桑鶴七緒

桑鶴七緒(くわづる なお)といいます。noteはじめました。小林賢太郎さんリスペクトし…

桑鶴七緒

桑鶴七緒(くわづる なお)といいます。noteはじめました。小林賢太郎さんリスペクトしております。時々小説も書いています。エブリスタなどにて投稿しております。

マガジン

  • 射心伝唇~イシンデンシン依頼主の声~ まとめ

    自作小説『射心伝唇~イシンデンシン依頼主の声~』をまとめたものです。

  • 耽溺する肉聲、熟れたレイシを喰す まとめ

    自作小説『耽溺する肉聲、熟れたレイシを喰す』をまとめたものです。

最近の記事

エレティコスの翼 第9話(最終話)

数日後、オリーブ畑へやってくると他の民衆も収穫の手伝いをしたのでミヌも早速オリーブの木の実を摘んでいった。 「やあミヌ、調子はどうだ?」 「この通り元気ですよ。今日は人が多いですね」 「これから書き入れ時になる。みんなで摘んだら市場でどんどん売っていくからな」 「塩漬けもいいが、やっぱりワインに合うんだよな。万能な食材だから人気もあるしさ。ここの領地の産物はどれも鮮度抜群だしな」 「あんたたち!わちゃわちゃしていないで手を動かしなさいよ!」 「ああ。なあ、そういえばジアはど

    • エレティコスの翼 第8話

      それから三年が経ちミヌは十六歳になり、その間にジュノとともにユルの下で武術も身につけていき学舎へと通うようにもなった。 自宅に帰り母が二人を出迎えるとシアンからミヌに連れていきたい所があるから後日予定を開けて欲しいと言ってきたようだった。 その二日後、シアンと一緒に馬で領地から離れた奥地へと向かい、その手前で馬から降りて手綱たづなを柵のところに掛けるとシアンの後についていくように歩いていった。 繁茂する草むらの中を入っていきある牢のような石垣の壁を伝って奥に進んでいくと見張

      • エレティコスの翼 第7話

        一行が翠の領地に到着すると同時に民衆が彼らを讃えるかのように歓声を上げて出迎えくれた。シアンの後ろについているミヌはその光景が眩い光で照らされているかのように見えていた。彼らは領地の長老であるラオンの居住に着くと馬から降りて正門の前に整列した。 「シアンたちよ、よく無事に帰還したな。ソジンを前に連れてきなさい」 両腕を後ろにして縄で捕らえられているソジンを地面に跪かせると、彼はラオンを睨みつけた。 「ソジン。長きに渡る内戦を引き起こした罪は、いとも簡単には許されまいこと

        • 回廊〜嗤う死神、顔のない子を産む〜第4話

          恒が亡くなり悲しみに暮れる中それからして五年の月日が流れていき鱒弥と雲雀は二十六歳になった。 二人が結婚して十年が経ったこともあり村の人々が記念を祝おうと家に駆けつけてくれた。 「いやあ、それにしても雲雀は相変わらず綺麗だな。十五歳の時のままでいてうらやましい。鱒弥ともだいぶいい夫婦仲になってきているだろう?」 「まあな。この村に来た頃はまだおどおどしていたもんな」 「今じゃすっかりみんなが頼ってくれるから私達も安心して暮らせています。本当にみんなのお陰です」 「二人とも、

        エレティコスの翼 第9話(最終話)

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        • 射心伝唇~イシンデンシン依頼主の声~ まとめ
          18本
        • 耽溺する肉聲、熟れたレイシを喰す まとめ
          13本

        記事

          回廊〜嗤う死神、顔のない子を産む〜第3話

          秋晴れの数日が経ったある日、鱒弥と雲雀は村の仲間たちと一緒に稲刈りに勤しみ合間に彼女の作った握り飯を食べてはともに微笑みながら作業に追われていった。稲掛けを終え家に戻ってきた晩、夕飯を済ませ風呂釜に入って一息ついた後、鱒弥は雲雀にある話を持ちかけた。 「そろそろ、自分らの子が欲しくないか?」 「私も、同じこと考えていました」 「雲雀、こっちにおいで」 彼は彼女を抱きしめて蝋燭の火を消し互いに手探りをしながら初夜を過ごしていった。 さらに月日が経ち、蝉の鳴き声が鳴り響く頃

          回廊〜嗤う死神、顔のない子を産む〜第3話

          回廊〜嗤う死神、顔のない子を産む〜第2話

          時は諸外国と三国同盟というものが結束された日本大帝国時代の最中。そんな世の中とも露知らずに暮らす街から離れたとある村があった。 そいつの名は鱒弥といって、房総半島のある農村の代から続いている由緒ある家系の出身だった。親や親戚はそいつが長男として生まれてくれたことに大いに喜んで将来を期待されたもんだよ。彼らが言うように苦労もかけることなくすくすく育ち十歳になった頃には、村の長としての跡継ぎに継承された。 実直な性格で誰からも信頼されてまぁ言ってしまえばクソ真面目ってくらいに

          回廊〜嗤う死神、顔のない子を産む〜第2話

          回廊〜嗤う死神、顔のない子を産む〜第1話

          ここにある灯火はあんたの命さ。私がふっと息を吹きかければあんたをあっという間に消すことができる。 そうか、嫌か。 私は簡単に灯火を消すことができても、ただしそれは特別な理由がない限り手はつけない。 ここはこの世とあの世をつなぐ灯火の館。今日もいくつかの灯火が消えたねぇ。死を選んだ理由はその魂の宿命さ。蝋の長さは人それぞれ長さが違う。ただしその者の行いによっては先程言ったように消えてしまうこともある。 この世に人の命が生まれた時、蝋に灯火は点けられる。愚かなことに出過ぎた

          回廊〜嗤う死神、顔のない子を産む〜第1話

          回廊〜嗤う死神、顔のない子を産む〜 あらすじ

          回廊〜嗤う死神、顔のない子を産む〜 あらすじ

          エレティコスの翼 あらすじ

          エレティコスの翼 あらすじ

          エレティコスの翼 第6話

          一週間後の夕刻、シアンを筆頭にユルとソウは家臣と民兵、ソヨンは朱の領地の兵士を連れて翠の領地を出発し、民衆がその列を見守るなかミヌはジュノとスアと一緒に彼らを見送っていた。馬で走らせること四十キロ先の領地の境界へ着き、辺りが暗くなってきたのを見計らい、蒼の領地の中心部に差し掛かったところで、要塞のところから敵兵が一斉に出てきた。 シアンたちは一気に馬で駆け寄っていき攻撃する兵たちを次々と刺殺しては、味方の民兵も負傷していった。その間にシアンはソウとともにソジンの本陣を攻めてい

          エレティコスの翼 第6話

          エレティコスの翼 第5話

          数日が経った日シアンはミヌとジュノを連れてユルのところにやってきた。しばらく待っていると牛舎からユルの姿が見えて近寄ると彼は百八十五センチの大柄の体格のいい人物だった。 「やあ、君たちがミヌとジュノか。剣術を教えて欲しいと?」 「はい。いつか僕たちも戦いに出られるように強くなりたいんです」 「そうか。じゃあ早速なんだがシアン、俺と打ち合いに付き合ってくれ」 「ああいいよ」 二人はその場でしゃがみ込み、シアンとユルの打ち合いを眺めていた。先攻にシアンが竹刀で突いていくとユル

          エレティコスの翼 第5話

          エレティコスの翼 第4話

          その晩、シアンたちはミヌを一緒の馬に乗せて黄の領地に向かい、到着してまもなく一帯に爆薬を地面の中に埋め込んでいった。民衆が取り付け終わると各位置にいる人たちが手をあげてサインを送り、最後にシアンが振りかざした瞬間、領地の一帯が一斉に着火すると爆破されていき地響きとともに地層が傾いていき黄の領地は瞬時にして埋め尽くされていった。 跡形もなく無の状態になった領地を崖の上から見渡してミヌは涙をこらえて息を詰めた。傍にいたシアンの家臣であるウヌがミヌに近寄って手で肩を添えてきた。

          エレティコスの翼 第4話

          耽溺する肉聲、熟れたレイシを喰す 第13話(最終話)

          其れからしてリクに連絡を取るも特定の人物とは何の音沙汰も無いという。 念の為ローズママにも報告はしておいたが、誰も知る手配が無く立ち往生したままだった。 更に二週間が経過した平日の午後。 勤務先の事務所で外勤から戻ってきた際に他の同僚からリクから連絡が来ていたと伝言があり、折り返し彼に電話をすると警察から連絡が来て、彼を襲った人物らしき者が確保され拘置所に居ると言い、任意同行をして取り調べに応じて欲しいと告げてきたという。 退勤後、リクと待ち合わせをして警察署に向かい、取

          耽溺する肉聲、熟れたレイシを喰す 第13話(最終話)

          耽溺する肉聲、熟れたレイシを喰す 第12話

          大塚の自宅に着いた後私とナツトは夕飯を済ませて話し合いを行なった。 此処暫くはリクとも連絡は取っておらず、今彼がどうしているかさえ分からないと告げると、ナツトは私の顔を見ずに窓側の椅子に腰を掛けて耳だけをこちらに傾けて聞いていた。 リクとは近いうちに時間を見て会った時に離別することを告げると話したが、そう上手く事が進む事は無いと返答してきた。一度でも肉体関係で結ばれた仲は簡単には引き裂くことは出来ない。リクの方も何か考えているに違いないから、今はここで全ての答えが出るもので

          耽溺する肉聲、熟れたレイシを喰す 第12話

          耽溺する肉聲、熟れたレイシを喰す 第11話

          ──随分な長い道程だ。大分歩いてきたのにまだまだ息も上がっていない。もう少し歩いてみようか。しかし、このトンネルは叫ぶ声が吸収してしまうのか、反響が微々たりとも聞こえてこない。ただひたすら真っ暗闇が果てしなく続いている。 暫くして闇路に慣れてきたのか何かが遠くで手招きしているのを視界に入ってきたので試しに声をかけてみた。 どうやらこちらに気づいたらしく一歩ずつ近づいてくる。人だろうか、人間の体格をした輪郭がぼんやりと見えてきた。背格好からして私より少し背丈のある人物だ。もう

          耽溺する肉聲、熟れたレイシを喰す 第11話

          耽溺する肉聲、熟れたレイシを喰す 第10話

          数日後の午後。勤務先の事務所の屋上にある長椅子に腰をかけて煙草を吸っていた。 吸い殻を落としては再び口元に寄せて吸いながら、空を見上げていた。縦軸に伸びていく巻積雲が藍染した水縹の色に馴染んで広がる。都内の空は何処にいても同じ顔で表情すら素っ気無いさまで居座る。未だに何となく肌寒く感じるが今の時期の風はやけに心地が良い。 そうこうしている内に休憩時間が終わりかけていたので、事務所に戻り作業の続きに取り掛かった。夕刻になり退勤しようとした時、専務に呼び止められたので机に向か

          耽溺する肉聲、熟れたレイシを喰す 第10話