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「雨男の最後の雨」

雨男と呼ばれる男性がいた。彼の名前は亮だ。亮が外に出ると、必ず雨が降る。たとえ天気予報が晴れだと言っていても、亮が一歩外に出れば、雲が立ち込め、雨が降り始める。そして、その雨は彼が家に帰るまで降り続けるのだ。

亮は恋愛がうまくいかないことに悩んでいた。彼がデートに誘った日にはいつも雨が降り、どうしても楽しい雰囲気を作ることができなかった。彼の特異な力のため、彼が愛した女性たちは次々と彼から離れていった。

そんなある日、亮は一人の女性と出会った。彼女の名前は恵美だ。恵美は鮮やかな笑顔と、誰にでも優しく接する気質が魅力的な女性だった。恵美は雨が大好きだと言った。雨の音には心を落ち着ける力があり、自然の恵みを感じることができるからだと。それを聞いた亮は、恵美に強く引かれた。

次の日、亮は勇気を振り絞って、恵美をデートに誘った。天気予報は晴れだったが、当然、亮が恵美の家の前に立つと、雨が降り始めた。恵美は雨男である亮を見て、驚いた顔を見せた。しかし、彼女はすぐに笑顔を取り戻し、雨を見上げながら「亮くんの雨、好きよ」と言った。

そこから二人のデートは始まった。雨の中を歩き、雨音を聴きながら、話し合い、笑い合った。二人の間には特別な絆が生まれた。そして、亮は初めて、雨が降ることを喜ぶことができた。

しかし、亮は疑問に思った。恵美は本当に彼の雨を好きだと言っているのだろうか。それとも、ただ彼を慰めているだけなのだろうか。

そんな日々が続いて、数ヶ月後のある日、亮は恵美にプロポーズを決意した。彼が恵美に告白すると、恵美は驚いた顔を見せ、そしてしばらく考えた後、一言、言った。

「亮くん、あなたのことは大好き。でも、あなたが雨男だということは、あなたが私を好きでいてくれる限り、いつも雨が降るということ。でもね、私は雨を愛している。それは、雨がたまに降るからこそ、特別で、美しいの。だから、結婚する前に、あなたの雨を止める方法を見つけてほしいの。」

その瞬間、驚いた亮は、雨を止める方法があることを思い出した。しかし、それは彼が恵美を愛する気持ちを止めることだった。それは彼にとって不可能だった。

彼は恵美の手を握り、そして彼女を見つめて言った。「僕は雨を止めることができない。だから、僕たちは結婚できない。でも、僕は君を愛している。」

その瞬間、雨が止んだ。

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