【#NIKKEI】アルゴリズムを解析して、結果が出ても、合ってるか、って難しい。

 引用した記事の内容は、セリアという100円ショップにおいて、売れ筋を解析して自動発注するシステムを構築したことで、高収益を達成した、というもの。株価も反応し、このAIを用いた発注システムは"素晴らしい"という。ただし、COVID-19の影響により需要の変動が大きくなり最近では予測するのが難しいという。また、100円ショップという業態自体、差別化が難しく、セルフレジの導入などを活用しながら付加価値の向上に向けて動いている、という。


そもそも機会損失が減れば、収益率は上がる。

 小売店におけるコスト構造は、商品に係る仕入れ費用のみが変動費、人件費および設備関係、公共料金関係は固定費、と考えることができるだろう。つまり、商品が販売されると、単に売上が上がるだけでなく、収益率(利益率)も上がることになる。 
※私は専門家では無い点に留意されたい。
 結果、機会損失(本来は購入されるであろう商品が、何らかの事情により販売できず、見込めた利益を得られなっかたことを、損失と考えること)が減少するだけで、収益率は上昇する。
 今回の記事によればシステムのアルゴリズムの解析には「売れ筋」が利用されているという。買いたい商品を買えなかった顧客に合わせて、確実に発注し、確実に販売する(機会損失を減少させる)仕組みができているのではないだろうか。
 であるならば、アルバイトに発注をまかせる属人的かつアルバイトという怪しさ(ナレッジの継承が行われない、など)から、発注の精度が元々悪いのではないか、という仮説が成り立つ。データの活用という観点で言えばPOSレジが開発されたのは10年以上も前のことである。さすがに売れ筋や基本的な需要予測ができない、ということは考えにくい。
 つまり、今回のシステムはアルバイトに依存する発注システムを中央管理することで、全社的に統計データに基づいた発注を実現したものと考えることができる。

少なくとも外部環境には対応できないので、未来の予測には使えない

 今回、COVID-19の影響で需要が変動し、これには対応できていないという。であるならば、変動しなかった場合の需要にしか対応できないシステムということになる。少なくとも、COVID-19下の生活者の需要はある程度の解析は可能だろう。
 つまり、今回のシステムの概要をまとめるのならば、過去の売れ筋を分析して、その需要に最適な発注を再現できる、ということになる。そのため、過去と異なる需要には対応できない。特に昨今のような、政府の政策が次々と出されるたびに生活が変わる状況においては、対応することは不可能だろう。

まとめ

 近年、デジタルトランスフォーメーション、という言葉が注目を集め、結果、様々な企業が実践し、失敗している。この現状を確実に受け止めなければ、前進はないだろう。
 そのためにも、今回、記事で扱われたシステムの効果を定義することは非常に重要である。私は繰り返しになるが、「過去の売れ筋を分析して、その需要に最適な発注を再現できる」ことであると思う。発注を当該システムによって標準化することで、アルバイトという一般的に流動性の激しくも属人的、という厳しいスタイルから脱却することができる。
 ただし、このシステムで未来の予測は(少なくとも記事を読む限り)絶対にできない、ということに留意しなければならない。だからこそ、例えば、売れ筋をシステムに切らさず売り切り、需要の変化に係る商品の発注は、正社員が担当するなどし、システムと人間の担当領域を明確に定義・区分することが重要ではないだろうか。できること・できないこと、を明確に理解し、それに応じて動きを構築することが重要である。DXが、AIが、なんて言葉を並べて、理解せず、盲信し、過信する企業は数年後、厳しい局面に陥るだろう。

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