見出し画像

最近読んでいる本の紹介(5冊)

先日、「趣味は読書の人の醍醐味〜私の本の読み方・買い方〜」というタイトルで記事をアップしたが

その中で私は、5冊くらいの本を並行して読んでいるということを書いた。それはふだん持ち歩いて読む本、お風呂に入りながら読む本、そしてトイレにこもって読む本など、読む場所によって読む本を分けるという読み方だ。

このnoteの読者の方から「どこで、どんな本を読んでいるのか気なる」というコメントをいただいたので、今日はそのことについて書いてみたいと思う。



今カバンに入れている本は、『古本大全』(ちくま文庫)と『楽園への道』(河出文庫)の2冊だ。

『古本大全』は古本を愛してやまない岡崎武志さんが、これまでに書いてきた「古本でお散歩」「古本で極楽ガイド」「古本生活読本」「古本病のかかり方」(これらは全て絶版)の四冊に新稿と未収録原稿を加えて再編集したお得な本だ。本好きだったら思わず舌なめずりしたくなるようなエピソードが満載なので、電車の待ち時間などちょっとした隙間時間に読んでいやされている。


『楽園への道』は、19世紀の女性革命家フローラ・トリスタンと、その孫でフランスの印象派画家の一人であるポール・ゴーギャン、その二人の人生を対位的に描いた自伝小説だ。

山口周さんが紹介されているのを見て買った本だが、これがなかなか面白い。虐げられた労働者や女性のために活動するフローラと、芸術の新境地を求めてさまよい続けるゴーギャン。この二人に共通するのは、過酷な環境とさまざまな困難に直面しながらも、それを乗り越えていくひたむきな生のエネルギーだ。

 昼休みの時間や15分以上電車に乗る時など、少しまとまった時間が取れるときに読み進めている。



トイレに今置いている本は、『池波正太郎直伝 男の心得』(新潮文庫)だ。

池波正太郎の付き人を10年間やったという著者が、池波正太郎との付き合いの中で学び、身に付けた「男」としての心得。ジェンダー論真っ盛りの現代ではまず通らないタイトルの本だが、酒の飲み方やチップの渡し方、料理は器にこだわりを持つなど「なるほどな」と思わせられるところが多い。

池波正太郎の奇人ぶりや愛らしさも垣間見えて面白い。この本を読むために、トイレにこもっているような気がする。



最近お風呂で読み始めた本は『証拠死体』(新潮文庫)だ。パトリシア・コーンウェルの本は何冊か読んでいたが、なせか彼女の有名な出世作である検屍官シリーズにはまだ手をつけていなかった。一月ほど前に一作目の『検屍官』を読んでやはり面白かったのでその二作目。まだ読み始めたばかりだが、物語の冒頭から引き込まれ、あやうくのぼせそうになる。


最後に、自宅のリビングで寝そべりながら読んでいるのが『実力も運のうち 能力主義は正義か』(早川書房)である。世界各国でベストセラーになった『これからの「正義」の話をしよう』の著者、マイケル・サンデル(ハーバード大学教授)の本だ。「運も実力のうち」ではなく、「実力も運のうち」と訳された本書は、確かに言い得て妙である。

サンデル教授は、能力主義が幅を利かせるこの現代社会に警笛を鳴らす。

不平等な社会で頂点に立つ人びとは、自分の成功は道徳的に正当なものだと思いたがる。つまり、勝者は自らの才能と努力によって成功を勝ち取ったと信じなければならないということだ。

26P 能力への入札

能力主義を盲信する世界のエリートたちは、自らの成功は、自らの才能と努力によってもたらされたものだと思い込んでいるが、それは違うとサンデル教授は言う。

遺伝的なものや環境的な要因もふくめて、そもそも平等なレースというものは存在しないのであり、自らの能力と努力で成功したと思い込んでいる彼らは、「実は運がよかったのだ」という当たり前の謙虚さを忘れているのだと。

サンデル教授はコミュニタリアニズム(共同体主義)の代表的論者としても有名だが、アドラー心理学の考え方にも通ずるものがあると思いながら読んでいる。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?