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『丑三つ時の幽霊』/掌編小説
なにかが枕元に立っている。
深夜2時44分。丑の刻に加えて4のゾロ目。昔から怖がりで、心霊写真やホラー番組の類いが大の苦手である私は、この時間帯には時計すら見たくないのに、頭上に視線を感じるような気がして、はたと目が覚めてしまった。
そこには去年亡くなった祖父がいた。
不思議と怖さはなかった。
じいちゃん。会いたいと願ったときも、夢にも出てきてくれなかったのに。
それが枕元に立つなんて。よっぽど伝えたいことがあるのかもしれない。
なんだろうか。ばあちゃんへ昔の浮気の告白か、幼い時分に私が楽しみにしていたプリンを、学校にいっている間に食べてしまったことへの懺悔?…いやもしかして、隠し財産のお知らせかも。
醒めてきた頭でぐるぐると考えるうちに、祖父がゆっくりと口を開いた。
あ…。
あ…。
カ○ナシのようになっている。ちょっと怖い。
あ…ス。
ア…ス。
ア…イ…ス…。
アイス?なに?
あ、思い出した。昨日帰りにコンビニで買った箱入りアイス、そのまま出しっぱなしだ。すっかり冷凍庫に入れ忘れていた。
まさか伝えたいことってこれ…?祖父を見るとなんとなく満足げだった。
なぁんだ。ほっとすると同時におかしくなって笑ってしまう。
そんな私を見て祖父の影はすぅっと消えていった。
今度は真夏にカレーの鍋を出しっぱなしにしておこうかな。またいつでも会えるような気がして、ぽかぽかと温かくなった心を抱いて、私はぐっすりと眠りに落ちた。
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