熱い熱い、熱湯、熱討「未来の温泉文化をデザインしよう」セッション in SIW2023
11月も最終日。ようやく気温の下がる日もでてきて、温かいお風呂が嬉しい季節になってきました。未来デジタルラボの永瀧(えいたき)です。
以前の記事でも紹介していたように、11月6日〜12日に渋谷で開催された「Social Innovation Week 2023」で『未来の温泉文化をデザインしよう』と題したアイデアセッションが行われ、アドビ未来デジタルラボも参加しました。
今回のセッションには、日本温泉協会や群馬県温泉協会をはじめ、温泉エッセイストの山崎まゆみさんなど、日本の温泉文化の普及に尽力されている多くの方々がご参加されました。
アドビ未来デジタルラボから、学生研究員の田中 侑李さん(会津大学)、浦田 晃河さん(東京大学)、田中 瑠莉佳さん(慶應義塾大学)、井上 昂大さん(和歌山大学)の4名がそれぞれの考えたアイデアを参加者の方に発表しました。
参加した学生たちが発表したアイデアについて簡単にご紹介します。
1.『過去と未来をつなぐ温泉』
温泉文化には、味覚や文化だけではなく、その土地の歴史を「味わい」、未来に紡いでいくという側面がある。歴史を知った上で、温泉文化を「味わう」ことができれば、その体験はより深いものになる。しかし、歴史を「味わう」ためには、事前に調べることが準備が必要になってくる。そこをVR(仮想現実)やAR(拡張現実)などのテクノロジーで、事前の準備に時間をかけなくても、現地で温泉文化を「味わう」ためのサポートをすることで、その土地に根付いた温泉文化の想いを未来に継承していくことができる。
2.『お湯神様で温泉をアップデート』
日本の温泉文化では「作法」が重要視されている。日本温泉協会が紹介している「お風呂でのエチケット」では、12の項目のうち9つが他者への思いやりをベースとしたものとなっている。体だけでなく心も癒すのが温泉文化であり、他の人の癒しの時間も阻害してはいけないからこそ温泉文化にとっては入浴の「作法」をみんなで守る必要がある。それをを伝えるために「お湯神様」という対話型A Iを新たに作って、温泉文化への理解や体験を向上させる。
3.『観光ARコンシェルジュで観光をサポート』
温泉地は、旅館の料理・自然・周辺の観光地などの各地域の魅力を発信するハブとしての機能を持っている。温泉地を中心として形成された地域ごとの温泉街の情景が、日本が誇る「温泉文化」だといえる。しかし、初めて訪れた観光客は土地勘もなく、温泉街を堪能しきれないというアンケート結果もある。そういった意見を吸い上げた、対話型AIとARガイドを組み合わせた「観光ARコンシェルジュ」を作成すれば、温泉街を満喫するサポートを行うことができる。
4.『観光のあり方から考える3つのタイプ』
観光が地域に与える影響は諸刃の剣であることがある。持続可能な温泉文化を継承していくためには、その土地で育まれた文化を尊重した観光文化を形成していく必要がある。昨今では、贅沢な旅に代表されるような「非日常」の旅ではなく、地域の暮らしを体験するといった「異日常」の旅が増加している。そのことを踏まえ、3つのタイプの温泉文化の形成を提案する。1つ目は、温泉街をベッドタウン化するなど温泉を日常に溶け込ませる「日常観光型」、2つ目は、長期滞在を目的とした「リゾート観光型」、3つ目は、観光地とその住民全員で観光客をもてなす「テーマパーク型」である。各地の温泉文化を考慮した上で、最適な温泉文化の形成をする必要がある。
学生たちのプレゼンテーションの後、セッションにご参加いただいた方々と一緒に、「未来の温泉文化」についてのディスカッションを行いました。
参加者たちからは、学生のアイデアに多くの意見が寄せられました。その一部をご紹介します。
学生たちが「他者への思いやり」や食・文化・歴史を「味わう」というポイントと温泉文化として言語化してくれたことは納得したし、嬉しかった。
学生たちのアイデアから、テクノロジーを活用していくことの重要性はより強く感じた
テクノロジーによって変わっていく中で、「変えてはいけないもの」を見極める必要性を感じた
セッションの終わりに、渋谷区観光協会の代表で、先日アドビ未来デジタルラボのセッションにゲストとしてもお越しいただいた、金山 淳吾さんが社会の消費行動の変化について触れられました。
「モノを消費してもらう時代」から「コト(体験)の消費の時代」、そして「意味の消費の時代」に社会が移り変わっていることを指摘。昨今では、コンシャストラベル(「コンシャス=意識的な」と「トラベル=旅・旅行」を組み合わせた言葉)が注目されるように、地球環境や地域社会など、あらゆるサステナビリティを意識した新たな旅の形が重要視されてきているとのことです。
日本の温泉文化の歴史や、そこに根ざす意味を言語化し、世界にどう伝えていくのかが温泉文化を未来につなげていくためにはとても重要です。
そして、そこにテクノロジーがどのように貢献することができるのか、ということが求められているのではないかと金山さんは締めくくられました。
セッションにご参加いただいた皆様、そして自身のアイデアを発表してくれたアドビ未来デジタルラボの学生のみなさん、ありがとうございました!
この記事の執筆者
▼金山 淳吾さんにゲストとしてお越しいただいたセッションレポートはこちら
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