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【宇和島市の魅力発見!】人の手で創り、守り受け継いできた天空の畑【遊子水荷浦の段々畑】

こんにちは!Dear Uうわじまゲストハウス&カフェオーナーの西田さおりです。
このたび、うわじま市民ライターとして半年間、地域の魅力を発信することになりました!
3年前に東京から愛媛県宇和島市へ移住してきた私が、今回みなさまにご紹介したいのは、「遊子水荷浦の段々畑」。おもな作物はじゃがいも、さつまいもです。スイカやメロンを作っている農家もあります。
四国で最初に重要文化的景観に指定された、宇和島市が誇る絶景です。何を隠そう、私自身も初めて宇和島市を訪れた際に夫に連れて来てもらい、大自然と人里が心地よく共存するこの絶景に大感動!「宇和島っていいところだなぁ!」と最初に感じられた思い出深い場所なのです。

すべて人力で築かれた奇跡の造形

市街地から乗用車で30分ほど。三浦半島からさらに細く海に突き出した岬の一辺に、遊子(ゆす)という地区があります。ここにあるのが「水荷浦(みずがうら)の段々畑」。そのむかし、水が乏しかった当地区に、外部から生活用水を担いで運び入れていたことから、このような名前になりました。
「耕して天に至る」と形容されるその地形は圧巻で、最大斜度は45度を超える急斜面に、高さ1m、幅1.5~2mの石垣と畑が、階段状に積み上げられています。その様子から、「段々畑」と名が付き、地元では「だんばた」と呼ばれ親しまれています。
水荷浦地区の入り口には、段々畑の歌碑が建てられていて、そこには「親父が砕り 童も運び 爺が築く 昼餉の芋に 母の温もり」と刻まれています。これは「父が砕いた石を、子どもたちが運び、知識経験ともに豊富なおじいちゃんが積み上げて畑を築く。お昼には畑で採れた芋をお母さんたちが持ってきてくれる」という、まさに家族一丸となって畑仕事をしていたころの「労働の詩」となっています。段々畑は、その家庭に子どもが一人生まれるごとに一段ずつ増やしていったという話も聞きます。

この場所を訪れて、感覚を研ぎ澄ますと、当時の人々の掛け声や笑い声、汗や土のにおいを、風に混ざって感じ取れるような不思議な気持ちになります。

海を見おろしながらの畑仕事

細い岬の先端に、所せましと積み上げられた段々畑は、まるで海上に浮かぶ古城のようでもあります。青く輝く美しい海を見下ろしながらの畑仕事は、全盛期からこの地域の人びとの高いモチベーションになっていたのではないでしょうか。もともと海産物も豊富で、「地域にさらなる特産物を」という考えから、当時この地を治めていた宇和島伊達家のお達しを受けて、創られたのが遊子水荷浦の段々畑です。現在、この畑で農業に従事する40代の女性は「トンビが眼下を飛ぶのを見られるのは、宇和島市内でもここぐらいかな」とその魅力を語ります。私も、宇和島に移住してきて初めて、『トンビが頭上を旋回する日常』を送っていて、「たしかに、こんな贅沢な非日常は、だんばたでしか体験できないかもしれない」と気づかせてもらいました。

守り未来に伝えていきたい『農業と共にあるだんばた』

遊子水荷浦の段々畑の歴史は、常に漁業と共にありました。イワシ漁に続き、ハマチ養殖なども盛んな地域でした。ところが昭和後期、突然この地域の海に赤潮が発生。赤潮の原因が生活排水とわかった際に、まっさきに立ち上がったのは漁協の女性部でした。「遊子の全戸で合成洗剤は使わない」「遊子の全店舗で合成洗剤は販売しない」「店頭に残っている合成洗剤は漁協が全て買い取る」などの活動を起こし、「組織や行政頼みではなく、自分たちの地域を自分たちの手で守らなければ」と、子孫たちに美しい海を残すために力を尽くしたのです。
ひとびとの強い想いと共に現代まで守り受け継がれてきた段々畑ですが、農家の高齢化や後継者不足などで、年々耕作放棄地が増え、その規模も縮小しつつあるのが課題でもあります。
今もなお、人々を魅了し続ける遊子水荷浦の段々畑では、「歴史だけではなく、農業と共にあり続ける段々畑を未来に残したい」という想いで立ち会がった一部の移住者やUターンしてきた若手農家による組織が、じゃがいもづくりをイベント化し地域内外から参加者を募っています。去る5月のこと、このイベントに私も『だんばたガイド』として微力ながら協力させてもらい、惚れ込んだ景色の歴史・魅力・新世代の仲間たち想いを、20名ほどの参加者の皆さんに伝えることができたことには、確かな手ごたえがありました。

国内外からの訪問者を魅了する、絶景

海と山のどちらも手の届く距離に楽しめることが、宇和島市の魅力のひとつですが、遊子水荷浦ではその景色だけではなく、前述したこの地に生きる人々の紡いできた歴史さえも身近に感じられることが、一番の魅力だと私は思います。
2019年に亡くなった、アメリカの日本学者であったドナルド・キーン氏も、宇和島市そして遊子水荷浦の段々畑を訪れていて、「宇和島は世界有数の美しい町だと思う。四方に山があって、オーストリアのインスブルックを思わせる。段々畑になっている宇和島の山手はさらに美しく、そこから海も見える。港はフランス南部のサン・ジアンド・ルースに劣らず、絵のように美しい。」と、褒め称えています。

年間を通じて、訪れる価値あり!

じゃがいもをはじめとした作物は通年作られていて、地域の売店や各農家の販売所では、海風と陽光をたっぷりと浴びた野菜や果物を購入することができます。私は以前、タマネギやメロンも購入したことがありますが、どれも大きい!そして安い!一度で二度嬉しいお買い物でした。ですが、やっぱりじゃがいもが抜群に甘くておいしいので、ぜひ一人でも多くの方に味わっていただきたいと思います。
また、夜間のライトアップ、マラソン大会、夕涼み会なども開催されることがあり、漁業関係者の操縦する遊覧船に乗船して、海上から段々畑を眺めるツアーも見ごたえがありますよ。(各、新型コロナウイルスによる開催の可否については最新情報をご参照ください。)
市街地からのアクセス方法は、乗用車で約30分、路線バスで約50分。道中の漁村風景と透き通る青い海も楽しみのひとつです。宇和島が世界に誇る『日本の原風景』を堪能しに、いっぺん、きさいや、おいでなせ!

※きさいや・・・うわじまを含む南予(愛媛の南方の地域)で話される伊予弁で「来てくださいね」という意味。



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