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【短編小説】犬のキモチ

「ハル、むにゃむにゃ...」

今日も私は、6月のぽかぽか陽気の午後に柴犬のハルと一緒に日向ぼっこしながらお昼寝している。

ハルは目を細めて機嫌の良さそうな表情をしてゴロンと4本の足の力を抜きながら寝転がっている。そして私にピタッと張り付いて、毛むくじゃらの顔を擦り寄せてくる。

──あぁ、何てかわいいんだ

いつも一緒にいるとハルのキモチが分かってくる。きっとハルは私が大好きなんだろうなぁ。

それから、ハルは知らない人が来ると良く吠える。きっと私に危険を知らせようと頑張ってくれているに違いない。



この世界では、イヌは飼い主からの愛情を得ることで報酬を獲得することが出来る。そのためには演技力を高め飼い主の感情移入を誘うことが高い報酬への近道となる。そして報酬を貯めることで飼い主から解放される。すなわち自由が与えられるのである。



今日もまずは紫外線多めの場所に誘い込み、飼い主の幸せホルモンである「セロトニン」を分泌させて精神状態を安定させることから始める。これがいつもの基本スタイルだ。

ここで飼い主のノンレム睡眠の合図が聞こえた。

「今だっ!」

ここからのコンビネーションは、一気にポイントを稼ぐためにも気を抜けない所である。いつもながら心臓がバクバクしてきた、、、

まずは、「目を細めて」でいつもの10pt。

すかさず「ゴロンと4本の足の力を抜いて寝転がる」連続技で30ptゲット。

ここまでは順調だ。

だが、ここで手を抜くわけに行かない。そう、ここから一気に畳みかけるのだ、飼い主の弱点はすでに分析済みなのである。

「ピタッと張り付いて」そして「顔を擦り寄せる」

この飼い主はスキンシップに弱い。親和欲求が強くてかつ、プライドが高いタイプにありがちな行動特性だ。

この奇跡的な演技力で完全に飼い主の感情を引き寄せトータル100ptを手にした。


──誰でもいい、この喜びを誰かに伝えたい

「ワン(100)、ワン(ポイント)、ワン(ゲットだぜ!)」

イヌは飼い主のキモチをわかっている。

おしまい

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この時期縁側で日向ぼっこなんて贅沢で良いですねえ。

今日も最後まで読んでいただきありがとうございました。

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