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3泊4日5万円で中国を楽しむススメ10~客家料理の存在を知る

What's 客家??

ざっくり言います。華北、主に中原に居を構えていた漢民族が、北方の異民族の侵攻により長江を越え南遷したことで生まれた元華北の漢民族。ということ。

そもそも客家という言葉は、“外部からやってきた人々”という意味を持つくらいなのね。やがてこの人たちが、漢民族以外の少数民族が暮らす四川省や雲南省などにも渡り、果ては東南アジアや台湾に移住したりするようになる……言うなれば、華僑の源流こそ客家というわけです。

華僑に詳しい人なら分かると思うけど、華僑と言っても十把一絡げに扱うことはできないんです。というのも、中国の出身地(エリア)によって派閥があり、中国外にあるチャイナタウンでも福建系と広東系は距離を置いているなど、仲がいいとは限らないのよ。

ということは?

そう。中国各地はエリアによって派閥があるため、出身地を非常に気にする傾向があり、特に昔は外様から来た人に抵抗を示すことも珍しくなかったというわけです。そんなわけだから、出身地を悟られたくない人は、なるべく移住した土地で、その土地になじむよう努めたんだってね(これは日本の東西問題にも似ていると思うので、「わかるわ~」という人も多いはず)。

ところが。食に関してだけは、とりわけ中国人は譲れないものがあったらしい。おまけに「故郷の味が懐かしくてたまらない」と望郷にむせび泣く人も多かったみたい。そこで先述した食の都の話を思い出してほしい。

華北の山東出身者は南遷すると、“小麦を収穫できない世界”で暮らすことになるわけです。馴染みのある料理を食べることがどうしたってできない。

どうしたか?

「麦」の代わりに「米」を使って、馴染みの料理を再現することを思いついたわけですよ。米作地帯にいるからには、そこで代用できるものを使用し、“なんちゃって山東料理”を作るほかない。つまり、本来はその土地にない料理だが、移住してきた人たちが故郷の味を限りなく再現するために、その土地で手に入る食材で応用する料理……それが『客家料理』の正体。このアイデアによって、中国全土には似て非なる数多の中国料理が誕生することになるわけです。

あなたが中国で食べた北京料理。それ客家料理かもしれんのよ。

当然、四川料理にも“なんちゃって四川料理”が生まれます。ゆえに、辛くない四川料理も存在するようになるのです。

(´-`).。oO「中国でパチもんのドラえもんやピカチューが多いのも納得だよ」

ちなみに、先ほどの料理長は「客家料理は自らの出世地を欺くための料理でもあった」とも。面白いので覚えておいて損はないだろう。

「例えば、北京など華北出身者は北京料理を嗜んで食べる。そのため食文化で、中国人はどこ生まれか分かってしまう。好んで粉食を食べる中国人は、おおかた華北の人間だろう、という具合に。広東の人と北京の人はまったく県民性(省民性)が異なるので、相容れないものが当然ある。どんなに移住後バレないように努めていても、「あいつが食べているのを見ろよ。北の人間だ」なんて感じで見破られるんだ」

そこで客家料理の出番というわけよ。自分の出身地を分からなくさせる、その土地にならった自分の食べたい料理を作る(=客家料理)。もちろん、それは移住してきた料理人もしかり。その噂を聞きつけ同じ出身者は、その料理屋に足を運び、そしてそれがコミュニティを形成していく……。

客家は「中国のユダヤ人」と呼ばれているらしいけど、「なるほど」って誰もが膝を打つと思う。コミュニティができあがる過程はいくつかあれど、その中でも「食」というのは非常に大きな核となることが分かっていただけたと思う。同時に数多の中華料理が誕生した背景には、南遷した華北の漢民族、客家の源頭が果たした役割が(結果的に)大きかったということだ。

あいかわらず俺が食べた四川料理の解説はしていないけど、まぁいいか。

書きたかった内容は「四川料理は必ずしも辛くない」ということだったので、料理単体の味の解説などは別日に譲ろう。

Part10まで書いているけど、まだ中国に来て2日目なんだぜ……。

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