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カブキモノ Vol.01【コーヒーで世界を変えよう】農園の革命家カルロスが示す、コーヒーの真実

世界を変えてきたのは、変人たちだ。アインシュタインしかり、モーツァルトしかり。常識や既成概念にとらわれず、自分の信じた道を歩き続ける人たち。AGARU MEDIA PRESSでは、そんな新しい扉を開き、新たな風を吹かせる未来の傾奇者(カブキモノ)を、シリーズでご紹介します。

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コーヒーは、とても身近な飲み物だ。
スーパーにはインスタントコーヒーが並び、
コンビニでは淹れたてのコーヒーが安く購入でき、
スターバックスのようなシアトル系はもちろん、
サードウェーブと称される、こだわりのコーヒースタンドも
今や街を歩けば、どんどん目につくようになった。

でも私たちは、これだけ身近なコーヒーについて
実は、何も知らない。
そのことに気づかせてくれたのは
ある人物との出会いからだった。

その人物の名前は、カルロス・メレン。
グアテマラ出身の陽気なナイスガイで、
「GOOD COFFEE FARMS」を主宰。
グアテマラでは、「コーヒーの革命家」と
地元テレビや新聞でも称されている人物だ。

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カルロスは18歳の時に、グアテマラから日本に旅行に来て、
日本の魅力にハマり、移住することになった。
ただ日本に来るまでは、コーヒーを仕事にしようと考えていなかったようだ。

「日本で『グアテマラから来ました』と自己紹介すると、みんな『あ、コーヒーの国だね』って。そこで改めて、自分はコーヒー文化の人なんだって再認識したんです」とカルロス。

そういうカルロスも、日本に来るまでは、
日本人は全員空手をやっていると思い込んでいたようだ。

「あれ、みんな空手やってないんだ?って。それと同じ感覚。でも自分にとっては、みんながコーヒーの国の人って言ってくれたのが、人生の道しるべになったのかもしれない」

カルロスが日本の貿易会社に勤めている頃、
グアテマラの素晴らしいコーヒーを大切な人に贈りたいと、自身でコーヒー豆をセレクトして、ギフトを送るようになった。
それがきっかけとなって、コーヒーギフトのビジネスをスタートさせる。
そうした中で、グアテマラの農園の現場視察のために母国に戻った彼は、コーヒー農家の「真実」と向き合うことになった。

「有名なコーヒー農園であっても、コーヒー生産者たちの貧しい暮らしぶりを目の当たりにして衝撃を受けたんです」

カルロス自身も、裕福とは程遠い家庭に生まれ、12歳から働きに出ていた。
だからこそ、コーヒー生産者の苦悩が身に染みた。

「この状況をどうにかしないといけないと動き出しました」

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コーヒーは、コーヒーチェリーという果実を収穫した後に、
その実を脱穀して、いわゆる「コーヒー豆」の状態にしてから
発酵・熟成・乾燥させて出荷されていく。
そのコーヒーチェリーをコーヒー豆にするための設備が
大きなネックになっていた。

「とても高価なマシンだから、小規模な生産者はとてもじゃないけど買うことができない。だから工場に安く納める方法しかなかったんだ」

さらに、コーヒーチェリーの脱穀には大量の水が使われ、
その脱穀した皮も汚れた水も、そのまま川に流されている問題があった。

「川がどんどん汚れて、あたり一面すごい臭いなんだよ」

自然を守りながら、コーヒーを生産しなければ、
近い将来、この地でコーヒー栽培が出来なくなってしまう。
いったい、どうすればいいのか。
水を使わず、自然を壊すことなく、
貧しい生産者たちでもコーヒー豆づくりができるように。
カルロスはコーヒーに限らず、さまざまな分野をリサーチしながら、
自作でマシンづくりに取り掛かった。
何度もトライ&エラーを繰り返しながら行き着いたのが、
バイシクル(自転車)式の脱穀機だった。

バイシクル (1)

「これならエンジンを動かすのに電気もガスもいらない。エネルギー0でコーヒー豆づくりができて、小規模な生産者でも手に入るって」

これは、画期的な発明だった。
これまでにないサスティナブルなコーヒー豆づくりに、
グアテマラでもテレビや新聞でニュースになった。
それを見た小規模生産者たちから、「自分たちもやりたい」と
続々と声が上がり、200名もの人が集まった。
カルロスはその生産者たちをまとめ、
「GOOD COFFEE FARMS」を立ち上げた。

「今も、もっと良くするためにトライ&エラーをしていますけど、このマシンを作るだけではなくて、いいコーヒー豆を作るための正しいノウハウもしっかり伝えています」

カルロスがユニークなのは、グアテマラの農園に
日本の文化やマナーを持ち込んだことだ。

設備の面では、日本のビニールハウスを使って、
コーヒー豆の熟成を繊細にコントロール。
工場も清掃を徹底してクリーンな環境を保つ。
驚いたのは、スタッフたちがお揃いのユニフォームを着て、
日本式の朝礼をしていること。
日本語で「がんばりましょう!」と声を掛け合っているのだ。

「がんばりましょうって素敵な言葉だと思って。英語でもスペイン語でも、がんばろうという言葉がないんですよ。大変なことがあっても、『ガンバロウ』これがうちの合言葉です」

全メンバー

カルロスには、好きなことわざがある。
When life gives you lemons make lemonade.
(直訳:人生が、あなたにレモンを与えるなら、それでレモネードを作れ)

逆境があったとしても、負けずにベストを尽くす、という意味合いのことわざだ。

「そこにあるもので、何とかできないか。マシンが買えないから、貧しい生活に甘んじるのではなく、いかに『がんばって』困難を乗り越えていくか、常に考えています」

「GOOD COFFEE FARMS」で働く人たちは、どこか幸せそうな表情だ。
そんな農園だからこそ、コーヒーの味もやさしいのだろう。
フルーツの味も残っているかのような、自然の甘みが感じられる。

「美味しさの定義は難しいんですけど、僕は自然のものが一番美味しいと思っている。だから、その本来の美味しさをどうやって壊さないか。大きなマシンで大量に、効率よく豆を作るのではなくて、日本のビニールハウスを使って、じっくり熟成・乾燥させているから、自然の美味しさが感じられるのだと思う」とカルロス。

気になるのは「GOOD COFFEE FARMS」という名前。
カルロスの考えるグッドなコーヒーとは何だろうか。

「地球環境にいいGOOD、生産者にとっていいGOOD、そして飲む人が美味しいと感じるGOOD、その全部が揃って初めてGOOD COFFEEと言えるんじゃないかな」

カルロスとmember

カルロスは、近年いろいろなところで耳にするようになったSDGsについても思いを馳せる。

「これまでは、ブランド競争だったり、価格競争で勝負する世の中だったけど、有名ブランドの商品でも、それがどう作られているか、知っている人は少ない。低価格競争で『100円でコーヒーが買えたからラッキー』もいいけれど、その100円のうちのいくらが生産者の手に渡っているかまで、想像できたり、知るようになっていくことが大切だと思う」

一杯のコーヒーにつき、生産者に渡る金額は2〜5円程度と言われている。
その金額だけでは、生産者たちは十分に暮らしていくことはできない。

今やSDGsについて、企業でもミーティングを行う場面は多いと思う。
その会議室で手にしているコーヒーが、実はどう作られているのか。
まずはそこを知ることから、SDGsは始まるのかもしれない。

「全てを一気に変えることはできないよ。ステップbyステップで、人に伝えていくことが大事だと思う」とカルロス。

先日、カルロスの取り組みがグアテマラの新聞で特集された。
そのときについた見出しが
「Coffee Revolution」
コーヒーの革命家カルロスの挑戦は、
間違いなく、一歩ずつ世界を変えている。

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