【#NIKKEI】違法アップロードは自前サイトで、これからも続く。

 引用した記事の内容は、漫画村を代表する漫画作品の違法アップロードが海外版サイトで横行しているというもの。ただし、インターネット上の違法行為はIPアドレスなどの取得をし、住所や氏名を習得して初めて司法手続きに入るため、その仕組みのない国では摘発が難しい。今回の記事では、ベトナムが挙げられている。漫画村では、アメリカのサービスを使用していたため、情報の取得ができ、摘発に至ったという。

情報財およびデジタル財の複製コストは概ね無料

 実態のないもの、デジタル機器の中に入っているもの、がこれに当たる。情報財は知識などがそうである。お笑い芸人のネタ(=情報財)は漫才をするたびにコストが発生するか、wordやpptなどのファイル(=デジタル財)は複製するたびにコストが発生するか、と考えれば厳密には多少の費用がかかるのかもしれないが、概ね無料である。
 漫画作品も情報財またはデジタル財にあたる。では漫画作品の複製は何を指すか。2パターンあると考えている。一点目が内容を文字で表すこと、二点目が内容を写真や画像で表すこと、である。
 1点目は、主にブログが対象となる。アメーバブログやFC2ブログなどでは、以前より行われていたものである。作品の熱烈なファンが感想を書き込んだり、あらすじを説明したりするものである。そして、気に入った場面を写真で撮って載せるというもの。ただし、広告収入やアフィリエイトによって収入を得るものの、そうじた情報を載せて稼ぐことが目的ではなく、基本的にはイベントに行った感想なども書き込まれ、ファン同士の交流の一つのコンテンツである。近年は、違法アップロード対策を防ぐために文字だけのサイトもあるかもしれない(こちらに関して、私は確認していない)。
 2点目は、漫画村のようなサイトである。こちらは漫画作品をスキャンや写真で撮ってデジタル化し、アップロードするというもの。ニュースなどで扱われる違法アップロードは、こちらが主流と思われる。1点目のようなブログでは、特定の作品単体が対象となるのに対し、こちらでは、様々な作品が対象となり、作品数は膨大である。結果、アクセスが集中し、莫大な広告収入をえることができる。私自身確認したわけではないが、こうしたサイトを利用すると、ウイルスが仕込まれる、パソコン(閲覧端末)を勝手に使われる、などの噂がある。
 このように、漫画作品は一度読んでしまえば、友達に話すのも、ブログに書くのも、写真で撮るのも、ほぼ無料であるから、簡単に複製・アップロードできるものであると言える。また、作者は膨大なコスト(創造性・時間など)を負担するが、複製者は無料で広告費を稼ぐことができるのだから、誘惑に負ける人がいてもおかしくはない。

動画と漫画のプラットフォームの違いに着目して

 気になっている人もいるのではないだろうか、動画の違法アップロードは削除されがちなのに、漫画の摘発が遅い/されない、傾向にある。基本的には時間が多少かかっても削除される。その後、誰かが同じ作品をアップロードする可能性はある。これは、アップロード先のプラットフォームの違いにあると考えている。
 動画の場合は、ある程度収束しているのではないだろうか。YouTubeやDailymotion、パンドラTV、などである。アップロード先がこうしたプラットフォームに集中すると、プラットフォーム側での監視機能が存在するようになる。事実、YouTubeで違法アップロードをすると、即座に著作権侵害の通知が届く。また、自動的に削除されたり、広告収入がアップロード者ではなく権利保有者に支払われる仕組み(コンテンツID)も存在する。このように動画の場合は、現状、プラットフォーム側で、権利侵害に係る監視が行われる体制が敷かれている。
 漫画の場合は、上記のような法人によるプラットフォームではなく、個人によるプラットフォームであることに注目したい。ブログの場合は、個人の趣味の延長であることは想像に難くない。漫画村のようなホームページの場合も、レイアウトが一般的な企業サービスと比較すると、良いものとは言えない。記事内で添付されている画像を見ても、違法アップロードのために作ったホームページと言えるだろう。

地球規模での規制がなければ、無くなりそうにない

 もう一度、摘発された漫画村(アメリカ)と概ね摘発されていない違法サイト(ベトナム)の違いをご確認いただきたい。

アメリカ:情報開示の仕組みがあるので、摘発できる
ベトナム:情報開示の仕組みがないので、摘発できない

 ザックリとこんなイメージだろう。そうすると、国ごとの情報開示の仕組み・法制度に依存して、摘発可能性の有無が決まることになる。であるならば、仮にベトナムで情報開示の仕組みができたとしても、別の情報開示の仕組みのない国を選び、サービスを行うことができる。誇張的な表現かもしれないが、地球規模で規制をかけなければ、実質無料で始められて莫大な利益を得ることのできる違法アップロードは、これからも続いていくことになるだろう。

まとめ

 複製が簡単な漫画作品は違法アップロードがしやすく、かつ集客力があるので、広告収入の得やすい物である。しかも、国際的には対応はまだ甘い。記事内では収入を得る仕組みを断絶することを制限方法の一つとしているが、仮に広告収入を断ち切れたとしても、サブスクとしてサービスが提供されてしまえば、直接課金による利益が発生する。
 このように、そもそもが違法アップロードしやすい仕組みが出来上がってしまっているように思う。例えば、紙を止めてデジタルに限定し、公式サイト経由でしか読めないことにするのが良いと思うが、これも難しいだろう。
 少なくとも、違法アップロードされたら頑張って削除する、という方法では20年くらいは、違法アップロードが無くなることはないだろう。そのため、どうすれば複製ができないか(例えば、テレビ番組の録画を記録メディアにダビングするのには回数制限が設けられている)、どうすればアップロードを防げるか、といった、そもそも違法アップロードを不可能にする取り組みが必要であると考える。

#日経COMEMO #NIKKEI

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