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バカとブスほど金がかかる

「お金がなくても生きていける」なんて嘘だ。「愛さえあればお金なんて」。あれも大嘘。お金がない人が自分を納得させるために勝手に言いふらした妄言だと思っている。
この世の中、お金がなければ何もできない。お金さえあれば大体のモノは手に入るようにできている、資本主義社会。そこに人の情は関係ない。お金はモノを得るための手段。この社会は、そのような無機質な「モノ」で成り立っている。会社にとっての人間は働くコマであり、モノにすぎない。情報も、技術も、モノを作るための道具だ。
お金の価値は、世界共通だ。「愛の方がお金よりも大事だ」なんて大々的に掲げる社会は、確実にいつか潰れる。
やりがいのある仕事につけたんだからお金なんかいらない!だなんて。真っ白な正義について考えたことは、これまでに一度もない。かといって、お金さえあれば生きていけると言うほどこだわりはない。わたしは結構お金に対して考えが中途半端なのだけれど、仕事をする以上、「とにかく稼ぐ」ことは念頭にある。
人生、お金はマストで必要だ。

突然だが、わたしはバカだ。
そしてブスだ。
それ故に、わたしのこれまでの人生にはかなりのお金がかかってきた。全て自分で払ったわけではないので、両親にはとてつもなく感謝をしている。

まず、「バカ」について。
高校の時、わたしは偏差値43だった。高校受験ではなんとか志望の高校に入れたものの、生粋のバカだった。本気で勉強をしてこなかった自分が悪いのだけれど、それまでのわたしはどう考えても底辺の人生を歩んできてしまった。数学は、6点だった。6点。何が正解だったのか、そりゃあ問1の(1)と(2)、以上。勉強しても伸びなかったし、つまらなかった。学校の勉強が楽しいとは思えなかった。
高校3年生の時、来年の自分は何をしているんだろうと真剣に考えた。周りが受験を意識しだして、わたしもその時自分の人生について考えた。もしもこのままだったら。
その時ハッとした。「このままバカでいたら人生終わる」。何も知らずバカのままだったら、社会で生きていけないのではないか、そう思ったのが全ての始まり。
この社会で一番、そして確実に力になるのは学歴だと思った。今の社会のトップに立つ人たちは、学歴社会を生きてきた人たち。まずはその人たちがぐうの音もでないくらい頭がいい大学に行って勉強しよう、早稲田に行こう、そう決めて勉強をし続けた。
そしたら、本当に早稲田に入ってしまった。今でも驚く。

振り返ればさぞかしシンデレラストーリーだが、わたしの大学受験にはひどくお金がかかった。もちろん学校の授業も死ぬほど真面目に受けたけれど、それでも追いつかなかったのだ。自分で勉強をするのには限界があったから、予備校に通うことにした。結果的に、そこで出会った先生がわたしを早稲田へ導いてくれたから、間違ってはいなかったのだろう。

いざ憧れの大学に合格したら、今度は莫大な授業料が待ち受けていた。決してお金持ちではなかったから、なんとか奨学金で大学へ通えた。大学の費用をだしてくれた母にはとても感謝をしている。
そして社会人になった今、見事に奨学金返済に嫌気がさしている。払えなくて死ぬ、とかではないけれど、毎月その日がやってくれば、もやもやしながら口座から金が消えていく。勉強ができた代償は、思いの外大きい。

続いて、「ブス」の話。
これは前の記事にも書いたけれど、わたしは自分の顔が大嫌いだ。嫌いで嫌いでヘドが出る。
小学校の頃からかなりバカにされて蔑まれてきた。「ブス」「死ね」「きもい」、言われすぎて慣れた。慣れたくなんてなかったけれど、慣れてしまった。好きな人から「ブス」と言われ続けたあの日々では、アンパンマンになって新しい顔が降ってくることだけを願い続けた。整形を決めてカウンセリングに行ったりもした。
今は少しだけ前より自分の顔が好きになれた気がする。お化粧も死ぬほど頑張ったし、可愛く見せる方法を研究した。それでもまだまだだと思う。
長年ブスだと言われ続けたからには、本当にわたしはブスなんだと、もう心のどこかで根強く信じてしまっているのだと思う。みんなの前で「ブス」だと笑われて「笑い流す」というコマンドを選ばざるを得ないあの不快なイベント、人生であと何回起こるんですかね?ブスって言われて嬉しい人ってこの世にいるんですかね?

可愛くなるためにおしゃれをするのにも金がかかる。自分に似合う本当のアイテムを探すだけでもお金がかかる。
歯並びを整えたいだけなのに、矯正は目が飛び出るくらいお金がかかった。びっくりした。まじかよ。
例えばわたしが整形をしていたら、本当に想像もつかないくらいお金をかけていただろう。いかんせん、治したい部分がありすぎる。自分の嫌いが少しでもなくなって自信が出るのなら、整形は悪くないと思っている。顔が変わったとしてもわたしは、肝心の自信は手に入らないと確信したので整形はやめたのですが。

バカとブスこそ金がかかる。

これは間違いなかった。そして今も、美人と同じ世界で同じ空気を吸って「普通」に生きていこうとすると、間違いなく金がかかる。身を以て実感する。

バカが大学へ行くには金がいる。ブスを脱するには金がかかる。
どう考えても不公平な気がしてならない。
じゃあ最初からちゃんと勉強しろよと言われるかもしれないが、これまたちゃんと勉強していたんだからもう許してほしい。やってもできなかったし、やろうとしたし、理解できるまで何度も挑戦したけれど。もともと出来が悪かったとしかいいようがない。勉強だけで成績が決まるのも嫌だった。塾に行くほどお金に余裕はなかったし、お受験を繰り返すほどの期待を受けてもいなかった。本当はもう少し勉強したかったのかも、なんて今更思う。

ブスなんだからせめて可愛くなる努力をしろよなんて言われるけれど、してるわ!と大声で言いたい。可愛くなろうとしていない女の子なんていない。夜な夜な化粧道具を広げて練習をするなんて、男性には理解できない奇妙な光景かもしれない。みんな必死で、自分を磨こうとしている。ちょっとでもかわいいって思ってもらいたい。

「女」でい続けるには金がかかるということ、男性にわかってほしい。頼むからもう教育の一環として教えてやってくれよ、と思うくらいだ。男性が想像する以上に女は金がかかる生き物なのです。
頭の先からつま先まで、全てにお金がかかっている。個人差はかなりあるけれど、ほんとうに、ほんとーーーにお金がかかるの、クソする時にトイレットペーパーを使うのと同じ要領で、残量がなくなる。汚物は始末したいだろう、わかるだろうか。

朝起きて、化粧。毎日GUだけを着て会社にいくわけにもいかないから、たまにはブランドを取り入れたり。スーツのお手入れにだってお金がかかるし、髪の毛だって月1で美容院に行かないと、まあ死ぬ。夏は脱毛、冬は乾燥防止。寝付けず寝不足でできたクマに絶望、コンシーラーは質が大事だからプチプラは避けたいところ。付き合いで行く女同士の飲み会、飛ぶお札の代償はアルコールの二日酔い。おしゃれなカフェランチを食べに行って思うのは「自分で作った方が安いのに」。インスタ映えのためだけの外出。

上記全てにお金がかかる。お金をかけて自分の「女」を守る。女の世界を生きる。
お金をかけたくないのならじゃあ全部やめろよなんて、絶対に言わないでほしい。だって、全てやめたら世界が終わるぞ。髪ボッサボサ、肌カッサカサ、愛想もなく化粧も愚か、ムダ毛の処理も気にせずよれよれのお洋服。そんな女と街中ですれ違って嫌な顔をしない人たちがいますか。一緒に仕事をするなら美人がいいと思うでしょう。美人が営業に来たらちょっとやる気が出るでしょう。
もはやこれはマナーの一環として私たちは行なっているんです。可愛くいることは、身だしなみなのです。

ただでさえ、女で居続けることにお金がかかるというのに、ブスにはこれに2倍のお金がかかる。化粧だって洋服だって、スキンケアだって、美人の2倍は頑張らなければいけない。根本を直してしまおうと思えど、整形するのにもお金がかかる。質の高いお化粧品は高い。自分に合う化粧品に出会うまでに、いくら使えばいいのかわからない。かわいいお洋服も高い。自分に似合うお洋服に巡り会えるまで、何着もメルカリ行き。
頑張って可愛く居続けるには、平均で生き続けるには、本当に金がかかる。やってられない。

お金をかけた分だけ自分に自信が持てればいいけれど、そう上手くはいかない。今日もまたどこかでバカにされて、歯を食いしばって、弱音が溢れそうな唇を必死にリップでカバーする。バカとブスは、いつまでも強くいなければいけない。

お金が全てではないけれど、何をするのにもお金がかかる世の中。

普通に生きるだけでお財布は軽くなっていく。
お金をかけてでも自分に投資をするのは、少しでも自分を変えたいから。今日かけたお金が、努力が、いつか花開いて希望になるかもしれないから。なりたい自分になれるかもしれないから。
バカでもブスでも、人間だから。泣きながら明日を見ているってこと、わかってほしいです。
生まれながらにして美貌を手に入れていれば味わずに済んだ惨めな思いも、小さな頃から英才教育を受けていればそれなりに賢く育っていたかもしれないという嫉妬も、全て原動力にして生きているんです。本当は崩れ落ちてしまいそうなほど苦しいけれど、それでもこれからにちょっと期待しちゃうんです。
全てにお金がかかる世の中で、少しでもバカとブスを脱却するために、今日も自分にお金をかける。お金をかけて自分を磨き続けるモデルさんたちに、わたしたちはある種の希望を見出している。可愛い人でも妥協しないんだから。ブスこそ、ブスだからこそ、一生妥協なんてしてたまるかよ。

「簡単にバカとかブスとか言わないで」なんて多分もう遅いのだけれど。バカもブスも、挨拶みたいに飛び交う世の中で、その真意を問う人がどれくらいいるんでしょう。心無い言葉で傷つく人がいるということを、わたしはいつまでも問題提起していきたい。

バカとブスには金がかかる。
そのお金は、未来の自分への期待と希望なんです。今までの自分に負けたくないから頑張るんです。節約しながらでも、自分を磨くのです。
誰よりも強く、優しく生きて行くんです。

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