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医者の資格をとって、医者の役割を脱ぐ

(この文章は、私が2022年2月に軽井沢にある「ほっちのロッヂ」に行ってきたことをキッカケに、自身のこれまでとこれからを探るための自分語り&自己紹介エッセイです)

今回は医師国家試験に合格して、初期研修医になった頃の話。

少し矛盾を感じるかもしれませんが、私が医学部に入学することが決まったとき「いずれ医者の役割を脱ぐことをゴールに医者の資格を取ることになるんだろうな」というイメージを抱いて入学しました。

こんな診療所があればいいのに」とか「人々の生きがいインフラと健康インフラの両方を支える人になりたい」とか考えていた私は、「人々の暮らしを健康にする」とか「病気を治療する」というのは、しばしば医療者側からの押し付けがましい提案のように聞こえました。

だからこそ、医学の知識や医療の技術を持って、医療の言語をしゃべるよりも、地域で暮らす一人の人として暮らしの言語をしゃべりながら、楽しい空間やありたい場所づくりを通じて、人々の健康に関わっていきたいと思っていました。

そして、当時は、まだ具体的に言語化やビジュアル化できていなかったけれど妄想レベルで「こんな医療やケアの形いいなぁ、こんな医療職としての関わり方理想的だなぁ」と想い描いていた形は、10年近くの時が経ち、今、たくさんの人達の手によって実現・実践されています。


例えば、長野県軽井沢町にある「ほっちのロッヂ」は、草原の中にたたずむ小屋といった趣の場所。ここは、アーティストや、物書きや、食事を作る人や、子供たちがいて、アトリエや台所を囲んでそれぞれが自分達の時間を過ごしている空間なのだけれど、一方で、診療所や訪問看護ステーション、病児保育といった医療を提供する空間でもあります。「ケアの文化拠点」という言葉で語られるように、私たちが活きる/生きるための創造的な空間としてケアと文化の接合点みたいなものを常に模索・発信している場所です。


だいかい文庫」は兵庫県豊岡市にある本の置いてある空間。
そこでは本を借りることもできるし、本を読むためにコーヒーを飲むこともできるし、本棚のオーナーになって自分の好きな棚を作ることもできます。ちょっとした対話の場もゆる~く開かれているようで、暮らしの中のお悩みを相談することもできるといいます。本屋の店番をしている人は、本やコーヒーが好きな人、福祉や医療の資格を持った人いるから、いろんな相談にいろんな角度からかかわってもらえる、そんな場所だったりもするようです。


ととのや」は金沢市にある農家民宿。
病気で身体に麻痺が残ってしまった男性と、彼のリハビリを担当していた医師が一緒に金沢の山間にある民家とその周辺の土地や畑を借り、仲間を呼んで一緒に野菜やコメを作ったり、仲間が集い語り泊まれるように民宿を始めたり。そんな風にしているうちに民宿が仕事として成り立つようになり、今では事業パートナーとして運営をしてます。患者⇔医者関係や、リハビリテーションという枠を超えて、地域での役割や生業が生まれていました。


これらのプロジェクトや場所には共通点があります。
①発起人や中心人物の中に「ひそかに脇役的な医師がいる」こと。
②ケアが中心テーマのひとつでありながら、「医療ではなく生きがいに重点を置いて活動している」こと。
③場に関わる人達に対して「そっとウェルビーイングな状態を提案していて、医療はそのほんの一部である」こと。
④場所と、そこに出入りしたり「集う人達と、地域コミュニティとが流動的な関わり合いを持つようなアクティビティが常に沸き起こっている」こと。


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手前みそですが、「くちビルディング選手権」もこうした点を大切にしながら活動をしてきました。

私は、2018年に研修医となり、医者としての仕事が忙しくなる一方で、可能な限りGNCとしての活動も継続して2年間の初期研修期間を終了しました。
そして2020年、医者の役割を脱ぐためにはもうひと修行必要だとおもい後期研修に臨むのですが…、

思いもよらない時代に突入すると同時に、予定していた方向とはちょっと違う救急科の医者としてのスタートを切ることになりました。つづく…。

#ほっちのロッヂに行ってきた

この文章は、私が2022年2月に軽井沢にある「ほっちのロッヂ」に行ってきたことをキッカケに、自身のこれまでとこれからを探るためのエッセイです。



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