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イヴの空へ① 楽曲からの二次創作小説 

スズムラさんが楽曲に絵を描いてくださいました♫

画:スズムラさん 曲:PJさん 歌詞:el faro


イヴの空へ①

あったかい部屋の窓に奇蹟みたいな雪が舞い始めた。
僕はいそいそと水色の長靴を履いた。あの子は約束、覚えているかな。イヴに雪が降ったら・・・なんて、僕だって期待しちゃいなかったんだから。
 
ちいさな花びらみたいな雪が頬に額に落ちてくる。これだと夜までには積もりそうだ。でもちっとも冷たくない。
 
僕の長靴には羽が生えていた。黒く塗られた杉の板塀の角を曲がって、僕は公園に着いた。
 
誰もいない。
そりゃそうか。だって話をしたのは去年の冬だもんな。そんなつまらないこと憶えているはずがないよ。
僕はブランコに乗って、おもいきり漕いだ。まだ濃い茶色の地面とグレーの空から降る雪が、交互に僕にやってくる。
そろそろ飛べそうだと思った時、雪の隙間に赤い点が見えた。
僕は空に向かってブランコの手を離した。
 
「覚えてくれてたんだ」
「うん」
彼女は俯いて、水色の長靴の右足を投げ出した。
「じゃ、行こうか」
「うん。え?どこへ?」
「約束しただろ?一緒に地球を見ようって」
僕が笑うと、彼女はこれまでに見たことのないほどの笑顔をくれた。

スズさん、素敵な絵をありがとう♫


こちらのPJさんの企画に参加しています♫


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