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研ぎ澄まされたコンセプトは泥臭い対話から。ブレない意志表示を貫くクリエイティブの作り方

アジャイルコスメティクスプロジェクト(以下ACP)で実施しているフィードバック(ユーザーアンケート)やSNSでの口コミで、

「中身も好きだけどデザインも好き」
「シンプルなパッケージがおしゃれで気に入っている」
「洗面台に置いておくと気分が上がる」

という嬉しいお言葉をいただくことがしばしばあります。

実は、私たちが中身と同じくらいこだわって、既存の化粧品とは異なる試みを随所に盛り込んでいるのが、このボトルや梱包といったクリエイティブ。

それは一見ACPの「イメージはもういらない。効果だけがほしい」という理念と相反しているようにも見えるかもしれません。

しかし化粧品は機能性だけでなく、洗面台で手に取る時に喜びを感じてもらえるような見た目や、香りのような五感を心地よくする官能性も、毎日使い続けて製品の効果を引き出すために欠かせない要素だと私たちは考えています。

そして、効果にこだわってスキンケアをしたいと願っているお客様と、ACPのプロダクトをつなぐきっかけを作るためにも、ブランドのメッセージをクリエイティブを通じて意志表示することは重要です。

効果にこだわるからこそ、そのメッセージが届くクリエイティブが必要。

そんな思いのもと生み出した「白いオイル」も「時計遺伝美容液」も、文字とバーコードのみという一見いたってシンプルなラベルですが、そぎ落とされた見た目の中には、実は様々な工夫や思いを込めています。

そこで今回は、ACPのコンセプトや仕組み作りから携わっているクリエイティブディレクターの早川和彦さん、アートディレクターの長谷川弘佳さんにお話を伺い、ACPのクリエイティブや、アイデンティティがどのように作られていったのかを前後編でお届けします。

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最短距離でブランドメッセージを届ける「フォーマット」の必要性

ACPのプロダクトは「アジャイル開発(製品を世に出すだけではなく、お客様のフィードバックを受けてスピーディーに改善していく開発スタイル)」というコンセプトのもとに成り立っています。

そのためプロダクトをどんどんアップデートしていく過程では、パッケージデザインも開発のスピード感に対応してアップデートさせていく必要があるのです。

しかし、ブランドとしてのアイデンティティは統一して保っていきたい。「開発スピードへの対応」と「アイデンティティの体現」の両立のためには、デザインの“核”となるフォーマットが不可欠でした。

「アジャイル開発」という考え方に対応するデザインとはどういうものなのか? ということを考えたときに、どんどんアップデートしたものを迅速に世に出していくために、デザインは「最短距離でユーザーに届く」ことを前提とするべきだという結論に至りました。
ではそのためにどうするかというと、最初に更新可能かつ効率的なフォーマットを作って、それを踏襲すればラベルデザインが完成する体制にしておくのがベストだと思ったんです。そして、ただ作りやすいフォーマットではなく、プロダクトが進化しても、一目見ればACPのメッセージが伝わるような「意志表示」の強さが求められました。

(長谷川さん)

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ACPの製品で最も目を向けてもらいたいのは「中身」。つまり実際に使って感じていただく「効果」というシンプルな核心です。

そのために、余計なイメージを排除したミニマムなデザインが求められるなかで、2人がたどり着いたフォーマットが「バーコード」のモチーフでした。

化粧品のパッケージでは、開発者や成分の情報は裏側に記載されているもの。しかし、ACPではそれらこそをユーザーに知ってもらう透明性を大切にしたいと考えています。

そんな忠実に「効果」に向き合っていくACPの姿勢を表現するために、同じく裏側にあることが当たり前だった「バーコード」を前面に出すというアイデアが生まれたのです。

デザインをシンプルにしていくと、どうしても文字だけにしてバランスを考える方向になっていくのですが、そのなかでどうやってブランドのアイデンティティを表現していくか、というのは課題でもあって。試行錯誤の末に生まれたのが「バーコード」のアイデアでした。 
(長谷川さん)

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あくまで「製品管理のためのラベル」としてのデザインでありながらも、本来ならパッケージの裏側にあるはずのバーコードが一番前にあるということが、「中身や成分にこだわって全て見せている」というブランドの「意志表示」になればと考えました。 
(早川さん)

ちなみにこのバーコードは飾りではなく、工場で実際に使われているもの。封入するユーザーを識別したり、物流管理に役立てられている「本物のバーコード」です。

また、化粧品のデザインの場合「ブランド名」がパッケージで一番大きく表示されることがほどんどですが、ACPのプロダクトでは「製品名」を最上部に配置しています。

これも、それぞれの製品の個性や成分へのこだわりを知っていただくことを優先した結果です。

この「バーコード」と「ブランド名ではなく製品名を見てもらう」というデザインフォーマットを確立できたことで、製品の改良や新製品の開発が発生しても、デザインに時間的コストを割くことなくアップデートでき、かつブランドのアイデンティティをしっかり伝えることができる体制が整ったといいます。

フォーマットが確立されているとはいえ、このブランドはまるで生きているかのように製品が変化していくので、デザインもアイデンティティは守りつつバージョンごとに少しずつ変わっていくと思います。時代に合わせてニーズや必要な要素も変わっていくので、時代に合わせて適切にブラッシュアップしたものを提供できれば、と思っています。 
(長谷川さん)

定期的にお使いいただいている方はお気づきかもしれませんが、「白いオイル」も「時計遺伝美容液」も今のデザインと前のバージョンのデザインは微妙に違っています。今後もアップデートごとに、成分はもちろんフォーマットを踏襲しつつも少しずつ変化していくパッケージにも注目してみてください。

洗練されたコンセプトを生む「泥臭い対話」

実は、このデザインフォーマットができるまでの過程では、シンプルなデザインとは裏腹にかなり泥臭い試行錯誤と議論が行われました。

「アジャイル開発」という軸に対して、どのようなメッセージをデザインで伝えるのか? ACPのチームでは、たくさん議論を重ねるなかで、誰かが言ったアイデアをそのまま採用するというよりも、開発メンバーのイメージを少しずつ擦り合わせて言語化することを大切にしました。

そのなかで徐々に「中身を大事にする」「裏側の情報を出す」といったコンセプトがチームメンバーの間で明確になっていき、それを体現するフォーマットの誕生に繋がっていったという早川さん。

依頼されて仕事を受けるというよりも、ブランドのパートナーとして一緒にものづくりをしていくという意識がずっとありました。超中心的な誰かがいるわけではなく、ディスカッションを重ねてコンセプトを擦り合わせていく。その空気感がさらに広がって、今はお客様の声も取り入れながら製品を磨き上げていくという状態になっていると思います。でもコンセプトが根本にあるので、ブレることなく開発・改良ができています
(早川さん)  

この「プロジェクトの根本は何か」を考え、擦り合わせていく作業をチームメンバー全員で行い、全員の声を聞くという姿勢は、ACPの「お客様の声を取り入れていく」姿勢とも重なります。

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これはきっとどんなプロダクト開発にも言えることですが、クリエイティブも開発も、作り手が常に「共同作業」という意識を持ち、積極的にチームメンバーの意見を取り入れて研ぎ澄ませたコンセプトがあれば、製品が進化してもブレないメッセージを届けることができるのです。

このように、ACPの「意志表示」が詰まったブランドのクリエイティブづくりの過程。

次回は梱包材やパンフレット、SNSといったACPのメッセージを体験できるアイテムの裏側についてお届けしていきます。

<Profiles>
H inc.
2017年、クリエイティブディレクター&プロダクトデザイナーの早川和彦と、アートディレクター&グラフィック/インターフェイスデザイナーの長谷川弘佳が共同で設立したデザイン会社。ブランディング、プロダクト、グラフィック、ウェブ、映像ディレクションなど、活動領域は多岐に渡る。主な仕事に、資生堂WASO・ブランディング、ユニクロ・ウェブ広告、Ocean Tokyo・プロダクトデザイン、サンアド・企業サイト、ACPブランディングなど他、多数。
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早川和彦 | KAZUHIKO HAYAKAWA
Creative Director / Product Designer

長谷川弘佳 | HIROKAHASEGAWA
Art Director / Graphic & Interface Designer

文/つっきー @olunnun  
撮影/山口真由子

アジャイル コスメティクス プロジェクトとは
アジャイル コスメティクス プロジェクトは「天然由来成分」の持つ「豊かな有効性」を最大限引き出しながら、製品の「官能性」を追求するスキンケアブランドであり、購入者の意見を取り入れ、製品を迅速に進化させていくプロジェクトです。
このnoteでは私たちのプロダクトに込められたストーリーや、自分の肌が心地よくあるためのヒントをお届けしていきます。

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