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就活のタイミングを3度も逃した人間の就職活動|最終回:未来の就活生へ

博士課程を満期退学して22卒の就職活動をしているあごひげ20cmです。

この記事およびマガジンでは、博士課程卒の就職活動について自分の体験談を紹介しようと思っています。境遇の近い方や興味のある方はお付き合いください。

前回のテーマは『新たな業界への進路変更』でした▼。

最終回のテーマは『就活の反省を伝える』です。「博士卒」という独自の視点でアドバイスを遺したいと思います。

1. これから就活をする人へ

1-1. 「視野を広くする機会」を大事に

 進学先にしても、就職先にしても、いくつかの選択肢を手元に残しておくことは大事だと感じました。また、将来の選択肢を増やせそうな機会に積極的に参加することも大事だと思います。

 自分の場合、学部生のときに出会ったある研究分野に心酔し、博士課程まで一直線に進学してきました。その集中力や熱量があったからこそ得られたものもありますが、キャリアパスについて視野が狭いまま進学してきたことは後悔しています。
 例えば、もしも修士卒の段階で就活していれば、志望していた食品業界で内定をいただける可能性がいくらか上がったことでしょう。修士卒であれば専門外の人材も歓迎されますが、自社の研究領域と関連の小さい博士卒をわざわざ採用するメーカーは稀有だからです。

 また、自分は就活中も視野を狭くしていました。早々に食品メーカーだけに絞ってエントリーした結果が、全社からのお祈りです。
 逆に、自分の就職活動で結果が出始めたのは就職エージェントに相談してからでした。その結果に結びついたのは、エージェントがたくさんの選択肢を提示してくれたからだと思っています。特に、「博士卒人材」を募集している会社を集中的に紹介してくれたことで、自分は本当に助かりました。

 繰り返しになりますが、まずはキャリアパスについての視野を広げて学生生活を送ること(進学 or 就職も含めて様々な選択肢を検討)、そして選択肢を増やせる機会は積極的に利用すること(就活セミナーや就職エージェントなど)が、新卒の就活では大事だと思います。


1-2. 「ハイブリッドな就活」が成功率と満足度を高める

 もう少し具体的なアドバイスとして、「ハイブリッドな就活」をオススメします。つまり、「自分自身で各社にエントリーする就活」と「エージェントを利用する就活」を同時並行で進めることです。
 自分がエージェントを利用し始めたのは5月になってからでした。3月にエントリーしていた企業からのお祈りがだいたい出揃っていた頃です。もっと早くから利用しておけば良かったという後悔があります。

 少し調べたところによると、エージェントは2~3社を同時に利用するのが良いとされているそうです。その理由は、エージェント会社によって紹介できる求人のラインナップが違うから担当者にも当たりハズレがあるから、などが挙げられていました。エージェントを利用した者として、この助言には強く賛同します。
 自分は、「理系博士卒」に強みを持っているアカ〇ク1社を利用しました。担当者は親身に相談に乗ってくださる方で、提案の幅も広かったので、控えめに言って「当たり」だったと思います。でも、もしもハズレくじを引いていたら、成功率も満足度も低いまま就活を終えていたかもしれません。

 これから就職活動を始める方々は、ぜひ就職エージェントの利用を検討してください。エージェント選びについては、業界研究や企業研究と同じくらい注意深く情報収集すると良いと思います。どんな業界の求人を多く持っているか、どんな属性の学生を集めているか、過去の利用者の声はどんなものか、吟味してみてください(サクラ記事も多そうなので決して鵜呑みにはせずに……)。


2. 修士課程の学生へ

 就職か進学かを迷っている修士課程以下の学生は多いと思います。博士卒で就活した経験から、そんな方々にいくつか助言を遺したいと思います。

2-1. 博士課程で学べる広さと深さは、修士課程よりも圧倒的に大きい

 学びの成長曲線というものがあります。最初は緩やかに成長していき、あるブレイクスルー・ポイントを越えてから急激なスピードで成長するようになるというものです。

 修士課程の2年間だけでは多くの人がこのブレイクスルーに到達しない、というのが自分の実感です。就職活動と並行しながら研究を進めた場合は、なおさら到達は難しいです。よしんば到達したとしても、修士論文の出来が少し良くなるくらいで、就職して新しいことを学び始めた場合はせっかく獲得した伸びしろが伸ばされないままになってしまいます。

 一方、博士課程で少なくとも5年間も専門的な研究を進めれば、このブレイクスルー・ポイントは確実に通過します。その時から、研究分野に対しての視野は広がり、より深い理解と洞察をもって現象を見つめられるようになります。特に、現象に潜む課題を広い視点から定義して、工夫を凝らして解決策を探り当てる力は、博士課程だからこそ得られる貴重な財産だと思います。

 もちろん、学部卒・修士卒のように早い段階で就職することで習得できる財産もあると思いますので、うまく天秤にかけてみてください。


2-2. 「就職」と「博士課程への進学」を両立させる裏ワザ

 『修士卒で就職して社会人の経験を積んでから、博士課程に編入する』という選択肢があることも知っておいてください。実際、自分の知り合いにもそういう人がいました。その人は、研究費というお金を獲得すること/消費することへのシビアな感覚を持っていたり、見通しを立ててテキパキと研究を進める/論文を執筆するというプロジェクト進行能力に長けていたりと、社会人で身に付けた能力を研究でもフル活用していました。博士課程の学生としても優秀にスキルを伸ばされていました。一挙両得といった感じです。

 あと、その方は社会人時代に貯めた貯金があることで精神的にもゆとりがありました。自分は、お金にまつわる不安で軽い鬱になって通院したこともあるので、このメリットは無視できないです。
 ストレートに博士課程まで進学した場合、どんな奨学金や資金援助がとれるのか、奨学金は返せそうか、国民年金の納付猶予した分は払えそうか、学位取得後にどんなポストが空いていそうか等々、お金に関して早めに考えておくことをオススメします。

 『昨年度に大学院修士課程を終えた学生の16.5%が、奨学金などの借入金を300万円以上抱えている』との報道が数日前にありました。一例として、月5万円であっても学部+修士の6年間借り続ければ計360万円です。利子付きだと返済額は450万円くらいでしょうか。返済の不安から博士課程への進学を諦める人がいても、まったくおかしいことじゃありません。
 自分は考えもせずに博士課程まで進学した愚か者ですが…(鬱の原因)。

 博士卒の就活は、これまでの連載で振り返ってきたとおり、厳しい部分が多いです。博士卒人材を求めている稀有な会社を見つけることが一番大きな関門です。情報収集、大事。
 一方、修士卒で就活すれば企業の選択肢は圧倒的に広がります。職種によっては学部卒よりも内定を勝ち取りやすいところもありますし、学部卒よりも待遇が良いところがほとんどでしょう。


3. 博士課程の学生へ

3-1. 博士卒の就職活動、孤独になりやすいので味方をつくろう

 就職活動を始めてあらゆる手段で情報収集して分かったことは、とにかく博士卒向けの情報は少ないです。この連載を始めた理由も、「少しでも博士卒の就活について情報を提供したい」という思いからです。

 意外なことに、大学のキャリアセンターは(情報収集の点では)あまりアテになりませんでした。というのも、博士卒の就活生についての情報があまり蓄積されていなかったからです。
 例えば、連載第1回で【留年するか?退学するか?】について悩んだことを紹介しましたが、その件でキャリアセンターに相談させていただいたときも情報不足を感じました。相談員の方は、化学メーカーの人事部で長年働かれてきた経験をお持ちで博士卒を採用することもあったそうで、採用側の視点については詳しく伺うことができました。一方、「博士卒がどんな就職活動をしているか/するべきか」という当事者視点については、ほとんど知識がありませんでした。(ただし、ES添削や面接練習などの基本的な就活支援についてはキャリアセンターに大きく助けられたということは申し添えておきます。)

 当事者視点のアドバイスについては、アカ〇クのような大学院生に特化した就職エージェントの方がしっかりしています。自分の一度の成功体験に過ぎないことは重々承知ですが、博士課程卒こそ就職エージェントを利用してみてください

 なお、民間企業への就活という点では、指導教官やその他の教授陣もあまりアテになりませんでした。基礎研究分野の教授ということもありどこかの企業にコネがあるわけでもなく、アカデミックな就職以外は世話したことがない人が多いからです。一方、アカデミアでの人生プラン等については豊富な知識をお持ちですので、その点は信頼して相談に乗ってもらうのは大事だと思います。

 博士課程の就職活動はとにかく孤独になりやすいです。一番大きな原因は、周囲に同じような就活生が少ないことだと思います。連載第2~3回でも、孤独がゆえに「食品業界一本」という厳しい道を進んでしまっていたことはお伝えしました。このような失敗をしないためにも、キャリアセンターやエージェントなどを頼って味方を増やしてください
 もしも、博士課程在学中・博士卒という身分で就職活動についてお悩みでこの記事に辿りついた人がいましたら、遠慮なく自分に相談してください。この記事へのコメントや、TwitterでのメンションやDMなど、お好きな手段でコンタクトを取ってくだされば幸いです。


あとがき|報告

 ありがたいことに自分は3社から内々定をいただくことができ、この記事を書いている現在進行形で、そのうちの1社への入社を決意しました。東証に上場している企業です。現在は、家族等にも相談しつつ内々定承諾書を準備している段階です。

 まだ確定していませんが、学位というステータスが直接的に活きる業界ではないこと、満期退学という身分で時間を持て余し気味ということもあり、学位取得をしないまま10月入社することを検討中です。
 この連載は今回で最終回ですが、続編があるとすれば10月入社について書くかもしれません。「博士卒の就活」というトピック以上に需要は無さそうですが………。


 さて、ここまで連載をお読みくださり本当にありがとうございます。Twitterで繋がっている方々からも好意的な反応があって嬉しかったです。急な発表&人が変わったかのような就活生アピールに驚かせてしまった人がいたらごめんなさい。

 実は、あごひげ20cmとかいうオタ活用のアカウントで発信することへの躊躇はありました。2ちゃんねる等の「匿名のインターネット文化」に親しんできた自分にとって、プライベートな内容を発信するリスクは脅威に感じていました。
 ただ、自分が熱心に追いかけているVTuberのような「アバター文化」が広がっている中で、「博士卒」「就活生」などの"属性"をあごひげ20cmに付与することは面白そうだなと考えて、発表を決意したという経緯があります。匿名で属性も明かしていないアカウントがTwitterやnoteであーだこーだ呟くよりも、ある程度の属性を明かした上で発言することで親近感や説得力といった効果が見込めるという打算もあります。この辺の考えは、また記事に書くかもしれません。

 改めて、ここまで読んでいただきありがとうございました。読者の皆様のより一層のご健勝とご活躍を心よりお祈り申し上げます。(←もう見てもなんとも思わなくなった。)



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