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辰年が来たということは

昨年末から、いつもの喫茶店や雑貨店などでちらほら見かけるようになった。
2024年の干支、辰のモチーフを。
そして、はっと気づいた。そうわたしは辰年生まれなのだ。
つまり、年末にはいよいよ作家ベッシー・ヘッドが亡くなった年齢に追いつくということだ。
作家ベッシー・ヘッドについてはこちらを参照してほしい

G.S.アイラーセンが執筆したベッシー・ヘッドの伝記によると、彼女が小説を最初に書いたのは13歳のころだったという。
その後、発表・未発表を含めて少なくとも一作(本人没後に出版されている)の長編小執筆を経て、1968年30歳のころに出版された長編小説When Rain Clouds Gatherが注目を集める。

わたしがベッシー・ヘッドを知ったのは1997年ごろ。
20歳か21歳だったと思う。

大学生だった自分から見て、ベッシー・ヘッドというひとはずいぶん年上の存在だった。
しかし、今彼女が亡くなった年齢にもうすぐ追いつくという時期になり、改めてその驚くべき才能に気づかされる。

30歳であれほど完成度の高い長編小説を完成させるなど、当たり前かもしれないがわたしにはどうひっくりかえってもできることではない。

最初の小説が出版されてから48歳で亡くなるまでのたった18年間で、長編小説や短編小説、歴史小説、インタビュー録、そして無数のエッセイとさらに無数の書簡を残したベッシー・ヘッドというひとは、やはり類い稀な才能の作家だ。

もし、肝炎で1986年に急逝しなければ、いったいどれほどの数の作品を執筆したことだろう。

南アフリカの精神病院で白人の母親のもとに生まれ、誰だかわからないアフリカ人と思われる父親も知らず、孤児として育ったベッシー。
ようやく自伝を書こうと準備をしていたところで、突然病に倒れてしまった。自伝は未完のまま残された。

大学生のころから、わたしにとって48歳は特別だった。
そのときどうしているのだろう。
ベッシー・ヘッドの長編小説は翻訳作品として出版しているのだろうか。

色んなことを思い描きつつずいぶん先のことと思ってしまったが、辰の姿にはっとした。
あれ?とうとうその年がきてしまったか。
そうすると、街中に溢れる辰ばかりが目に入ってしまう。
もう2024年なのだ。タイムリミットだ。(何の?)

いや、まだわたしが完全に彼女の年齢に追いつくまで12か月はある。

この貴重な記念すべき一年を、できる限り最高のものとしたい。
辰のケーキプレートをかじりながら、そんなことを思っていた。

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