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『木魚、スイム!』/掌編小説

ぽくぽくぽく。毎日毎日叩かれる。
ぽくぽくぽく。謎の調子を聞かされて、眠る間もなくぽくぽくやられる木の魚。
なんだか不憫になってきた。

木魚、スイム!
ほんとうの居場所を探すんだ。
木魚、スイム!
どこまでも泳いで行け。

木魚は泳き出した。
ぱくぱくぱく。たまに天井の上の方へ行き、空気を吸う。
口呼吸?木だからエラはないようだ。
ぱくぱくぱく。広間から出て長い廊下をぐんぐん泳ぐ。
透明な大きくうねる水の流れに逆らって、
じわりとも動かない真夏の熱い空気の中を、切り裂くように木魚が泳ぐ。
透明なきれいな水に包まれて涼しいゼリー菓子のよう。

ぽくぽくと叩くものを失って、こくこくこく。
眠りの境地に到達しそうな頃、後ろから師僧に頭を叩かれた。



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