【短編小説】ボストンバッグ・エスケープ
こんにちは、深見です。
冬の電車は、足元が暖かいのが良いですね。
ボストンバッグ・エスケープ
足元には渋い色をしたボストンバッグがある。
渋い色というのは私の主観であって、でも私はこの色の名前を知らないので、主観的言語で表現するほか手立てがない。茶色じゃないし、灰色でもないし、黄土色でもないし。とにかくそういう色のボストンバッグが、私の足元に、ある。私の全財産が入っている。
そう大きくもないバッグの中に、ちんまりと収まってしまう私の人生。そういう生き方をしてきたの