【#NIKKEI】ネットスーパーは、ECか?DXか?

 引用した記事の内容は、小売大手イオンがEC用の在庫を専用倉庫に集約するのではなく、全国に点在する大型店舗を利用することで、当日配送地域の拡大に臨む、というもの。
 日本のネットスーパーの類は、オフラインとオンラインとでの区分が明確にあるように思える。私が利用するスーパーでは、5000円の購入で配達してくれるようだが、使っている人を見たことはない。また、今回記事を読みイオンのネットスーパーを拝見すると、確かに配達時間は短い(13時までの注文で当日配送)。しかし、700円以上の購入金額の制限があり、配送料は330円である。最低金額が1000円を超えるのである。
 これが現状である。通常のECであればAmazonや楽天市場で事足りる。そもそもネットスーパーの配達は近隣にしか行われないのだから、必然的に近隣住民が対象となる。しかし、近隣住民が追加コストを支払って配達を依頼する場面が、現実的にそれほどあるとは思えない。

食品(特に生鮮食品)と非食品の違い

 DX(デジタルを導入することによる変革)は、最終的に企業理念によるのだが、個々の業態に合わせて行う必要がある。そこで考えたいのが、食品か否か、という区分である。
 近年、既に覇権を取っているECは、基本的に非食品であると思う。特に生鮮食品が扱われることはない。そこでポイントとなるのが、賞味期限・消費期限、である。非食品、衣料品や家電などは当日届いても、明日とどいても、使用価値が下がることはない。そのため、早く届いた方が当然良いのだが、別に1日程度遅れても問題が生じることはない。気持ちの問題である。食品系もポテトチップスなどのお菓子やカップラーメンなどの賞味期限の長いものが多い。
 しかし、生鮮食品はそうはいかない。賞味期限は基本的に短い。私の感覚ではあるが、3日から5日くらいであろう。つまり、生鮮食品は、非食品とは異なり使用価値がが時間とともに減少し、最終的に消滅する。購入代金分の損失である。また、食品の使用は簡単に外食や中食に代替される。つまり、その日買って、その日使う、が基本となる。しかも、一度に大量に購入することは難しい。自炊を毎日するかなんて結局のところ分からないし、余らせてしまうリスクを考えると中々注文できない、という人も一定数いるだろう。こうした条件を踏まえると、最低でも1個2個という個数で、当日配送が基本となる。
 以上のように、食品、とりわけ生鮮食品、と非食品とでは、時間に対する考え方が全く異なっているように思える。ただ、この時間に対する考え方は多くの日本の小売店に既に浸透しているはずだ。実際、当日配送を行なっている小売店は少なくないだろう。では、何が他国のDX事例と異なるのだろうか。

事例紹介(ウォルマート、盒馬(フーマー)鮮生)

 記事内で挙げられた事例を紹介していく。取り上げられた事例は、ウォルマートとフーマーである。基本的な特徴は2点ある。1点目は、店舗在庫とEC上の在庫を共通化し、店舗に倉庫機能を持たせるというもの。オークションサイトで見かける「店舗でも販売していますので、在庫がない場合があります。ご了承ください。」のようなイメージを、小売でもやっていると考えれば良い。2点目は、配送機能を個々の店舗に持たせるというもの。近隣に限定されるものの、ウォルマートは2時間、フーマーは(おそらく)30分、で配達される。また、この配達機能は実店舗の買い物に限定されるわけではなく、(おそらく)EC在庫も対応する。特に、フーマーは基本的に買い物した商品を持ち帰ることはしない。30分すれば届けてくれるからだ。
 ここに買い物体験の変化を読み取ることができる。もはや、購入した商品を自分で持ち帰らない、のである。確かに、全ての顧客に対して配送サービスを付与するのならば、配達員の固定費に関するリスクは、それほど高くはならないかもしれない。

まとめ

 やはり、日本企業と外国企業の事例を比較すると、ECをDXと呼んでいるように思える。なぜならば、オフラインで買い物(従来型の購買)をする際に、ネットスーパーの存在は何ら影響をもたらさないからだ。配達サービス、食品に特化したEC、が既存の小売店に付与された、という程度だろう。
 日本の小売のトレンドは、セルフレジ、だろう。ここ2年程で急速に増えた印象だ。人手不足に対応すべく、オペレーションの一部を顧客に代替させ、負担を軽減させるというもの。ともなれば、今から全社的なシステム・オペレーションの刷新に投資する、というのは難しいように思う。となれば、海外の事例のような、店舗に選びに行き、自宅で受け取る、という購入体験は難しいのかもしれない。


DXの理解にオススメの文献)

DX#日経COMEMO #NIKKEI


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