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保育園と帰り道


子供の迎えに保育園へ向かう。

いつもは朝の送りが専門だけど、ママが遅くなる日はパパの担当。
機材は車に置き去りにし、カメラだけベビーカーに載せて保育園へ向かう。



「パパー!」
と声を上げながら駆け寄ってくるのは同じクラスの子供たち。

我が子は教室の一番奥から洗濯バサミを手に、大きく腕を振り満面の笑みを浮かべていた。


「今日は暖かかったので、外の滑り台で遊びました。踏切を真似てスタートの合図をすると、すごく喜んでいましたよ」

先生が伝える子供の今日一日を、頭の中で想像する。
もうすぐ2歳になる彼は電車とバス、そしてアンパンマンが何よりも大好きだ。

背丈の半分ほどの大きなトートバッグを腕に持ち、帰り支度を整えた息子はどこか誇らしげに見えた。


「さようなら」

先生が大きくお辞儀をする。

「さようなら」
が、まだ言えない息子は先生に向かって直角90度の大きなお辞儀をする。自分もその横で後に続いた。


「バイバイ!」

玄関まで来たところで後ろから大きな声が聞こえる。振り向くと他のクラスの子供がドアから半身を出して手を降っていた。


「バイバイ!」

息子も手を振りながら大きく返事をする。それに習い自分も「バイバイ」と手を振り返すのを確認すると子供たちは教室に頭を引っ込めた。

我が子は誰に対しても「バイバイ!」と手を振る。
玄関で靴を履かせようとしても身を翻して園長室や職員室を覗いては挨拶を試みる。まだ言葉が少ない2歳に満たない子供が見せるコミュニケーション能力は、明らかにパパよりも上手だ。



「バスュっ!バスュっ!」

帰り道で走るバスを見つけては声を上げ、ベビーカーから身を乗り出して指を差したり、手を振ったりと大忙し。

路線バス、通学バス関係なく大きな乗り物を見るのが大好き。
たまに乗客や運転手がリアクションに反応するのが何よりも嬉しいようだ。


「明日は雪が降るんだって。降ったら車でお迎えだね」


「ハイっ!」

と、声に出して返事をくれるようになった我が子。


ママと二人だと歩いて保育園から帰ってこれるようになったが慎重なパパはベビーカーに乗せて送り迎えをする。

雨の日は送り迎え共に車を出すのだが、明日の天気は雪。
スタッドレスに替えてはあるのだが、はてさて、どうなることやら。



少し早めに迎えに行けたので、途中にある坂道の公園に寄り道する。
忍ばせておいたカメラを使う絶好の機会だが、辺りは暗くなってくるし、風も少し強い。


案の定、彼は降りたがらない。

最近、真似するようになった武藤の決めポーズも手を出す気配すらない。
もっとも空飛ぶヘリコプターを見つけると大きな声を上げながら指を差して目で追っていた。


我が家への帰り道は北向きの坂道を下っていくので夕陽を見ることはない。
その分、マジックアワー特有のライティングを活かした写真撮影には最高のロケーションだ。


ベビーカーから降りる気配がまるでない彼の写真を撮る。撮られなれているか、それほど興味が向かないのか表情は固くはないがノリノリではない。

そんな表情でも我が子はやはり一番可愛い。どんな写真でも最高の存在だと眺めてしまう。この歳にしてイケメン過ぎやしないかと見る度に思う。
ただの親バカ。ママに似て本当に良かった。


ドアを開けて子供を解き放ち、撮ったばかりの写真データを取り込む。

おもちゃに向かっていたはず息子がオムツを片手に「ちっち」と駆け寄ってくる。おしめを交換し、いつもの袋に入れようとしたところで気がついた。


「あ、おむつ袋、保育園に忘れた 」

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