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夢の中を旅するような『#ゆきあってしあさって』

まるで、昔みた夢の記憶の中をエンドレスに泳ぎ続けているような感覚だった。

過去に3冊読んだ高山羽根子さんの作品がとても好きだったので、高山作品を制覇したいと手に取ったのがこの本だった。
本書は、高山さんのほか、酉島伝法さん、倉田タカシさんによる架空の旅先からの往復書簡?飛び交う書簡?という形式をとった作品だ。

それぞれがどこかもわからない不思議な場所へと旅をしているのに、なぜか郵便サービスが機能してお互いに宛てた手紙が届く設定があまりに素敵だ。

それぞれの作者がSF作品の腕を振るい、自らを不思議世界へ旅させる技量は、読んでいるこちらを魅了して終始にまにまさせてくれる。カフェなどで読んでいるわたしの顔は不審者のそれだったに違いない。

物語は、夢で見た世界の記憶のようでもあり、幻想的なアニメーション映画のように変化し続ける世界とカメラアングルを思わせる。それぞれの独特な映像のような文章が贅沢だ。

自分も一緒に旅をしている気持ちになるのはもちろん、わたしもまた、どんな事件が起こるのかわからない旅先から誰かにこうして手紙を綴りたいなぁと思いたち、いてもたってもいられなくなった。

「手紙」や「旅」というキーワードは大好物なので、この本はぴったりだった。

実に面白い旅をさせていただいたようで爽快な気分だ。

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