管理サービス「Aisea Crew(アイシア クルー)」をリリースしました。

「Aisea Crew」の魅力や開発の背景を知っていただくため今回は、事業戦略・開発・デザインの各セクションを牽引する3名に、サービスの工夫点、開発への想いを話してもらいました。

■プロフィール
エンジニア:齋藤 幸吉(写真左)
フルスタックエンジニアであり、多くの資格を保有する。モバイルアプリ、Web、組込インターフェースを担当。

UXデザイナー:松下 圭克(写真中央)
米国でデザイン理論を学び、ナショナルクライアントを中心としたソリューションに精通。

事業戦略 企画立案:尾崎 護(写真右)
船舶保険の専門家としての経験を活かし、Aiseaサービスのスタンダード化に向けた戦略を策定。

海事産業の課題を“ITで解決する”期待感を胸に、アイディアへ

——まずは、みなさんの経歴について教えてください

尾崎:2015年4月から2020年の3月まで、東京海上日動火災保険株式会社で船舶保険の営業をしていました。その後1年ほど、国土交通省海事局の安全政策課に出向し、2021年5月にアイディアに入社しました。

入社のきっかけは、前職の頃からお世話になっていた代表の下川部の人柄に惹かれたことと、アイディアへの期待感です。長い間、海事産業に関わってきたからこそ見えてきた業界の課題を、この会社ならITという切り口で解決できると感じました。

現在は事業戦略室にて「Aisea Crew」の事業計画策定やパートナー企業支援、お客様へのご提案のほか、新機能の企画も担っています。

松下:私は約13年間、Webに特化したコンサルティング企業にて、UXデザインのコンサルをしていました。長期間クライアントサービスに寄り添い続けたことで、次は自社サービスに関わりたいと思っていた頃、趣味の小型船舶の操縦をする中で海事プラットフォームの「Aisea」を見つけました。様々な縁のおかげで2020年の春に入社しています。

現在は4名ほどのデザインチームのマネージャーとして、UX視点での要件整理やユーザーフローの検討、UX改善に向けた社内提案などを行っています。

齋藤:前職では、CTOの千葉と同じSIer企業で働いていました。その後、IoTやクラウドサービスに関われる環境を求めていた際に、千葉や下川部と話す機会があり2019年の5月にジョインしました。

現在はフルスタックエンジニアとして、お客様からの要望をもとにした設計、エンジニアに設計を共有するための資料作成、開発のチェックをしています。

2022年4月施行の改正船員法に準拠した「Aisea Crew」の誕生

——「Aisea Crew」のサービス概要について教えてください

尾崎:「Aisea Crew」は、海上で働く船員向け打刻アプリと、陸上の労務担当者向けのWeb労務管理システムをクラウド連携することで、離れた場所でも効率的な船員労務管理ができるサービスです。

——「Aisea Crew」を開発するに至った経緯は何だったのでしょうか?

尾崎:元々、別サービスをお客様にご提案する中で「一番の課題は2022年4月に施行される改正船員法への対応だ」と言われたことがきっかけです。

改正船員法の施行により、船員の働き方改革を推進しなければならない。その対応として陸上の労務担当者は、離れた海上にいる船員の労務状況を日々管理する必要性が生まれたのです。

しかし当時の管理方法は、電話やFAXで船員の労務記録を陸上に送り、労務担当者がExcelに手入力するという流れ。これでは働き方改革どころか業務負担が増加し、深刻化している人材不足問題に拍車をかけてしまいます。

この課題解決のためには、船員の労務管理を効率化できるサービスが必要だと強く感じ、開発へと踏み切りました。

——サービスのポイントや導入効果を教えてください

尾崎:一番の特長は、エンドユーザーである船員のみなさんに使いやすいアプリであることです。船員の約半数は50代を超えており、現場では高齢の船員が多く働いています。お客様の事前ヒアリングでも「現場の人が使えるよう簡単にしてほしい」という声を多くいただいたので、そこをクリアすべく社内MTGを重ねました。

その結果、打刻などの基本的な機能のみに絞った限りなくシンプルなアプリにしました。他社サービスは機能豊富なものも多いですが、その分タップする選択肢や項目が増えて操作が難しくなってしまうと考えたためです。

ほかにも、文字サイズを大きくしたり、入力や細かな操作をせずともボタンをタップするだけで打刻できるようにも工夫しました。

これらのデータは「Aisea Crew」の労務管理記録簿に蓄積され、過労リスクが一目でわかるのみならず法律に則った帳票が出力可能です。また、通信環境が悪い船上でも使えるよう、圏外でもアプリで打刻できる「オフラインモード」を実装している点もポイントです。

このように、お客様にストレスなく使っていただける工夫を多方面から実行した結果、法令遵守を可能にしつつ、業務効率化に繋がるサービスとなりました。

現場に根ざした「使いやすさ」の徹底追求

——「Aisea Crew」を作る上でのこだわりや、開発エピソードを教えてください

松下:簡単な操作性により、打刻における船員の業務負荷や⼼理的ハードルを下げる点にこだわりました。

尾崎が話したように、エンドユーザーの約半数は50代以上であることに加え、そもそもITツールを使う機会が少ないことや、24時間のシフト制という特殊な労働環境で働いているといった特徴もあります。そのため、これまでのユースケースが通用しないのです。

——そこで、どのようなアプローチをしたのでしょうか?

松下:世代を問わず使いやすい設計を目指しました。例えばスマホはコモディティ化しているもののひとつですが、高齢者向けの画面設計にせずとも幅広い年齢層が使いこなしています。

つまり「Aisea Crew」も、必ずしも50代以上に向けたアプローチをする必要はない。むしろその年代に合わせすぎると、30代以下には使いづらくなる可能性もあるのです。

具体的にはまず、世代を問わず業界のみなさんが使いやすい仕様を目指しました。ボタンをタップするだけの簡単な操作感を知っていただくことで、ITツールへの心理的ハードルを下げました。

その結果「Aisea Crew」の使いやすさや、業務上のメリットを実感していただきやすいツールになったと自負しています。「まずは使ってみてください」と自信を持って提案できるサービスづくりを常に心がけてきました。

尾崎:松下さん率いるデザイナーチームには、サービスやターゲットの特殊性を踏まえ「取扱説明書なしでお客様が使えること」をコンセプトに設計をお願いしたんですよね。
サポートにあまり時間をかけられない事情もあったため、営業の介入が不要な、迷わない構造を考え抜いてもらいました。

松下:そうですね。そのハードルは超えられたと思うので、今後は多くの方に「Aisea Crew」を使っていただき、現場の様子や労務管理における効果をヒアリングしたいです。
そこから改善におけるTime to Market(タイム・トゥ・マーケット/企画から販売に至るまでの時間)をよりスピーディにできればと考えています。

齋藤:開発で特に思い出すのは、QA、事業戦略や営業などのビジネスサイド、フロントエンジニア、サーバーサイドエンジニアなどで、機能やタスクを一緒に考えながら進行できた点です。

要件定義・開発・テストと工程を順序良く進めていく「ウォーターフォール開発」であれば、コーディング担当にはその開発がお客様の要望をどのように踏まえたものなのかわからないケースもあるでしょう。

しかしアイディアでは、要件定義をもとに各機能ごとの設計、開発などを行う「アジャイル開発」に近い形式を採用しています。多くの職種が適宜議論に参加したことも働き、全員が意図を理解した上で開発できたと感じています。

松下:経営層や社長がMTGに参加することもありましたね。

齋藤:そうですね。社長からは「このボタンサイズでは、船で手袋をしている船員が操作できない」といった、現場を知る人ならではのアドバイスをもらいました。
そのおかげで、文字を大きくするUI改善に繋がりました。

海事産業の発展を、DXの視点から支えたい

——今後の展望、取り組みたいことを教えてください

尾崎:海事産業に携わる方々にとって“DXへの第一歩”になってほしい。そんな想いで、提供し始めたのが「Aisea Crew」です。
「Aisea Crew」によってITの利便性を実感してもらい、それが他の業務のDX化を促すものとなればこれ以上嬉しいことはありません。

そして、海事産業のDXを多方面から実現するためにも「Aisea Crew」を皮切りに、労務管理に付随する給与計算や従業員・船員のシフト管理サービスの提供も視野に入れていきたいです。

齋藤:「Aisea Crew」をプラットフォーム化する未来も面白いのではないかと思います。「Aisea Crew」のアカウントを使って他サービスにログインできるような、拡張性のあるシステムを構築できれば利便性も向上しそうです。

松下:労務管理業務が減ることで本来の業務に注力できる、そんなサービスを追求し続けたいです。

極論を言えば、誰かが労務管理をしなくてもいいほど自動化されている状態が理想です。手動での作業を極力なくし、業務負担が大幅に削減できる方法をアイディアとして考えていきたいです。

——最後に、アイディアや「Aisea Crew」に興味を持った方へメッセージをお願いします

松下:UI/UXデザイナーの観点から話すと、例えばアプリケーション、ECサイト、SNSなどの場合、世の中には既に多数のデザインパターンがあります。しかし、海事産業はレガシーな業界であるためデジタル化におけるデザインパターンが充実していません。

そのため、要件をもとに都度デザインパターンを作らなければならない。この部分においてモチベーションを感じられる人は、アイディアで活躍できると思います。新しいもの、世の中にないものを作りたい方は、ぜひ一度お話ししたいですね。

齋藤:自分で考えて行動したいタイプであれば、アイディアで存分に力を発揮できます。開発においては、様々な意見をもとに最適解を導き出したいので、積極的に議論できる方、自分なりの考えを持った方だと「Aisea Crew」のサービス向上や会社の発展に大きく貢献できると思います。

尾崎:たしかに、自走できる点は大事ですね。
ビジネスサイドの視点では、アイディアでは業界のDXにおける啓蒙活動を行いながら、自社のためのマーケットを切り拓く能力が求められます。課題に挑戦するワクワク感、課題を乗り越えることに情熱を注げる人にはぴったりです。

この記事を読んでいるほとんどの方は、おそらく海事産業にあまり馴染みがないと思います。一方で、海に囲まれた日本の安全を守り、経済活動を行うために、海事産業は世の中に不可欠な存在です。

このような業界のDX化を、ITに強いアイディアが推進できる部分は多分にあります。お客様と一緒に課題解決にチャレンジできる点は、社会的意義も大きく、私自身とても面白いと感じています。

齋藤:今後は、船舶での通信環境も発達し、新たな技術も普及していくでしょう。その変化の中で、自身の技術を駆使して海事産業の未来を変えていけるメンバーを、アイディア一同お待ちしています。

アイディア株式会社では、一緒に働く仲間を募集しています。興味のある方は、こちらからエントリーください。

取材協力:CASTER BIZ recruiting


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